「史実」では勿来と熱海まで行ったのが限界で、そのほかの訪問先は関東地方の中だけであったらしい。
『水戸黄門』の中で「作られた」歴史で考えると、光圀の旅は「忍び」なので公式の記録では記載されず、建前では勿来と熱海の間の関東各地(水戸、江戸、日光、鎌倉など)を訪れたことにしていた。各地で印籠をひけらかしていたから人々の噂や日記では残っていただろうが、あくまで講談での傳承ということになる。
人間が文字を發明する前、歴史は「語り部」によって口頭で傳承されていたはずだ。
その時代にはhistoryとstoryの区別はなかった。
ドラマの中の光圀の旅で使われた路銀は幕府か水戸藩から出ていたはずで、旅の途中でコースが変わってスケジュールが延長されるので、失踪と同じで、予算がいくらかかるか事前に予想できない。両替屋に振り込んだ金を助三郎が格之進が引きだしていたわけだ。
これにより綱條の時代の水戸藩の財政が破綻寸前だったことは容易に想像できる。
NHK大河ドラマ『八代将軍吉宗』によると5代将軍・綱吉の政策が江戸バブルを加速させたらしいが、綱條の時代の水戸藩もそのミニチュア版だったわけだ。
当然ながら光圀のせいで水戸では年貢が上がって農民は苦しんだはずだ。光圀は旅先の農民が年貢で苦しんでいると、その地の家老のゼイタクな生活を批判していたが、自分のやっている(やってきた)ことも同じようなことである。
綱吉のバブル経済の後始末をする羽目になったのが吉宗だったわけだが、『水戸黄門』第38部によると吉宗は推定14歳のときに紀州で、漫遊中の光圀と対面している。このときから吉宗は紀伊領内を馬で視察していた。それから20年経過して将軍となった吉宗が、やはり光圀のような市内徘徊をするようになったのは皮肉である。
『暴れん坊将軍』第8部では吉宗が江戸市中で綱條と対面している。
吉宗の治世では吉宗自身の「城下外出」のほか、大岡忠相配下の南町奉行所で誤認逮捕が相次ぎ、奉行自身が身分を隠して町を捜査することが続いた。これも税金の浪費を生んだだろう。
吉宗の引き締め政策に尾張の宗春が抵抗。
吉宗没後10年たって、1760年代。世は田沼時代で賄賂政治、バブル経済が復活していたようである。この時期、吉宗の後輩である紀州の治貞と、宗春の後輩である尾張の宗睦が隠れ旅をしていた。
家治はお鷹組を使っていたが、当然、二重行政となって、奉行所や火盗改の仕事と衝突することになった。二重行政は税金の無駄遣いの第一歩である。
宗春、宗睦、そしてお鷹組の活躍があっても、それも必要でないはずの金銭を浪費するだけだっただろう。田沼時代の浪費で幕府の財政は破綻同然。天明の飢饉と一揆が続いた。
吉宗の孫であった松平定信が寛政の改革をおこない、隠密同心を組織していた。
しかし定信が家斉と意見が対立して失脚。
文化・文政(1810年前後~1820年代)から天保初期(1830年代)にかけて家斉の政治で浪費が復活。
鼠小僧次郎吉が歓迎されたのは、1830年代に貧富の格差が擴大していたということか。
次郎吉を極秘に助けた隠密奉行の活動があった時代で、闇奉行や八丁堀の七人が命がけで幕府に諫言を試みるが、幕政の浪費は止まらず、天保の飢饉、大塩平八郎の乱、家斉が大御所になっても蛮社の獄などがあり、1840年代に家慶が天保の改革を初め、水野忠邦と鳥居耀蔵が改革を進めた。これが庶民の生活を圧迫するもので、却って反撥をまねき、鳥居と対立していた遠山景元の隠密操作や家慶の弟の源九郎などの「お忍び」が続き、天保の改革は3年か4年で頓挫した。
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