夜来の雨に、今年の桜もほとんど花を落としてしまいました。毎年毎年、咲き始めから散るまで、まるで熱に浮かされたように桜の話ばかり。本当に日本人は桜が好きなのですね。ひとつひとつの花は小さくて目立たないのに、集まって一度に咲くとなんという華やかさ。別れの季節のはかない思い出、希望に満ちた門出の喜び、新しい出会いの胸の高鳴り。今年も日本中で、どんなドラマを演出したのでしょう。役目を終えて眠りにつこうとしている吹きだまりの花びらたちに、そっと聞いてみたい気がします。
(毎日新聞「はがき随筆」2008・4・16掲載)
カトリック菊池教会の中川道代さんの作。
(毎日新聞「はがき随筆」2008・4・16掲載)
カトリック菊池教会の中川道代さんの作。