佐賀に行ったなら、
必ず立ち寄る場所がある。
佐嘉神社の直ぐ近く、
中央マーケットである。
この路地を進んだ奥に、その入り口はある。
来る者を拒む、この怪しさはどうだ。
あなたが初めて行ったなら、先ず入れはしまい。
では、中へ…
フニャオーーー!!
うあっち!!
あー、びっくりした。
猫さんかよ。
脅かすなよー。
では。
暗闇に吸い込まれていく私。
戦後の闇市の佇まいを、未だに色濃く残す中央マーケット。
残念ながら現在は、殆どのテナントがシャッターを下ろしている。
そんな中、頑張っている店がある。
田中ぎょうざ屋だ。
持ち帰り専門だが、店内には小さなテーブルが数個ある。
狭いながらも、イートインスペースもあったりする。
メニューは焼き餃子と水餃子のみ。
「おばちゃん、焼き餃子と水餃子を冷凍で・・・」
「あらら、何個ですか?焼き餃子は、ちょっとしか残ってなくて。」
「え、そうなんだ。じゃあ、焼き餃子はあるだけでいいや。水餃子は50個にしようかな。」
戦後、満州から持ち帰ったレシピは、70年以上経った今でも、一つも変えていない。
厨房に立つオバチャンは2代目。
「ここを継ぐ後継者はおるとね?」(私)
「いえ、私で終わりでしょうね。」(オバチャン)
「えー!それは困るなぁ。」
ガスコンロに置かれた二つの分厚い鉄鍋。
「勿論それも…」
「はい。開業当初からです。」
このアルマイトの蓋ですら、
「同じもんは、もう揃わんとですよ。」
大事に大事に、ここまで使ってきた。
店も、道具も、無論レシピも。
全てが何も変わらない。
オバチャン一人で守ってきた。
他の店には、決して真似の出来ない価値が、ここには満ちている。
「有難うございました。またお願いします。」(オバチャン)
この日のメインディッシュは、勿論餃子である。
水餃子を茹でる。
今時の、皮が薄い日本の餃子ではない。
くるんだ皮はぶ厚く、どちらかと言うと小籠包寄りの、武骨と言っていい餃子だ。
先代が本場満州から持ち帰ったレシピが、ここにある。
では。
パク
ツルリン
うんめえ!
モッチモチ。
おばちゃん、ばさらか美味しかよ~。