2月17日の「文春オンライン」が、『大谷翔平でも、大泉洋でもない…新入社員たちが「理想の上司」に選ぶ“意外な有名タレント”の正体』と題する記事を掲げています。
明治安田生命が毎年実施している、「新入社員が選ぶ『理想の上司』総合ランキング」。男性上司、女性上司のそれぞれで「理想の上司」を(選んだ理由とともに)回答するものなのですが、なんとこれまで8年間以上、男女ともに(それぞれ)同じ人物がトップをキープし続けているということです。
男性上司の1位は、お笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」の内村光良氏。1964年7月生まれの60歳で、この年齢で新入社員から理想の上司に選ばれているのは極めて例外的だと記事はしています。一方、女性上司の1位は水卜麻美氏。現役の日本テレビアナウンサーで、実際に日本テレビで管理職を務めているということです。
ランキング順位以上に注目すべきは(その人を)「選んだ理由」で、内村さん、水卜さん、どちらも理由のトップは「親しみやすい」というもの。選んだ理由を見てみると、今の若者が上司に求めているものがわると記事は言います。理想の上司を考えるときに「親しみやすさ」がトップになるのは、昭和生まれ世代には意外なものかも。今の若者に求められる上司像を考える際に、これは大きなヒントになるということです。
そこで過去の調査を見てみると、2016年(内村氏、水卜氏の連覇が始まる前の年)の、理想の男性上司はテニスプレーヤーの松岡修造氏で、女性は女優の天海祐希さんであった由。その理由は、松岡氏は「熱血」で、天海氏は「頼もしい」というものだったということです。
確かに、松岡氏と天海氏は、タイプこそ違えど(イメージとしては)先頭を切って組織を引っ張ってくれたり、時には厳しい言葉も含め、叱咤激励してくれたりするような印象があると記事は指摘しています。実は、松岡氏は2015年が2位で、2016年が1位。天海氏は2010年から2016年まで7年連続1位の常連で、当時は先頭で引っ張るタイプの上司が求められていたのかもしれないということです。
ちなみに、天海氏は2024年の調査でも2位にランクインしているものの、松岡氏は現在では既にランク外になっている由。つまり、松岡氏の「熱血」は、今の時代には受け入れられていないということになります。方や、天海氏が選ばれている理由の「頼もしい」は、内村氏を選んだ理由でも2位に入っていることから、「親しみやすさ」と「頼もしさ」が、今の若者世代が求める上司像なのだというのが記事の指摘するところです。
一方、1月15日の「ハフポスト日本版」(『多様な「リーダーシップ」の形。理想の上司はどのタイプ?』は、リクルートマネジメントソリューションズが行った、従業員規模が50人以上の会社に勤める25歳~59歳の正社員7405人を対象にした「働く人のリーダーシップ調査(2024)」の結果をまとめています。
この調査は、組織におけるリーダーシップを8つのタイプに分類し、その特徴や部下への影響を量的調査で整理したもの。調査では、以下の3点についてAか、Bかで質問を行っています。
1.組織内における集団との関わり方は、「A.周囲と協力し合う」「B.自分が引っ張る」
2.課題に対して取り組む姿勢は、「A.改善・維持」「B.変革・拡張」
3.迷った際の判断のよりどころは、「A.周囲の気持ち・心情」「B.ロジック・理性」
結果、「理想の上司」についての回答では、「調整×維持×心情」という性質を持つ「調和型リーダー」が29.8%と最多。次いで「調整×維持×理性」という性質を持つ「安定型リーダー」26.7%を占める結果となったと記事はしています。また、年代が上がるにつれ、心情よりも理性を優先した判断を求める人が多いことも判ったということです。
続いて、直属の上司のリーダーシップタイプについて。この質問でも「調和型リーダー」が31.4%と最多。「調和型リーダー(調整×維持×心情)」と「安定型リーダー(調整×維持×理性)」に次いで3番目となったのが「開拓型リーダー(統率×変革×理性)」だとされています。
さて、組織には、場面に応じて多様なリーダーシップが求められるというものの、今の時代に(少なくとも部下に)求められているのは、(イザという時の強いリーダーシップなどではなく)「親しみやすく」「部下の意見をよく聞いてくれて」「周囲に気づかいのできる」上司ということなのでしょう。
「お笑い」の要素が強いコントから番組MCまで、長年、芸能界で幅広い活躍を見せる内村氏は、確かにいつも穏やかで、新人の話もゆっくり聞いてくれそうな雰囲気です。NHKなどで不定期にやっているコント番組などを見ても、氏が率いるチームは皆とても楽しそうに仕事をしていて、「理想の上司」の面目躍如といったところなのかもしれません。
しかし、上司には(時に)厳しい判断を下さなくてはならない時があるのもまた然り。強い統率力や変革への決断力など、様々なスキルが必要となることでしょう。フジテレビに関する一連の不祥事や、ホンダと日産の経営統合騒ぎなどを見るにつけ、(組織が大きくなればなるほど)リーダーシップを取っていくというのはなかなか難しいものだなと、これらの記事を読んで改めて感じたところです。