会社(かいしゃ)の先輩(せんぱい)がいきなり声をかけてきた。
「俺(おれ)、見ちゃったんだよなぁ。おまえ、会社の帰りに待(ま)ち合わせしてただろ?」
「えっ、僕(ぼく)がですか? いや、僕は誰(だれ)とも待ち合わせなんて…」
「とぼけるなよ。あの女だよ。ほら、この間、コンペで一緒(いっしょ)になった…」
「ああ…。あれは、たまたま出くわしただけで。待ち合わせなんかじゃ」
「でも、二人で同じ方へ歩いて行ったじゃないか」
「それは、たまたま帰る方角(ほうがく)が同じだっただけで…」
「ほんとにそれだけか? 俺は、昨夜(ゆうべ)は暇(ひま)だったんでおまえらの後(あと)をつけてみたんだよ」
「先輩…、何してるんですか?」
「俺は別にいいんだよ。おまえが誰と付き合っても。でもなぁ、あの女はどうかと思うぞ」
「だから…。付き合ってませんから。昨夜は、たまたま食事(しょくじ)をしただけで…」
「おまえ、ほんとにたまたまだと思ってるのか? おめでたいヤツだなぁ。これは、あれだぞ。おまえを、引き抜(ぬ)こうって魂胆(こんたん)だ。おまえ、絶対(ぜったい)に行くんじゃないぞ」
「はぁ? 僕は、転職(てんしょく)なんかしませんよ」
「今はな。でも、これ以上(いじょう)あの女に近づいたら…。おまえ、落(お)とされるぞ」
「やめて下さいよ。僕は…、連絡先(れんらくさき)も知らないし、もう会うことありませんから」
「今日から、俺と一緒に帰ろう。また、待ち伏(ぶ)せしてるかもしれんぞ」
<つぶやき>こんなことあるのか? でも、ものは考えようで、引き抜きもありかも…。
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