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G2さん、今年は演出やりすぎ(笑)。
この舞台はきっと「OUR HOUSE」と「魔界転生」の間の<1回やすみ>に違いない
・・・という邪推が半分。でも、大倉孝二さんと犬山イヌコさんが出るんだし、
倉持裕さんの脚本作品を一度見てみたいし・・・ということで観劇決定!
以下、ネタバレ全開です。
<あらすじ>
舞台は東京近郊の農村。
遠山と恵子は結婚式を終えたばかり。だが、この夫婦、なぜかよそよそしい。
つきあった様子もないのに「できちゃった婚」したというので、周囲もいぶかし
がっている。しかも遠山は「カモ農法」で失敗し、莫大な借金があった。
同じ農村のバンドのメンバーでもある門田は何か事情を知っているらしい。同じ
くバンドメンバーの依代は遠山の元恋人で、この結婚に疑いの目を持っている。
そのバンド、最近はネット配信で曲が売れ、収入が入るようになってきた。
もっと稼ぐには遠山が新曲を作る必要がある。ところが・・・。
村に取材に来ていた漫画家夫婦の車が、道に飛び出した遠山を轢いてしまう。
当然バンド活動には支障が。怪我をさせたお詫びにと、漫画家夫妻は住み込みで
遠山家の農業を手伝うことに。そこへ売れっ子漫画家を担当編集者が追いかけて
きて・・・。7人が微妙に、複雑に絡みながら、ひととき生活を共にする。
<全体の感想>
台詞がすごくよかった。
甘くない。心地よくない。感動するような言葉や、励まされたり、癒されたりす
ることもない。はっきり言って、ヒリヒリするような会話の連続。
一つ一つの台詞はどうってことない普通の言葉なのに、そのシチュエーションで
語られるとおかしみが生まれたり、言葉のキャッチボールがズレていくことで緊
迫感が出たり、嘘や悪意ある言葉にも真実が隠されていたり。
まとまりのない会話が少しずつ蓄積されていき、時間をかけて塊となり、だんだ
ん意味をもって全体像が見えてくる感じ。
いま考えると、私は登場人物たちの人間観察を楽しんでいたのかもしれない。
会話を聞きながら、彼らの本当の関係や真意を推理していた。
まるでワイドショーで事件を解き明かすみたいに。
特に、新婚の遠山と恵子、遠山とバンドメンバーの門田、遠山と元恋人の依代、
門田と依代、恵子と依代、というように二人ずつの単位で交わされる台詞にめちゃ
めちゃリアリティがあるのが面白い。
ギャグなど笑いの要素も、強烈に笑えるのではなく、クスクス笑えるツボが随所
に散りばめられている。
それを実力あるキャストたちがやるので、味わいのある、なんとも切な~い舞台
になっている。わかりやすい面白さじゃないけれど、こういうの、私は好き。
倉持裕さんの作品は初めてだったが、この作品だけに限っていうなら、山田太一
さん脚本の「ふぞろいの林檎たち」の感覚かな。(←ホントにいま書きながら
思い出した。)長塚圭史さんのニオイも少しする。
だから、私はすぐになじめたのかも。
※倉持裕さん脚本の舞台は2004年にAGAPE storeの「しかたがない穴」で観て
いたことがわかった。この作品と同じ、G2演出。(追記)
<舞台装置、音楽など>
シチュエーションとしては最初から最後まで新婚の遠山家の居間と庭。
背景には青空が広がり、山の稜線が見えている。
田舎らしい梁や柱のある家。続き部屋が2つあって、奥の部屋の真ん中には遠山
が買ったばかりのギターがどんと置かれている。ときおりバンド仲間たちが勝手
にやって来ては縁側から自由に出入りしている。
開演前に流れていた音と違って、舞台ではアコースティックのギターの音色がオー
プニングとシーンの合間に入る。渡辺香津美さんがアコースティックとは意外な
感じだったけれど、これがまたいいんである。
(「トチカ」買いましたよ~。LPアルバム。)
タイトルにもなっている「開放弦」というのは、ギタリストがチューニングの時
にやっているような、指で弦をおさえずにギターを弾く状態、のことだそう。
台詞の中に「開放弦」という言葉は出てこないけれど、ラストでそのタイトルの
意味がわかる。エンディングに響く開放弦の音。これにコード進行の音がかぶり、
やがて渡辺さんの弾くエンディング曲につながっていく。
ラストを音楽だけで語ってしまうという演出に私は抵抗できずに、涙・・・。
号泣ではない。ただただ、切ないだけ。
キャストと登場人物については、また後日に。
「開放弦」ほんのちょっとだけ(このブログ内の関連記事)
開放弦 □観劇メモ(2)(このブログ内の関連記事)