オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

『皇國二十四功』 當麻寺の中将媛

2018-03-04 | 皇國二十四功

今は昔、藤原鎌足の曽孫 藤原豊成(ふじわらのとよなり)に

「中将姫」と名づけられた少女がいた

この美しく聡明な姫は幼い時に実の母を亡くし

意地悪な継母に育てられる

 

 

 大蘇芳年 画 明治二十六年三月印刷 

 

【當麻寺(たいまでら)の中将媛】

蓮(はちす)の糸と共にいくつもの辛苦を重ねたのは

父横佩(よこはぎ)大臣豊成卿が筑紫へ左遷させられてから

継母に無慚の雪責を受けるが 吾身への悪事の報により

蝮蛇に生れ換ったことを 深く悲しみ世をはかなんで

大和の国二上ヶ嶽(ふじょうがだけ)の麓の當麻寺に出家し

髪をおろし真の佛を拝まんと 蓮の茎より糸を採り

曼陀羅を織った功徳によって 継母も生佛得脱し

虚空たなびく紫雲庵に 弥陀観音がおいでになり

行年二十九才にて西方浄土に旅立ったのは

宝亀六年(775年)三月なりき

柳亭種彦