座右の書は?と聞かれたら、わたしはいつも迷わず高野文子さんのるきさんを上げてきた。 もっと難しげな本だとかっこいいだろうとは思うけれど、ここはかっこつけずにマンガで。
このマンガは雑誌Hanakoに1988~1992年の間連載されていた。 まさにバブルと呼ばれた時期だ。
るきさんと友達のえっちゃんが住んでいるのはたぶん西武池袋線の急行が停車しない駅、るきさんの仕事は在宅で医療事務で趣味は読書と切手収集、えっちゃんはキャリアウーマンで流行にも敏感。 そんなふたりの日常が、淡々としかし楽しい短いマンガでつづられている。
るきさんの生き方はまさにかっこつけない生き方、生き方なんて言葉からも開放されたような浮世離れぶりで、しかもさらりと夢を叶えてしまう。
わたしはえっちゃん派でもなく、どちらかと言えばるきさんのほうに近いかな、在宅勤務もけっこう長かった。 でも在宅勤務は仕事とそれ以外の時間や空間の区切りがなくなりがちで、煮詰まることは少なくなかった。 オフィスでの仕事と違って常に1人きりなので、いったんそうなると薄まりにくい。 そんにときには、いつもこの本を手にとり、一息ついたものだ。
高野文子さんは多作ではないけれど、どれも内容が濃い。 そのなかでこの本はいちばん読みやすいと言われている。 ご本人はるきさんのことを好きではない、なぜなら志(ココロザシ)がないから・・・という話も聞いたことがあるけれど、実は志が見えないように描かれているだけで、本当は嫌いじゃないのではという気もする。
手軽な文庫版も出ているので、がんばるのに疲れたかな、ちょっと煮詰まったかなと思った時には、ぜひ一度手にとってみてください。