総合経済情報サイトの「DIAMOND ONLINE」のコラムに、経済コラムニストの大江英樹氏が『サラリーマンが出世競争で「負け犬」でも落ち込まなくていい理由』と題する一文を寄せているのを見かけました。(2022.12.6)
大江氏はコラムの中で、50歳を過ぎたサラリーマンは「成仏」しないと幸せになれないと説いています。20歳前後で会社へ入ったとして定年まで約40年。部長なり役員なりになれたとしても恐らく在任期間は10年かそこら。なので、50歳を迎えて自分が考える程出世ができていないのなら、そのタイミングで気持ちを切り替えた方が良いというのが氏の提案です。
人生100年時代、仮に90歳まで生きるとして50歳からだと40年、80歳まででも30年という時間がある。だから、もうそこで気持ちを切り替えて成仏しないと、その先の30~40年を幸せな人生にすることができなくなってしまうと氏はしています。
氏の言う「成仏」とは、(すなわち)「いつまでも会社での地位や立場や思いに拘泥することなく、気持ちを切り替えて次の人生に臨むということ。30~40年もの人生が残っているだから、次のフェーズに向かって気持ちを切り替え、準備をしていく時間に充てるということです。
指摘を読んで、「あぁ、確かにそうだな…」と身につまされた反面、サラリーマンにとっての「出世」とは、長い人生の中でそれだけ大きな位置を占めているのだなと、改めて実感させられた次第です。
一方、だからと言って、組織の中で揉まれながら(いわゆる)「出世」を果たした人が、実際に「偉くなりたい」とか「社長になりたい」とか、ずっと思ってきた人かと言えばそんなこともないでしょう。同じように頑張ってきた人の中でも、結果として「偉くなる人と」「それほどでもない人」はいる。では、その違いは一体どこにあるのでしょうか。
こうした問いに答えるかのように、9月3日の同サイト(「DIAMOND ONLINE」)が、ライターとして知られる上阪徹氏の近著『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方(ダイヤモンド社)』の一部を紹介していたので、参考までに小欄に概要を残しておきたいと思います。
記事のタイトルはズバリ、『「同期トップで出世した人」の意外すぎる2つの共通点』というもの。まわりの同期がどんどん出世していく中、自分だけついていけていない。自分はいつになったら成果を出せるのか?…徐々に開いていく実績の差に、「自分はこのままこうして(ここで)働いていていいのだろうか」と悩んでいるのは貴方だけではないと上阪氏は同著に記しています。
実際、出世している人にはどのような特徴があるのか。上阪氏によれば、氏がいろいろな会社で「同期トップ」を走っている社員にインタビューをしたところ、早くに抜擢される人には大きく二つの共通点があったということです。
その第一が、「第一志望で入社していない」ということ。意外な共通項だが、「目標を達成できなかった」という焦りや挫折が、結果としてキャリアアップにつながったのではないか氏は(これを)見ています。
第一志望ではない会社だったからこそ、生まれる気概があったのではないか。長い人生、最初の会社に入ったタイミングは間違ってもゴールなどではない。実はそこがサラリーマン人生のスタートで、勝負は社会に出た後から始まるということでしょう。
そして、氏が二つ目の共通点として指摘するのが、「若いうちに修羅場を経験していたこと」というものです。
たとえば、「社内で一番きついチームに配属された」とか、「トラブル続きの現場でバタバタした毎日を送っていたなど」(よくわからないままに)ハードな経験をしているということ。きつい経験を若いうちに体験することで、ギリギリの状況での身の処し方や、共通の経験による社内のつながり、「あの時に比べれば…」といったストレスへの耐性などを身に着けることができたのかもしれません。
いずれにしても、「第一志望で入社していないこと」と「若いうちに修羅場を経験していたこと」、同期トップで出世する人にこの2つの共通項があったというのは、面白い発見だったと、氏はこの著作で語っています。
つまりそれは、「ゼロをプラスにしたい」よりも、「マイナスをゼロにしたい」という欲求のほうが案外、目標達成するためのモチベーションとして機能しやすいということ。「うまくいかなかった」「予想外のことが起きた」…そういうトラブルが発生したときに、「なんとかしなきゃ」と全力で動いているうちに、気がついたら思っていたよりも面白い場所にいたというのは、確かによくあることかもしれません。
実際、人生とは思い通りにいかないもの。「これを達成したい」という目標を立てていても、決めていた通りの水準までスキルアップできなかったり、世の中の風潮に合わなかったりと、コントロールできないことはその都度起きると氏は言います。
その思い通りにいかない状況を、成功者たちはどう乗りこなしてきたのか。成功した人は皆、事細かに計画を立てそれを着実にクリアしてきたと思われがちだが、それだけが成功のルートではないというのが氏の認識です。
第一志望ではない会社に入社していたり、思いがけない修羅場に巻き込まれたり、さんざんな目に合っていることもある。それでも、そういう偶然の展開を受け入れ、新しい流れにのってみることも成功への一つの道標になるということです。
たくさんの成功者から教わったのは、まず「目の前のことにしっかり向き合う」ことの大切さだと氏は綴っています。
偶然やチャンスに反応し、向かうべき選択を決断できる直感を養っておくこと。「こんなはずじゃなかった」という展開がやってきたとき、「出世する人の条件が、自分のところにもやってきたか」と楽しめるようになりたいと話す上阪氏のアドバイスを、私も興味深く読んだところです。