横暴(おうぼう)な姉(あね)に悩(なや)まされていた弟(おとうと)。いつも顎(あご)で使われていた。でも、姉に彼氏(かれし)ができたことで、その立場(たちば)が逆転(ぎゃくてん)しそうな雰囲気(ふんいき)。それは、姉のいろんな秘密(ひみつ)を弟がにぎっているからだ。もし彼氏に知られたら、どういうことになるのか――。姉は気が気でない。
例(たと)えば、小学生の頃(ころ)の恥(は)ずかしい話とか、いろいろ上げれば切りがない。弟はちゃっかりとその彼氏と携帯(けいたい)番号を交換(こうかん)し、ホットラインを確保(かくほ)している。もう姉も手を出すことができない。しかし、姉もこのまま手をこまねいてはいなかった。
「そんなこと言ってもいいのかな?」弟は、姉の要求(ようきゅう)に弱腰(よわごし)ではなかった。
だが、姉は余裕(よゆう)の表情(ひょうじょう)を見せていた。弟の顔に不安(ふあん)がよぎる。姉は笑(え)みさえ浮(う)かべて、
「いいわよ。彼にはすべてを打ち明けたから。もう知られて困(こま)ることはないの」
だが、弟もここで引き下がるわけにはいかない。最後(さいご)の手を打った。
「じゃあ、高校の時の告白(こくはく)話とか。あれって、かなり笑(わら)えると思うんだけど」
姉は顔面蒼白(がんめんそうはく)。声を引きつらせ、「な、何で知ってるの? そんなはずないわ」
弟の作戦(さくせん)は見事(みごと)に功(こう)を奏(そう)した。「やっぱり、これは話してないんだ。そうだよね。いちばん恥(は)ずかしい話だから。僕(ぼく)も、初めて聞いたとき――」
「嘘(うそ)よ! あんた、私が卒業(そつぎょう)してから入学(にゅうがく)したんじゃない。知ってるはず…」
「学校では有名(ゆうめい)な話だよ。いろいろと情報(じょうほう)は入ってきてたんだ」
<つぶやき>情報を制(せい)する者が人を制する。でも姉弟(きょうだい)なんだから、程(ほど)ほどにしときましょ。
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