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「表現の不自由展・その後」中止、テロ予告を放置する権力者

「テロ予告と脅迫に強く抗議します」あいちトリエンナーレ参加アーティスト72人が声明 表現の不自由展の中止に

「私たちが求めるのは暴力とは真逆の、時間のかかる読解と地道な理解への道筋です」

  ハフポストNEWS2019年08月06日

     安藤健二 

 愛知芸術文化センターで8月1日から開かれた企画展「表現の不自由展・その後」が、わずか3日間で中止された。

 「表現の不自由展・その後」は、90組以上の芸術家が参加する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の一環として注目を集めていたが、従軍慰安婦をモチーフにした「平和の少女像」や昭和天皇をテーマにした作品に対して、テロ予告や脅迫があったとして実行委員会が中止を決めた。

 実行委員会の会長を務める大村秀章・愛知県知事は会見で「ガソリン携行缶を持って行く」と、京都アニメーションの放火殺人事件を想起させるFAXもあったと明かした

 これに対して8月6日、あいちトリエンナーレ2019の参加アーティストのうち計72人が、共同のアーティスト・ステートメントを発表。「テロ予告と脅迫に強く抗議します」とした上で「私たちが求めるのは暴力とは真逆の、時間のかかる読解と地道な理解への道筋です」と訴えた。

全文は以下の通り。

アーティスト・ステートメント

あいちトリエンナーレ2019 「表現の不自由展・その後」の展示セクションの閉鎖について

 2019年8月6日

 私たちは以下に署名する、あいちトリエンナーレ2019に世界各地から参加するアーティストたちです。ここに日本各地の美術館から撤去されるなどした作品を集めた『表現の不自由展・その後』の展示セクションの閉鎖についての考えを述べたいと思います。

 津田大介芸術監督はあいちトリエンナーレ2019のコンセプトとして「情の時代」をテーマとして選びました。そこにはこのように書かれています。

「現在、世界は共通の悩みを抱えている。テロの頻発、国内労働者の雇用削減、治安や生活苦への不安。欧米では難民や移民への忌避感がかつてないほどに高まり、2016年にはイギリスがEUからの離脱を決定。アメリカでは自国第一政策を前面に掲げるトランプ大統領が選出され、ここ日本でも近年は排外主義を隠さない言説の勢いが増している。源泉にあるのは不安だ。先行きがわからないという不安。安全が脅かされ、危険に晒されるのではないのかという不安。」(津田大介『情の時代』コンセプト)

 私たちの多くは、現在、日本で噴出する感情のうねりを前に、不安を抱いています。私たちが参加する展覧会への政治介入が、そして脅迫さえもが——それがたとえひとつの作品に対してであったとしても、ひとつのコーナーに対してであったとしても——行われることに深い憂慮を感じています。7月18日に起きた京都アニメーション放火事件を想起させるようなガソリンを使ったテロまがいの予告や、脅迫と受け取れる多くの電話やメールが関係者に寄せられていた事実を私たちは知っています。開催期間中、私たちの作品を鑑賞する人びとに危害が及ぶ可能性を、私たちは憂い、そのテロ予告と脅迫に強く抗議します。

 私たちの作品を見守る関係者、そして観客の心身の安全が確保されることは絶対の条件になります。その上で『表現の不自由展・その後』の展示は継続されるべきであったと考えます。人びとに開かれた、公共の場であるはずの展覧会の展示が閉鎖されてしまうことは、それらの作品を見る機会を人びとから奪い、活発な議論を閉ざすことであり、作品を前に抱く怒りや悲しみの感情を含めて多様な受け取られ方が失われてしまうことです。一部の政治家による、展示や上映、公演への暴力的な介入、そして緊急対応としての閉鎖へと追い込んでいくような脅迫と恫喝に、私たちは強く反対し抗議します。

 私たちは抑圧と分断ではなく、連帯のためにさまざまな手法を駆使し、地理的・政治的な信条の隔たりを越えて、自由に思考するための可能性に賭け、芸術実践を行ってきました。私たちアーティストは、不透明な状況の中で工夫し、立体制作によって、テキストによって、絵画制作によって、パフォーマンスによって、演奏によって、映像によって、メディア・テクノロジーによって、協働によって、サイコマジックによって、迂回路を探すことによって、たとえ暫定的であったとしても、それらさまざまな方法論によって、人間の抱く愛情や悲しみ、怒りや思いやり、時に殺意すらも想像力に転回させうる場所を芸術祭の中に作ろうとしてきました。

