「こーんなに、天気いいのに・・・どっか行くぞ。」
「どこにね。」
「そうさなあ・・・」
いつものやりとりで始まる朝。
やって来たのは、
ここだ。
いつもの南阿蘇ビジターセンターである。
さっそく、園内を一廻り。
ツグミ
この日は3連休最終日。
いつもに増してカメラマンが多い。
ツグミの群れの中に、白とグレーの鳥がいる。
近くでカメラを構えているベテランによると、
「えーっと、クロツグミかな。」
だそうだ。
ヒレンジャク
3羽ほどいた。
すぐに幹の裏側に隠れてしまい、そうこうしているうちに見失ってしまった。
「朝早くなら、まとまっておったとばってんね。」
「あらそうですか。」
結局、撮れたのはこの2枚だけ。
どうにも今年の南阿蘇は、ヒレンジャクに縁遠い。
ジョウビタキ♀
シジュウカラが止まる同じ幹に、小さな洞があった。
その洞から、可愛いらしいやつが顔を覗かせている。
「あら、可愛い!」(家内)
ゴジュウカラである。
顔をだしては、すぐに穴の奥に戻り、そしてまた出てくる。
その繰り返しだ。
よくみると、口に小さなゴミのような物を咥えている。
ポイ
下の地面へポイ。
飽くことなく繰り返されるこの作業は、もしかしたら、部屋掃除ではなかろうか。
投げ捨てたら、満足げに地面を見下ろすゴジュウカラ。
満足したらまた引き返し、
ほらね。
咥えてるよ。
ポイ
随分と綺麗好きのゴジュウカラである。
ビジターセンタのすぐ近くに、「ラクダ山」と呼ばれる小さな山がある。
以前から一度、登りたいと思っていた山だ。
仏舎利塔の所までは車で行ける。
背後に聳える奇岩へは、歩いてアクセスする。
1分で展望台だ。
展望台から見る阿蘇の雄大な景色。
中央の中岳からは、微かに噴煙が見える。
こちらは根子岳。
説明によると、
ラクダの背中にも似た、この幾つも突き出た板状の岩は、
太古の昔、岩盤に生じた亀裂を上がってきたマグマであるそうな。
その後、
長い年月を経て、周りの凝灰角礫岩は浸食され、地中深くにあったマグマが、地表に現われたとの由。
このラクダの背中は、阿蘇ジオパークの典型的なシンボルのひとつなのだ。
垂直に切り立ったラクダの瘤。
遙か昔、この地で起こったカルデラ大噴火に思いを馳せ、おやつタイムである。
阿蘇立野名物『ニコニコ饅頭』を、目の前に横たわる阿蘇五岳に捧ぐ。
パシャリ!
この日最後の撮影は、このシーンで終わりである。
「さてと、とっとと帰ろうか。ウメが待っとる。」
・・・この後事件が起こる。
いや、すでに起きていた。
1時間も走ったろうか。
道の駅旭志で買い物しようと、駐車場に車を止めた。
財布はトランクルームに置いた上着のポケットだ。
私はハッチバックを開けた。
と同時に、不可解な光景が目に飛び込んできた。
あれ??
あれれれ????
「あがー!カメラがねえ!ラクダ山だ!!!」
『?』と『!』マークだらけで、まことに恐縮である。
だが、私のこの時の困惑を表現するなら、これでも足りないくらいなのだ。
「今から!ラクダ山に!引き返す!!」
「何ばしよっとね、オッチャン。」
ドピューーン!!
この時、私の後ろにパトカーがいたなら、間違いなくお縄になっただろう事は、ここだけの秘密である。
運転しながら、私の脳みそは目まぐるしく動いた。
『すでに持ち去られている』、これは最悪のケース。
もうひとつは、
『警察に届けられている』、これも、厄介である。
急がねば、急がねば(大汗)
焦りに焦って運転し、車は1時間ほどでラクダ山到着。
あったー!!
「ごめんよ。置いてけぼりにして。」
「オッチャン、この頃多くない?この前は北九州で眼鏡を忘れるし。」
「・・・・言うな。」
どうやら私は、おやつを食べて暫くは、意識を失っているらしい。