毎年この時期になると訪れる場所がある。
柳坂曽根の永勝寺である。
もみじ寺として有名だ。
作り込んだ庭や銘木がある訳ではないが、何故か惹きつけられる寺なのだ。
歴史は飛び切り古い。
何しろ天武天皇発願の日本三薬師寺の一つである。
創建時は、現在とは比ぶべくもない広大な境内があり、絢爛たる七堂伽藍が甍を連ねていたとか。
その後、南北朝動乱期と戦国時代に戦火に遭い消失。
江戸期に再興された後は、宗派を変えて、地域の寺として現在に至っている。
天然記念物金明竹に活けられた千両が、参拝者を迎える。
本堂
「銀杏はまだまだじゃな。」
大銀杏を見上げて小さく呟くと、檀家の方だろうか、
残念そうな顔をこちらに向け、
「いやいや、今年はもう終わりです。楓とかドウダンとか、色付く前に枯れてしもた。」
「暑かったですもんね。」
「バッテン、裏(展望台)は少し色づいとるですよ。」
「そうですか。そんじゃ、ちょっと登ってきます。」
そんなやり取りがあり、本堂裏の展望台へ。
ははあ、なるほど。
青葉と紅葉と枯れ葉が混在している。
「しょんなか(仕方ない)。こげな年もあるっさ。」(私)
「しょんなかね。」(家内)
展望台から見下ろす柳坂曽根の櫨並木。
櫨はこれからのようだが・・・この後の色づきはいかがなものか。
展望台から下りてきたら、この寺名物のケンポ梨を煎じた茶を頂く。
毎年の恒例である。
茶を啜りながら、住職に二言三言挨拶。
「ご住職、お邪魔してます。」
「ああ、紅葉は見らっしゃったか。ときにあなた。」
「はい?」
「私も有名になりましてな。」
「はて?」
こんな会話も恒例である。