僕(ぼく)は髪(かみ)の長い女性が好きだ。それも、黒髪(くろかみ)のストレート。こう、髪をスーッとかき上げる仕草(しぐさ)はたまらない。なぜ女性の好みがかたよってしまったのか。それは、姉(あね)の影響(えいきょう)が大(だい)なのだ。姉は子供の頃(ころ)から髪を短くしていて、よく男の子と間違(まちが)われていた。性格(せいかく)も男勝(おとこまさ)りで、僕はいつも泣(な)かされてばかり。大人(おとな)になった今でも、頭(あたま)が上がらない。だから、姉とは正反対(せいはんたい)の女性に惹(ひ)かれてしまうのだろう。
今の彼女は、やっぱり髪が長くて、優(やさ)しくて、思いやりがあって…。彼女のそばにいるだけで、心が癒(いや)されてしまう。彼女を見ているだけで、幸(しあわ)せな気分(きぶん)になる。今夜も…。
「今日はありがとうね。これでやっとテレビが見られるわ。あたし、配線(はいせん)のことよく分からなくて。夕飯(ゆうはん)、食べていくでしょ。じゃ、ちょっと着替(きが)えてくるね。待ってて」
彼女はそう言うと隣(となり)の部屋(へや)へ。僕は彼女の部屋に入るのは初めてだった。何だか落ち着かない。彼女が出て来るまで、僕は何もできずにじっと座(すわ)っていた。
扉(とびら)の開く音で僕は振(ふ)り向いた。そこにいた彼女は…。
「どうしたの?」彼女は唖然(あぜん)としている僕を見て、「どう、似合(にあ)うでしょ。これが、あたし」
「えっ…、何で? か、髪が…」
「短いほうが楽(らく)なのよ。仕事(しごと)に行くときはウイッグにしてるけど、こっちの方が気に入ってるの。さて、なに作ろっかなぁ。これでもあたし、料理(りょうり)は得意(とくい)なのよ」
<つぶやき>あなたはどんな基準(きじゅん)で恋人を選(えら)びますか。きっとひとつではないはずです。
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