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細かいことは忘れてしまったけれど、思い出せることだけ・・・。
観劇前に公演期間限定のドリンクを飲んだ!
アイスキャラメルミルクティー、300円なり。
ゆっくり飲んでいたせいで席につくのが遅くなったのに、いつもにぎやかなは
ずの前説の声が聞こえてこなかった。
そう、今回は静か~に静か~に始まるんだよね。
以下、ネタバレありです。
<あらすじ>
幕末の京都。所は岩国藩ゆかりの商家。名もない二人組の男たちが坂本竜馬と
中岡慎太郎に間違えられ、まつりあげられて、商家の土蔵にかくまわれる。
実は二人は屯所を脱走してきた新選組の元隊士、松吉と竹次郎。今さら嘘だと
言えない二人。そこに勤皇の志士、桂小五郎がやってくることに。さらに新選
組も乗り込んで来て・・・。どうする? 松吉&竹次郎。
<全体の感想>
初演も再演も観ていないので、私にとってはこれが初見。
パンフレットによれば「リメイク」だそう。
芝居のほうは、感涙にむせぶとか、何か教訓が得られるとか・・・は全然ない♪
シチュエーション・コメディの黄金パターン。
とマキノさんも書かれている通り、ときどき笑えて、ほろっときて、胃もたれ
せず、悩むこともなく、気持ちよく笑顔を持ち帰れる作品だった。
いつものキャラメルボックスとはやはり少し違っていた。
サッカーにたとえるなら、セットプレーじゃなく、ゲームの流れの中で得点し
たような感じ。細見さんが単独でPKを決めるとか、筒井さんが蹴ったコーナー
キックを西川さんが待ち構えてヘディングするんじゃなくて、全員で20個以
上のパスをつないでゴールに入れたようなバランスのよさ、痛快さ。
あとは力の抜き加減かな。手抜きではなくて、大人テイストな感じ。
圧倒的に強うそうじゃなくスキだらけのユルユルチームに見せかけて、実はか
なり緻密に計算されていたのかも。
M.O.P.のパロディはわからなかったけれど「高杉晋作が上海で買ってきた短銃」
という台詞では、「上海大冒険」の小市慢太郎さんの顔を思い浮かべた。
ほかには、新選組が御用改めから引き上げる時、甘いもの好きの沖田総司が
「こんどはへそ饅頭を買いに来ます」という台詞が好き。
<舞台装置など>
冒頭からエンディングまで、岩国藩にゆかりの和菓子屋の裏庭のような場所
のみ。(名物のへそ饅頭の箱が高く積み上げられてあった。)
建物や庭の造作などかなりリアルで、それもただの書き割りではない。母屋、
土蔵、厠、裏口と人が出入りする場所があちこちに作ってあったり、手水鉢は
実際に小道具として使われたり。二人がかくまわれている土蔵の屋根裏部屋
からは、ひょいと木に飛び移ったりもできる。そのせいか場面転換のない舞台
でもけっこう変化があり、飽きずに観られたと思う。
月の形もこまめに変化していた。この満ち具合で日にちの経過もほぼわかる。
今回の美術は、松井るみさん。プルミエールの特集で見た「太平洋序曲」の美
術を手がけた人なんですよね。今回のようなこじんまり(ゴメンナサイ!)し
たセットもされるのですね~。
<音楽>
ぜんぜん音楽のことなんてわからない私が、芝居の途中に思わず耳を傾けた。
かったるいような、まるで音が甘えたり、泣いたりしているような、やたら心
をかきむしるギターの音色。
アレッ! ボトルネックのギター? 憂歌団? アレッ! ブルース?
憂歌団に似てると思った音は<使用曲目リストと解説>によれば、スライドギ
ターだったらしい。使用曲アーティストの、おおはた雄一さんのアルバム名が
「ラグタイム」だったり、オープニング曲のイメージがヴィム・ヴェンダース
監督の映画「パリ、テキサス」だったり。むむ、ライ・クーダーだったのか。
解説を読んだだけで切なくなってしまう。
シチュエーション・コメディの時代劇に、この音楽とは。ヤラレマシタ!
<キャストについて>
●客演の3人
あて書きで予測がついてしまう舞台と違って、未知数の役者さんが入る面白さ
はあると思う。特に神田松吉役の浅野雅博さん。天然っぽいボケ味、ゆる~い
脱力感がよかった。強くはないが、女に惚れられる程度のプチカッコよさも醸
し出していたしね。
天王寺役の大家仁志さん。政に関心のある妹の心配もしつつ、弱小藩が生き残
るためにイロイロ画策する悩み多い役どころをわかりやすく演じていたと思う。
土方役の武田浩二さん。笑った顔が小市さんに似てる! おはつ、髑髏城の七
人、阿修羅城の瞳にも出演してたってホント?
●キャラメルボックスの人々
西川浩幸さんの桂小五郎。逃亡生活のエピソードは有名なので薄汚れた風貌で
も本物の桂だとは思いつつも、つねに「どっちなんだろう?」と思わせられる。
あのニヤニヤ笑いにごまかされてはイケナイ、いうヘンな楽しさがあった。
細見大輔さんの竹次郎は、松吉とナイスコンビでいっぱい笑わせてくれた。最
後にそっちの道に進むとは。
鶴橋清之助役の佐東広之さん。一番台詞が多く、からむ人間の数も多そうだっ
たけれど、体いっぱい使った演技がとても好印象。
坂口りえさん演じる女中頭のぬいは、神出鬼没で盗み聞きの名人(笑)。他の
登場人物たちの秘密を知っては口止め料をもらっているお茶目な存在。自分も
登場人物でありながら、時々、観客みたいに目撃者になっている点が面白い。
坂口さんが出没すると舞台がすごく盛り上がった。
こま役の渡邊安理さん。でっかいカツラといつも眠そうな目がおかしくて、
かわいかったー。このキャラ、作品を替えてまた見てみたい気がする。
美咲役の實川貴美子さん。男勝りの役で、いつも通りの元気よさだった。
最後に。
マキノさんといえば「おはつ」や「夢のひと」の脚本を書いた人。
成井さんになくてマキノさんにあるものは、男女の色恋沙汰・・・と思ってい
たら、今回私の琴線に触れたのが<かえで>だった。
かえで役の温井摩耶さん。ヒョエー、こんなに色っぽい人だったっけ!
オリジナルを見ていないのでわからないけれど、たぶん、このかえではマキノ
演出版でくっきりと浮かび上がったキャラなのでは?
どうしようもない男に惚れてしまって、冷たくしたり、つっついたり、探りを
入れたり、突き放したり。そのへんの大人の女心が舞台から匂ってきた。
コメディなのでライトバージョンではあったけれど、キャラメルボックスの舞
台には珍しく女の子でも女の人でもなくて、一文字の<女>がいた。
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