公演名 Team申 番外公演III~今、僕らが出来ること~
朗読劇 お文の影・野槌の墓
劇場 森ノ宮ピロティホール
観劇日 2013年5月5日(日)
上演時間 16:00開演
座席 D列
2011年に同じ劇場で観た舞台が心に残っていたので、今回も楽
しみだった。
今年もまた心にあったかいものが生まれ、朗読劇でしか味わえ
ない豊かな時間を舞台と客席とで共有した想い。
これからもまたこういう機会を作ってほしい。
前回はたまたま既読の本だったので、原作の黙読と朗読劇との
違いを楽しませていただいた。
今回は未読だったため純粋に朗読劇だけを味わったが、結末を
知らなかったせいかどちらの作品も泣いてしまった。ひじょう
に惹き込まれる素敵な舞台だった。
<キャスト、スタッフ>
出演:佐々木蔵之介 市川猿之助 佐藤隆太
構成・演出:長谷部聡助
原作:宮部みゆき『ばんば憑き』より
「お文の影」「野槌の墓」
<開演前>
早めに席についてよかった。
開演15分前、拍手が起こったので振り返るとナント!チーム申
の3人が座席通路を歩いてくるではないですか!
3人ともTシャツにデニムパンツのラフな格好で舞台上へ。
皆さんから募集した怪談話を今から読みます、と蔵之介さん。
(あ、そうだった~!)
各自選んだエピソードを蔵之介さん、猿之助さん、佐藤隆太さん、
再び蔵之介さんの順に読む。
これが面白かった。一般人とはいえ、さっすが関西人。話にオチ
がある。怪談話なのに笑った笑った。楽しませていただきました。
舞台と客席がすっかり同じ空気を吸ったところで、3人はいったん
引き上げ、あらためて本編の朗読劇が始まった。
<朗読劇の舞台セット、衣装など>
壇上には座布団と飲料水が置かれている。
3人が白シャツと黒のボトムスに着替えて再登場。
下手から猿之助さん、蔵之介さん、佐藤隆太さんの順に腰掛けて
ゆく。前に観た時と同じポジションだ。
作品は2つあり、シンプルな舞台セットとして「お文の影」の時
には子供を表す紙人形数体、影の投影など。「野槌の墓」では登
場人物の子供と猫又のイラストがスクリーンに映し出されていた。
<彼岸と此岸>
特に今年は怪談だったが、どちらも恐いというよりも、切なかっ
たり、哀しかったりするお話。
影踏みの影、猫又などという、受け取る人によってどうにでも想
像できるものが題材になっていたので、具体的に見せられるより
も朗読のほうがかえってイマジネーションがふくらんでよかった
ぐらい。
やはり、読み手が素晴しいのだと思う。
猿之助さんは「お文の影」では紙人形芝居のおじいさん。それか
らやはりというか「野槌の墓」では猫又・猫又が化けた女。
おじいさんが呼びかける先に、小さな笹舟が揺れて流れてゆくの
がはっきり見えたし、猫又が化けた女は艶っぽくもあり妖しかっ
た。江戸の譚の世界に一気に連れて行ってくれるのも猿之助さん
だし、涙を誘う場面をよりドラマチックにするのも猿之助さんだ。
蔵之介さんにはやはり、関西人として笑いの間が体にしみこんで
いるんだろうか。
『家守綺譚』でもそうだったけれど、黙読では想像もしなかった
場面で笑いが生まれる。そして、その笑いにひじょうに救われる。
今回でいえば「野槌の墓」で加奈が父に質問するところ。父親で
ある蔵之介さんの反応、質問を受け止める表情とか、言葉を返す
間などが独特で客席に笑いが起きた。
猫又の女との会話では、相手が人ではないことから生じる可笑し
さ、空気感が、二人の絶妙なやりとりによって繰り出される。
しんみりしながらも温かくなる素はここにあるのかもしれない。
佐藤隆太さん。
「お文の影」では吉三。「野槌の墓」では加奈。もちろん政五郎
親分もスッキリ決まってよかったけれど、今回は子供の役がぴた
りハマっていたと思う。
特に加奈ちゃん!ちょっとおしゃまにすまして台詞を言うところ。
女の子の声がこんなふうに聴こえるのは意外だった。
猿之助さんのおじいさんと、蔵之介さんの父と、二人との絡みも
いい感じだった。
2つとも子供の魂をあつかった作品で、幼児虐待などという言葉
を使わずして、現代にも訴える要素がじゅうぶんにあると思う。
この朗読劇が東日本大震災の復興関連と思うせいだろうか。
『家守綺譚』も今回の作品も偶然そういう題材なのか。
朗読を聴いているこの場が、いつも彼岸と此岸の接点であるよう
な気がしてならない。
「野槌の墓」の最後の一文が心にしっかり刻まれた。キュウウン。
「別れるけれど、消え失せはしない。亡き人びとはこの世を離れ
て、だからこそ永遠のものとなるのだから。」(「野槌の墓」より)
●このブログ内の関連記事
~今、僕らが出来ること~朗読劇「家守綺譚」 観劇メモ(1)
~今、僕らが出来ること~朗読劇「家守綺譚」 観劇メモ(2)
朗読劇 お文の影・野槌の墓
劇場 森ノ宮ピロティホール
観劇日 2013年5月5日(日)
上演時間 16:00開演
座席 D列
2011年に同じ劇場で観た舞台が心に残っていたので、今回も楽
しみだった。
今年もまた心にあったかいものが生まれ、朗読劇でしか味わえ
ない豊かな時間を舞台と客席とで共有した想い。
これからもまたこういう機会を作ってほしい。
前回はたまたま既読の本だったので、原作の黙読と朗読劇との
違いを楽しませていただいた。
今回は未読だったため純粋に朗読劇だけを味わったが、結末を
知らなかったせいかどちらの作品も泣いてしまった。ひじょう
に惹き込まれる素敵な舞台だった。
<キャスト、スタッフ>
出演:佐々木蔵之介 市川猿之助 佐藤隆太
構成・演出:長谷部聡助
原作:宮部みゆき『ばんば憑き』より
「お文の影」「野槌の墓」
<開演前>
早めに席についてよかった。
開演15分前、拍手が起こったので振り返るとナント!チーム申
の3人が座席通路を歩いてくるではないですか!
