美しい絵本です!
梨木香歩/作 小沢さかえ/絵『よんひゃくまんさいのびわこさん』(評論社)。
平仮名ではわかりにくいけれど、「400万歳の琵琶湖さん」です。
あ、でも、琵琶湖は女性になぞらえているので、「びわこ」じゃないとね!
いつぞや「ブラタモリ」で琵琶湖が移動してきたと知りました。
400年ほど前、現在の伊賀あたりに、古琵琶湖ができ
それから移動し、現在の位置、大きさになったのだとか・・・
その琵琶湖の成り立ちを元に描かれたのが、この絵本です。
・・・といって、いわゆる「知育絵本」ではありません。
それは、もう、梨木さんですもの、文学の香り豊か!
しかも、絵の担当は、小沢さかえさん。
「ヤービ」のコンビです!
(『岸辺のヤービ』福音館書店。シリーズの1作目)
お話は・・・
「びわこさん」が、かつて遊んだ海に帰りたい一心で、
ハマヒルガオやハマゴウを連れて、長い長い、移動を続ける・・・
疲れ果てたとき、自分自身が「海」になっていた・・・
滋賀県では「琵琶湖」を「海」というそうですものね♫
(↑「秘密のケンミンSHOW」ネタ)
始まりは、かわいらしい、びわこさん。
うたた寝をしたり、泳いだりする姿が若々しくて・・・
最後の頁のびわこさんは、足を投げ出し、
ハマヒルガオやハマゴウと、くつろいでいます。
その姿は、もう若くない「おばさん」です。
それでも、お顔は満ちたりていて・・・
わたしも、もっと言うなら梨木さんご自身も、
この「びわこさん」と同世代、とっくに人生の折り返しを過ぎた今、
こんな風な表情を浮かべていたいなぁと言う、理想かもしれません・・・
というのも・・・・
梨木さんは「一人の女性の一生が、風景に重なる、
その風景が神話になる瞬間を、小沢さんがみごとに掬って
描いてくださいました」と、あとがきで書かれています。
まさに、その通りで、このびわこさんの姿が全てです!
何度も眺めては、しみじみと穏やかな気持ちにさせられています。
(『ヤービの深い秋』・・・大好き!
1冊目はピンとこなかったのですが、完全に「ヤービ」押しとなりました。)
余談ながら・・・
四半世紀近く前、梨木さんが琵琶湖のほとりにお住まいの頃、
わたしも関西に住んでいて、週末には京都や琵琶湖畔を訪ねていました。
はじめて梨木さんの御著作を読んだのも、その頃で
たちまち魅了されています。
もちろん『西の魔女が死んだ』です。
でも、今もわたしが梨木さんの新刊を楽しみにしているのは、
やっぱり『丹生都比売(ニオツヒメ)』あらばこそ。
当時、好きすぎて、どうして良いかわからないくらいでしたw
梨木さんが琵琶湖の近くに住んでいらっしゃると知り、
だからこその空気感なのだと、納得もしたものです。
今、『よんひゃくまんさいのびわこ』さんを読み、
ふたたびの琵琶湖・・・と、
あの頃のことが、なつかしく想い出されました。
(わたしにとっても、あの頃は、人生で、忘れられない楽しい日々です)
なお、絵に登場する「気候と動物、植生」も
琵琶湖博物館の学芸員さんと小沢さんが、一つ一つ検討なさったのだとか。
「学問的な確実さが増した」絵本です。
梨木さんだけでなく、琵琶湖畔で育ったという小沢さんや
学芸員の皆様の琵琶湖への愛情や誇りが、たくさん詰まっています。
だから、こんなに胸打つんですね♫