星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

「花の武将 前田慶次」備忘録(3)

2010-09-25 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
突然、秋の気配が漂い始めた9月23日。
それでも劇場の扉の中は最後の舞台を見つめる観客と、ラス
ト大傾奇を演じる出演者たちの熱気で相変わらず夏だった。

観劇日    2010年9月23日(木・祝)昼  千穐楽
劇場     大阪松竹座
座席     1階右列

千穐楽だからなのか、連休中もそうだったのか。
とにかく楽では台詞回し、トーンが違っていた人多し。
涙声に聞こえた人、いつもより間合いを長くする人、台詞を
ほんの少し変えたり、小道具の見せ方を変えた人も。
でも、それはマニアックな範囲なのでいいとして。
とにかく、この慶次度は私が見たどの日よりも慶次殿だった。
ラストの気負いなど微塵も感じられず、ただ慶次だったとし
か言いようがない(笑)。

私の最大の悩みは、まつとの別れの場面をどう見るかだった。
いつもまつに感情移入しすぎて嗚咽状態。涙が邪魔をして、
花道の慶次の顔を全くといっていいほど見たことない。

エエーッ、いきなり、ここから書くのか!アタシ。
思いっきり備忘録♪(台詞は雰囲気優先でテキトーですよん。)



●小次郎の死~慶次とまつの別れ
慶次の感情が最も強く噴出するこの2場面は切り離せない。
慶次が何をゆるせなくて、何を大事に思っているかが痛切に
伝わってくるくだりだ。

四井主馬は、慶次にとって「ゆるせない」対決相手だった。
自分の命を狙うどころか、加賀の忍でありながら家康とつな
がる裏切り者。
(主馬を演じる安藤さん。強い者には弱く、下の者には人間
以下の扱いをすることで力を示す姑息な頭領を好演。小次郎
とだけは特別な関係・感情のやりとりがあったかもしれない
と想像させるスキンシップが面白かった。)

と同時に、命を賭けて国を守っている忍の若頭・小次郎にとっ
て、あるじ主馬の裏切りは堪え難い事実。
「闇の忍にも意地もあれば誇りもある。小次郎、死んでお詫
び申す」。ついに自分で主馬を刺してしまう小次郎。
どうか利家様とまつ様を守ってほしい、と慶次に託して。
(最期の場面。千穐楽では小次郎の声に特に感情がこもって
泣いているように聞こえた。私はいつもここで号泣!また、
ここでは小次郎の配下にいる忍たちのすすり泣きも聞こえて
くる。最前列で見た時、本当に涙を流している忍の一人に
キュウンとなった。)
「ごめん!」と介錯をする慶次も泣いている。

都を発とうとする慶次の前に、突然まつが。
慶次は小次郎のことをほめてやってください、とだけ言い残し、
ごめん!と、うつむいたまま足早に去って花道へ。
待って!と引き止めるまつ。
前田家の家督相続について書かれた信長の書状を手にして。
「四男利家の家督は十年を経た後、長男利久、またはその子に
返上すべし。その子とは慶次。」
慶次が国を出たのはこれが火種になることを知っていたから
ではないのか?と、まつが慶次に問いただす。

(慶次、本舞台に戻って)それはもう終わったこと。これから
も利家殿といっしょに加賀の国を守ってください、と懇願する。
書状を持つまつの手を見つめる慶次。
その手をしばらく握ったまま、しみじみ言う。
「このかぼそい手で今までよう戦ってこられた・・・。きっと
報われましょうぞ。」

(まつの背中のほうに回って)「まつ様がお城を出られた時の
ことは今も忘れられませぬ。まつ様を追ってようようつかまえ
た時、人の心は縛れませぬ、好きになされ。と申し上げると、
まつ様は毅然と踵を返して、やかたに戻って行かれた。」
(慶次は自分であとずさりするように後ろに下がっていきなが
ら、まつのほうに手を伸ばして)
「その背中はまぶしく光が射し、神々しく輝いておられた。そ
の美しさに、このお方のためなら命を投げ出そうと・・・」。
(まつは衝撃が走ったように驚いた顔で、目には涙をためて、
慶次の言葉を聞いている。これって、慶次の愛の告白なんじゃ
ないの♪ それなのに、二人の間の決定的な距離を感じさせ、
切なくて、苦しくて、このあたりから涙がぶわ~っ。)

まつのそばに来て書状に手を伸ばし、慶次が「さ、それを」と
促すと、「いやです!」と固く握ったままのまつ。
だだっ子のように頑に「いやです」。
まつ様、いやです、と奪い合いのようになりかけ・・・・・
まつをしっかり抱きとめる慶次・・・。二人して泣いている。
まつが観念したように書状を手放す。(涙、涙、涙・・・)
慶次があたりを見回して、背後に灯明を見つけ、書状を焼べる。
それを見て、まつ「けいじーーーっ!」と絶叫。
(書状を焼べるとき、千穐楽では一瞬、慶次が躊躇し、それか
ら火に投げ入れたように見えた。)

このとき弦の音が聞こえてくる。
(美しい旋律にますます涙があふれてしまう。原作で伽耶が弾
いていたカヤグム=伽耶琴とはこんな音色だろうか?)

「ああ。伽耶たちの奏でる調べだ。心にしみいりますなあ。」
と言いながら、もう花道に歩き出す慶次。
「もう、二度と逢えぬのですか?」まつ。
「さあ・・・」慶次。
「私はいっそ、男であればよかった。そうすれば、誰はばかる
ことなく、好きな時にそなたと逢い、酒を酌み交わし、本心を
打ち明けられた。(間があってから、ひときわ高く振り絞るよ
うに)慶次に惚れたと!大声で」。

(ここで嗚咽状態、あふれる涙で毎回全く慶次が見えない私。
千穐楽では慌てて涙を拭き取り、遠かったのでオペラグラスで
慶次の顔を覗いた。
・・・ああっ、やっぱり、それは本当の涙だった。汗ではなく。
いつもここでは泣いてたのか、慶次殿・・・。
まぶしそうに、優しげに、愛おしそうにまつを見ている。もう
全身が愛だよぉ。あんな表情を見た後は普通なら放心状態だよ。)


まつ、胸元から紫色の手ふくさを取り出して。
「おぼえていますか。満開の花の夜、ともに踊った時の花びら。」
「ああ、あの時の・・・」
(このあたり、自分の嗚咽で台詞もろくに聞けてない私。ますます
雰囲気で書いてしまう。)
「あれほど楽しいことはなかった・・・ありがとう」
まつに向かって一礼。「おさらばでござる」
そう言い残して踵を返し、花道をゆっくり歩いてゆく慶次。
(千穐楽で「松嶋屋!」と声がかかったのはここだったと思う。)
一人残されたまつの後ろ姿に、客席から万感こめた拍手。

強い慶次はもちろん文句なしにカッコイイけれど、国を思い、
愛する人に国を託して身を引く、豊かで繊細な感性を持った慶次
がたまらなく愛おしい♪ 傾奇者とは切ないものでござる。

ああ~っ!長くなったので、またあらためて。
自分のブログなんだから、好きになされ。ねーっ!うん♪
書き終わるまで私の夏は終わらない?


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