星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

紙屋治兵衛  観劇メモ(1)

2008-08-27 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)

公演名    新派120年記念 八月花形新派公演 紙屋治兵衛 
劇場     三越劇場
観劇日    2008年8月24日(日)
座席     5列(昼・夜)
上演時間   昼の部 11:30~14:30  夜の部 15:30~18:30


今年は歌舞伎以外の舞台に立つことが多い愛之助さん。
今月はお江戸で大坂の男、紙屋治兵衛になっていた。
『心中天網島』で私が知っているのは映画(監督:篠田正浩、治兵衛:吉右衛門、
小春・おさん:岩下志麻)と、昨年見た創作舞踊劇
一人のダメ男と、二人の女の義理の立て合い・・・みたいなお話かと思いきや、
新派の舞台では違ってた。脚本の北條秀司が実録の三人はこうではなかったかと
いう思いをこめて描いた物語。(治兵衛は長谷川一夫のための充て書き。)
面白かった~!
愛之助さんは歌舞伎の和事をとりいれ品よく柔らかに演じながら、治兵衛を大坂
の商人の落ちこぼれとして人間くさく見せ、好演だった。
新派の女優さんお二人も、情感こめて上方の女を演じておられた。
あかんたれな男でもホレられる理由がこれでちょっとわかったかも♪


<配役>
紙屋治兵衛:片岡愛之助  おさん:鴫原桂  小春:瀬戸摩純
米次郎:片岡松之助  孫右衛門:三原邦男  市之助:佐堂克実
徳七:田口守  源八:柳田豊  清助:児玉真二 
おはま:伊藤みどり  おかね:小泉まち子  おあさ:小山典子  
おきん:英太郎  三五郎:川崎さおり  小りん:川上彌生
弥三郎:井上恭太  町女房: 筑前翠瑶  ほか


<あらすじ>
大坂天満にある紙屋の主人の治兵衛は、貞淑な妻のおさんがいながらも、曽根崎
新地の遊女である小春と馴染みになり、借金を重ねたため、親戚たちに呆れられ
ている。だが夫を思うおさんは、親戚たちに治兵衛を見捨てないでくれと必死に
願う。この姿を見て治兵衛は、今度こそは小春と別れようと決意するが・・・。


第一幕 大坂天満 小売紙屋治兵衛の家
第二幕 大坂天満 小売紙屋治兵衛の家


芝居の前半は人情コメディ風。
治兵衛はお人好しで騙されやすい。そんなふうに描かれている。

自分の借金のことで集まった親族会議をおさんにうまく切り抜けてもらい、みんな
が帰った後、押し入れから這い出して登場する治兵衛。
「みんなで人をあほ、あほ、て。13べんも言いよって。」
あっけらかんと明るく、反省している様子も見えない。
そこへひょっこり戻って来た兄に見つかり、たっぷり油を搾られる。
おさんに手ついて謝れ! 新地の女とは別れて商売に精を出すと誓え、と。

こんな亭主、どこがよくてかばうのかと思うけど(笑)。
あの人を一人ではほうっておけない、と妻のおさんは言うし、治兵衛もおさんを
自分にはできすぎた女房と大事に思っているらしい。
そのくせ悪友たちに誘われると心が揺れ動き、別れた小春が会いたがっていると
聞くと「小春♪♪♪」とイソイソ顔で逢いに行ってしまう。
愛之助さんのこの笑顔はホントにうれしそう!
目を思いっきり細めて、自分の胸をさすったり、かきむしるようにしたり。
いかにも無邪気で可愛い。

そうそう。
夕餉に湯豆腐が出ると聞き、久しぶりに女房孝行やと言いながら、治兵衛が鰹節を
削る場面がある。あんなふうにするのか、へぇ~と見入ってしまった。


第三幕 一 曽根崎新地 茶屋河庄の奥座敷
    二 同     二階座敷


魂を入れ替えると兄に誓ったくせに、仲間に誘われ、お茶屋にいる治兵衛。
おさんに悪いからと先に抜け出そうとするのを仲間に引き止められ、わかった、
これが遊び納め、とけっきょく長居してしまう。
他の座敷に出ていた小春が遅れてやってきて、治兵衛にベタベタし始める。
口移しでお酒を飲ませたりもするノダ。(顔は隠れて見えない。仰向けになって
足をバタつかせる治兵衛。)
公認の遊里ではないところにいる遊女たちは、「しろうと」の意味で世間では
「白人」(はくじん)と呼ばれていたらしい。この場面では、曽根崎新地の白人
たちと治兵衛たちが、酔っ払ってお座敷遊びに興じる様子が臨場感たっぷりで、
すごく楽しかった。三味線を弾き、歌ってジャンケンしてお約束の罰ゲーム。

