Tシャツとサンダルの候

一平ちゃんに行くなら、中華うどんに決まっているのだ。

小雨そぼ降る日曜日。

久留米の中心部に位置する、あけぼの商店街に出かけた。 

かつて、土日ともなれば、肩をぶつけあうような人出で賑わっていたこの商店街だが、

今では、日曜日でも御覧の通りである。

アーケードの裏通り、コの字になった変則的な路地に、お目当ての店はある。

 

【一平】だ。

昭和8年創業の老舗中の老舗うどん屋だ。

本体のアーケード街は人通りも疎らとなってしまったが、この店の周りだけは、数十年前の活況がそのまま残る。

今日も、行列覚悟で来てみたが、折からの雨の影響か、すんなり店内に入れたのは幸いだった。 

メニューには、各種うどんに丼物といった一般的な品々が並ぶ。

 

だが、

 

なんてったって、一平と言えば、中華うどん。

中華うどんと言えば、一平なのである。 

ミニ牛めしが付いてくる『一平セット』なる物がある。

 

「そんじゃ、一平セット頂戴。」(私)

「私はかつ丼単品で。」(家内)

「単品・・・ですか???」(店員) 

 

お前。

回りを見てみい。

中華うどんが絡んでない物を頼んでいるのは、お前だけやぞ。

言うならば、福岡ドームの一塁側で、日ハムを応援しているファンと・・・ちと違うか。

いずれにせよ、あのオバチャンの困惑は、全く持って正しい反応である。

「一平セットでーす。」

 

うどんのスープに中華麺。

トッピングは、丸天はうどん風だが、キクラゲ、海苔、紅ショウガは中華そば風。

誠にハイブリットな一品と言うしかない。

中華うどんとネーミングしたセンスに、拍手を送りたい。

対面に置かれたかつ丼が、身の置き所も無いように肩をすぼめているのを見ながら、

 

いただきまーす。

 

ズルズルズルーーー

 

うん。

やっぱ、これやね。

かつて、屋台と変わりが無かった店内も、今では小綺麗になってしまったが、この中華うどんは昔ながらの味わいである。 

あー、美味しかった。

 

 

ご馳走様。

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