3人ともTシャツにデニムパンツのラフな格好で舞台上へ。
皆さんから募集した怪談話を今から読みます、と蔵之介さん。
(あ、そうだった~!)
各自選んだエピソードを蔵之介さん、猿之助さん、佐藤隆太さん、
再び蔵之介さんの順に読む。
これが面白かった。一般人とはいえ、さっすが関西人。話にオチ
がある。怪談話なのに笑った笑った。楽しませていただきました。
舞台と客席がすっかり同じ空気を吸ったところで、3人はいったん
引き上げ、あらためて本編の朗読劇が始まった。
<朗読劇の舞台セット、衣装など>
壇上には座布団と飲料水が置かれている。
3人が白シャツと黒のボトムスに着替えて再登場。
下手から猿之助さん、蔵之介さん、佐藤隆太さんの順に腰掛けて
ゆく。前に観た時と同じポジションだ。
作品は2つあり、シンプルな舞台セットとして「お文の影」の時
には子供を表す紙人形数体、影の投影など。「野槌の墓」では登
場人物の子供と猫又のイラストがスクリーンに映し出されていた。
<彼岸と此岸>
特に今年は怪談だったが、どちらも恐いというよりも、切なかっ
たり、哀しかったりするお話。
影踏みの影、猫又などという、受け取る人によってどうにでも想
像できるものが題材になっていたので、具体的に見せられるより
も朗読のほうがかえってイマジネーションがふくらんでよかった
ぐらい。
やはり、読み手が素晴しいのだと思う。
猿之助さんは「お文の影」では紙人形芝居のおじいさん。それか
らやはりというか「野槌の墓」では猫又・猫又が化けた女。
おじいさんが呼びかける先に、小さな笹舟が揺れて流れてゆくの
がはっきり見えたし、猫又が化けた女は艶っぽくもあり妖しかっ
た。江戸の譚の世界に一気に連れて行ってくれるのも猿之助さん
だし、涙を誘う場面をよりドラマチックにするのも猿之助さんだ。
蔵之介さんにはやはり、関西人として笑いの間が体にしみこんで
いるんだろうか。
『家守綺譚』でもそうだったけれど、黙読では想像もしなかった
場面で笑いが生まれる。そして、その笑いにひじょうに救われる。
今回でいえば「野槌の墓」で加奈が父に質問するところ。父親で
ある蔵之介さんの反応、質問を受け止める表情とか、言葉を返す
間などが独特で客席に笑いが起きた。
猫又の女との会話では、相手が人ではないことから生じる可笑し
さ、空気感が、二人の絶妙なやりとりによって繰り出される。
しんみりしながらも温かくなる素はここにあるのかもしれない。
佐藤隆太さん。
「お文の影」では吉三。「野槌の墓」では加奈。もちろん政五郎
親分もスッキリ決まってよかったけれど、今回は子供の役がぴた
りハマっていたと思う。
特に加奈ちゃん!ちょっとおしゃまにすまして台詞を言うところ。
女の子の声がこんなふうに聴こえるのは意外だった。
猿之助さんのおじいさんと、蔵之介さんの父と、二人との絡みも
いい感じだった。
2つとも子供の魂をあつかった作品で、幼児虐待などという言葉
を使わずして、現代にも訴える要素がじゅうぶんにあると思う。
この朗読劇が東日本大震災の復興関連と思うせいだろうか。
『家守綺譚』も今回の作品も偶然そういう題材なのか。
朗読を聴いているこの場が、いつも彼岸と此岸の接点であるよう
な気がしてならない。
「野槌の墓」の最後の一文が心にしっかり刻まれた。キュウウン。
「別れるけれど、消え失せはしない。亡き人びとはこの世を離れ
て、だからこそ永遠のものとなるのだから。」(「野槌の墓」より)
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~今、僕らが出来ること~朗読劇「家守綺譚」 観劇メモ(1)
~今、僕らが出来ること~朗読劇「家守綺譚」 観劇メモ(2)