みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0987「ついてる」

2020-11-20 17:51:21 | ブログ短編

 最近(さいきん)の僕(ぼく)はツキ過(す)ぎている。商店街(しょうてんがい)の福引(ふくび)きで2等(とう)を当て、少額(しょうがく)ながら宝(たから)くじも…。それに、見ず知(し)らずの女性から告白(こくはく)もされてしまった。
 これはどういうことなんだ? 今まで、こんなことなかったのに。これはもう、誰(だれ)かが僕のために動いてくれているとしか――。まさか、未来(みらい)から来た人が僕のために…。僕の子孫(しそん)がやって来ているのかもしれないぞ。
 僕は付き合うことになった彼女に訊(き)いてみた。どうして僕なんかを好きになったのかと。
 彼女は答えた。「だって、あなたって有名(ゆうめい)な小説家(しょうせつか)になるんでしょ」
 僕は小説なんか書いたことないし、読書好(どくしょず)きでも…。
「あなたのお友だちから聞いたのよ。あなたって、すっごく才能(さいのう)があるんだよね」
 誰だ? 誰なんだ。僕には思い当たる友だちなんていない。どういうことだ? まさか、子孫が…。僕に小説家になれってことなのか? 僕は思わず言ってしまった。
「いや…、才能があるかどうか分からないけど…、小説家を目指(めざ)してはいるよ」
 彼女は嬉(うれ)しそうに目を輝(かがや)かせた。僕は、そんな彼女を見て胸(むね)がキュンとなった。もう、彼女から目をはなすことができない。彼女を失(うしな)うなんて耐(た)えられない。僕は決意(けつい)した。絶対(ぜったい)に有名な小説家になってやる。彼女を幸せにできるのは僕だけだ。彼女は言った。
「ごめんなさい。あたし、次の約束(やくそく)があるの。また会いましょ。連絡(れんらく)してね」
<つぶやき>いやぁ、これはムリでしょ。それに、この彼女、すごく怪(あや)しいと思います。
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0986「秘宝なのに」

2020-11-18 17:52:20 | ブログ短編

 とある由緒(ゆいしょ)ある神社(じんじゃ)から秘宝(ひほう)が盗(ぬす)まれてしまった。刑事(けいじ)たちは犯人逮捕(はんにんたいほ)に躍起(やっき)になった。その甲斐(かい)あって、三日後に犯人は逮捕された。秘宝も無事(ぶじ)に発見(はっけん)されたのだが――。
 秘宝は桐(きり)の箱(はこ)に納(おさ)められていたのだが、箱の封印(ふういん)がはがされていた。刑事は考えた。
「まさか売(う)りさばいたのか? これは、中を確認(かくにん)しないと。まずいよな…」
 しかし、神主(かんぬし)から箱の中は絶対(ぜったい)に見ないようにと言われていた。
「でもなぁ、もしなくなっていたら…」
 刑事は恐(おそ)る恐る箱の蓋(ふた)を開けてみた。すると、中には一回(ひとまわ)り小さい別の箱が入っていた。
「これは…、めちゃくちゃ重要(じゅうよう)なお宝(たから)ってことなのか?」
 刑事の心にある衝動(しょうどう)がわき上がった。それは、押(お)さえようのない欲求(よっきゅう)に変(か)わった。刑事はそっと中の箱を取り出した。その箱にはしっかりと封印が残(のこ)っていた。封印の感じから、もう何百年も開けられていないようだ。ここで、神主の言葉(ことば)を思い出した。
〈もし秘宝を見てしまうと、災(わざわ)いがふりかかると言われているんです〉
 刑事は迷(まよ)っていた。神主の話は迷信(めいしん)だと思うのだが、もしものことがあったら…。
 そこへ後輩(こうはい)の刑事がやって来た。その若い刑事は何の躊躇(ちゅうちょ)もなく言った。
「これっすか? うわっ、見ましょうよ」彼は箱を手に取ると封印をはがしてしまった。
「何すんだよ! ダメだろ。こんなことして、もしものことがあったら……」
<つぶやき>若い連中(れんちゅう)は、何のためらいもなくやっちゃうんだよねぇ。うらやましいかも。
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0985「しずく112~襲撃」