気がついたら、2階の小春の部屋へ。
しどけない二人の姿がちょっといい雰囲気。
治兵衛がおさんのことをまだ気にするので、ヤキモチを妬いた小春が治兵衛の羽
織と帯を窓の外の川に投げ捨ててしまう!
あー、なんてことするんやと言いつつも、治兵衛は怒って出て行ったりはしない。
奔放で治兵衛命!の小春の手練手管にかかり、ズルズルズルズル居残ってしまう。
なんと、小春が馬乗りになって治兵衛の首を絞めたりもするノダ。
治兵衛なさけなや~。ほとんど言いなり。
だから、小春も安心して自分の感情をぶつけたり、甘えたりできるんだろうな。
(愛之助さん、酔っ払ったお芝居がすごく上手。口調と表情が艶っぽい♪)

ここに、茶屋の中居おはまといっしょに現れた小春の実母おかね。小春に床入り
の用意をさせ、その隙に治兵衛に借金を申し込む。
治兵衛に惚れている小春がヨソの男に身請けされるのが可哀想。そうさせないた
めにいい方法があるからと。
金額を聞いた治兵衛、なんとかなると判をついてしまう。
が、手形には額面が書かれていない。あとで金額書いといて~、だって。
(あ~あ、あまりのアホさに芝居と知りつつ、腹が立ってくる。苦笑。)

観劇メモ(2)につづきます。


紙屋治兵衛  観劇メモ(2)(このブログ内の関連記事)
『紙屋治兵衛』ミニミニ紀行2「志じみばし」(このブログ内の関連記事)
『紙屋治兵衛』ミニミニ紀行1「河庄」跡(追記版)(このブログ内の関連記事)

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2 コメント

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愛之助さんの治兵衛に感動しました (とみた)
2008-08-28 12:29:57
ムンパリさん、こんにちは。
私も同じ日に行きました。隣りにいたかもしれない。あの船着場は、舟乗り込みのところだったんですか!私なんか地名を聞いても「ほんまち。ああ、御堂会館のあったところだ」とわかるくらいです。
愛之助さんは本領発揮だったんでしょうねえ。歌舞伎の舞台で治兵衛をやってくれるのも近そうな気がします。

ここまでが本題で、あとはどうでも良い昔話。
吉右衛門さんの出た映画はテレビでしか見てないんですが、映画を見た友達は、ピーターの「薔薇の葬列」と二本立てで見て、「心中天網島」の方を異様にいやらしく感じたそうです。
舞台の「心中天網島」は歌舞伎見始めの頃、青山劇場で近松座の公演を見ました。当時の扇雀さんの治兵衛、秀太郎さんの小春、田之助さんのおさん。田之助さんは声が良くて、なんてうまいんだろうと思いました。この少し後にあった俳優祭で、扇雀さんにサインをもらい、「心中天網島見ました」と言って握手してもらいました。私が握手してもらった唯一の歌舞伎役者さんです。
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私も感動しました♪ (ムンパリ)
2008-08-29 00:51:16
とみたさん、キャッ♪ お会いしてました?(笑)
夜の部におともだちとごいっしょにいらっしゃった方なら、
左側にいたのがたぶん私です。その節ははじめまして(笑)。

愛之助さん、本当にいい舞台でしたね。
とてもこの役を大事に想って演じているのが伝わってきて、
遠征して2回見ておいてよかった~と思いました。

映画の「心中天網島」は私もTVでしか見てませんが、当時の
篠田監督のセンスに感心しますね。で、私も同じく、すっごく
エロティックだと思いました。

とみたさんにとって「心中天網島」は思い入れのある演目だったの
ですね。(当時の)扇雀さんって、掌がやわらかそうだなあ~(笑)。
雁治郎さん時代の藤十郎さんの「心中天網島~河庄」と「時雨の炬燵」
の映像がいま手元にあるので、近々ゆっくり見てみます。
愛之助さんの紙治を見るまで封印してたので。楽しみです♪
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