2020-11-16 17:47:51 | ブログ連載~しずく

「誰(だれ)だろう? こんな時間に…」父親は玄関(げんかん)の扉(とびら)を開けようとした。
 その直前(ちょくぜん)、扉が勢(いきお)いよく開いて黒ずくめの男が父親を押(お)し倒(たお)して入って来た。水木涼(みずきりょう)はとっさに手にした鞄(かばん)を男に投(な)げつけ、両親(りょうしん)に家の奥(おく)へ行くよう促(うなが)した。そして能力(ちから)を使って男を家の外へ飛(と)ばし、慌(あわ)てて扉を閉めると鍵(かぎ)をかけた。
「いったい何なのよ」涼は息(いき)を整(ととの)えながら呟(つぶや)いた。
 家の奥からガラスが割(わ)れる音がして、母親の叫(さけ)び声が聞こえた。涼は竹刀(しない)を手にすると、家の奥へ急(いそ)いだ。そこには数人の男たちが乱入(らんにゅう)していた。父親は頭から血を流しながらも、母親を男たちから守っていた。涼は竹刀を振りまわし、男たちに一撃(いちげき)をあたえて両親の前に立った。しかし、そんなことで男たちはひるまなかった。
「誰なのよ! 何でこんなことするの!」涼は叫んだ。
 男たちは何も答えず、標的(ひょうてき)を涼に絞(しぼ)ったようだ。涼は男たちに向かって行った。能力(ちから)を使って家の中の物を男たちにぶつけ、大きな座卓(ざたく)を両親の前に立てて盾(たて)にした。そして男の一人を能力(ちから)で思いっ切り突(つ)き飛ばした。男はガラス戸を破(やぶ)り庭(にわ)に倒れ込む。
 涼は庭に飛び出した。男たちも彼女を追(お)って外へ出た。涼は竹刀を構(かま)えた。男の一人が涼の前に立った。その男は日本刀(にほんとう)を抜(ぬ)いてみせた。涼は思わず、「そ、そんなのありかよ」
 突然(とつぜん)、涼の手から竹刀が抜(ぬ)け出し飛び去(さ)った。日本刀の男はニヤリと笑った。
<つぶやき>敵(てき)にも能力者(のうりょくしゃ)がいたようですね。涼たちは、このまま消(け)されてしまうのか?
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0984「率直な彼女」

2020-11-14 17:55:26 | ブログ短編

「わたしのしたことは間違(まちが)っていたのでしょうか?」
 彼女は、先生(せんせい)を前にして言った。先生は困(こま)ったような顔をして、
「いや、間違ってはいないと思うが…。でもなぁ…」
「わたしは、彼女のために言ったつもりです。彼女の判断(はんだん)は誤(あやま)っています。わたしは、率直(そっちょく)にそのことを伝(つた)えただけです。でも、彼女には…分かってもらえなかったみたいです」
「そうか…。考え方は人それぞれだ。でもな、自分の考えを押(お)しつけるのは、どうかと思うぞ。つまりな、相手(あいて)の気持(きも)ちをもうちょっと思いやって…」
「忖度(そんたく)した方がよかったのでしょうか? でも、それでは彼女のためにはならないと――」
「忖度することは、けして悪(わる)いことではないぞ。忖度しなくては角(かど)が立つこともある。それに、白黒をはっきりさせるだけでは解決(かいけつ)しないこともな…、あると思うぞ」
「それは、どういうことでしょうか? 物事(ものごと)の正解(せいかい)はひとつしかないはずです。そうでなければ、すべてのことが曖昧(あいまい)になってしまいます。それでは美(うつく)しくありません」
「えーとなぁ、うん…、そうか…。でもなぁ、君(きみ)は…難(むずか)しく考えすぎてると思うぞ」
「わたしは、熟慮(じゅくりょ)して結論(けつろん)を出しただけです。どこがいけなかったのでしょうか?」
「いや、だからな…。先生が言いたいのは、これは、喧嘩(けんか)をするほどのことでは――」
「彼女は太(ふと)りすぎてます。今すぐにお弁当(べんとう)の量(りょう)を減(へ)らさなと大変(たいへん)なことになるんです」
<つぶやき>そこなんですねぇ。うーん、確(たし)かに…。提案(ていあん)の仕方(しかた)を考え直してみましょ。
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0983「愛はあるか」

2020-11-12 17:53:26 | ブログ短編

「そこに愛(あい)はあるのか?」彼は彼女に訊(き)いた。彼女は答(こた)える。
「ええ、あるわよ。だって、あたしのこと大事(だいじ)にするって…言ってくれたわ」
「君(きみ)だって知ってるだろ。あいつのいい加減(かげん)なところ…」
「あの人はとっても優(やさ)しい人よ。ただ、ちょっと誤解(ごかい)されやすいだけよ。悪(わる)い人じゃ…」
「あいつは、誰(だれ)にでも優しいんだ。前の彼女にだって…。俺(おれ)、知ってるんだ。前に付き合ってた彼女のこと…。彼女、言ってたよ。あいつに愛なんてないって。あいつは、自分のことしか考えない人間(にんげん)で――」
「あたしは、その人とは違(ちが)うわ。あたしは、彼のこと信じてる。彼のこと悪く言わないで」
 彼は言葉(ことば)を呑(の)み込んだ。彼女は、彼を見つめて微笑(ほほえ)んで、
「あたし、行くね。もう、あたしのことは忘(わす)れて…。そのほうが、いいの」
「君は、それでいいのか? あいつと一緒(いっしょ)にいて、幸(しあわ)せになれるのか?」
「なるわよ。絶対(ぜったい)に幸せになってみせる。あなたも、奥(おく)さんを大事にしてね。もう、浮気(うわき)なんてしちゃいけないわ。可愛(かわい)いお嬢(じょう)さんもいるんでしょ」
「それは…」彼は小さなため息(いき)をついて、「分かってるよ。君以上(いじょう)の女性(ひと)は現れないさ。最後に、もう一度会ってくれないか? そしたら…」
 彼女は、それには答えなかった。ただ、「さよなら」と微笑みを残(のこ)して去(さ)って行った。
<つぶやき>なんて男たちなんでしょ。真実(しんじつ)の愛はどこへいってしまったのでしょうか?
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