 私たちが求めるのは暴力とは真逆の、時間のかかる読解と地道な理解への道筋です。個々の意見や立場の違いを尊重し、すべての人びとに開かれた議論と、その実現のための芸術祭です。私たちは、ここに、政治的圧力や脅迫から自由である芸術祭の回復と継続、安全が担保された上での自由闊達な議論の場が開かれることを求めます。私たちは連帯し、共に考え、新たな答えを導き出すことを諦めません。

 

あいちトリエンナーレ2019 参加アーティスト 72名 

賛同者一覧   2019年8月6日現在

青木美紅

伊藤ガビン

石場文子

市原佐都子

今津景

今村洋平

イム・ミヌク

岩崎貴宏

アンナ・ヴィット

碓井ゆい

エキソニモ

越後正志

遠藤幹子

大浦信行

大橋藍

大山奈津子(しんかぞく)

岡本光博

ピア・カミル

レジーナ・ホセ・ガリンド

ドラ・ガルシア

ミリアム・カーン

キュンチョメ

葛宇路(グゥ・ユルー)

クワクボリョウタ

小泉明郎

こまんべ(しんかぞく)

小森はるか

澤田華

白川昌生

嶋田美子

菅俊一

スタジオ・ドリフト

高嶺格

高山明

田中功起

津田道子

Chim↑Pom

TM(しんかぞく)

dividual inc.

ハビエル・テジェス

戸田ひかる

富田克也

トモトシ

永田康祐

永幡幸司

パク・チャンキョン

半坂優衣(しんかぞく)

広瀬奈々子

ジェームズ・ブライドル

キャンディス・ブレイツ

タニア・ブルゲラ

藤井光

藤原葵

ヘザー・デューイ=ハグボーグ

BeBe(しんかぞく)

星ヲ輪ユメカ(しんかぞく)

桝本 佳子

アマンダ・マルティネス

クラウディア・マルティネス・ガライ

繭見(しんかぞく)

三浦基

ミヤタナナ(しんかぞく)

ジェイソン・メイリング

モニカ・メイヤー

袁廣鳴(ユェン・グァンミン)

弓指寛治

吉開菜央

よしだ智恵(しんかぞく)

梁志和(リョン・チーウォー)+黄志恒(サラ・ウォン)

鷲尾友公

和田 唯奈(しんかぞく)

ワンフレーズ・ポリティクス(しんかぞく)

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東京五輪も潰される…FAX1枚の放火予告に屈した警察の怠慢

  日刊ゲンダ2019/08/05

 愛知県美術館などの国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、慰安婦を象徴する少女像などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」が中止となった問題。作品に抗議する電話やメールが1日の開幕から2日間で、1400件に上ったというから驚きだ。

 トリエンナーレの実行委員長を務める愛知県の大村秀章知事は3日、中止の理由について「テロ予告や脅迫の電話などがあり、総合的に判断した」と説明。<(少女像を)大至急撤去しなければ、ガソリンの携行缶を持ってお邪魔する>との脅迫ファクスが2日の朝に美術館に届いたことも明かした。

 警察に被害届を出したものの、「ファクスの送り主を特定できない」と言われたという。

 トリエンナーレの芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介氏は自身のツイッターに、脅迫ファクスについて<ネット経由で匿名化されて送られていましたね。手段をよく知ってる人の犯行です>と投稿。たとえ匿名であっても、警察が犯人を特定できないことには愕然とせざるを得ない。来年の東京五輪に向けて、テロ対策を強化してきたからだ。

 警察庁の「国際テロ対策強化要綱」は、テロを未然に防ぐために<テロの脅威に係る情報収集・分析を周到に行うことが必要>と明記している。“ガソリン放火”予告の犯人すら分からない警察が、テロの脅威から東京五輪を守れるのか。兵庫県警元刑事の飛松五男氏がこう言う。

 「警察が本気を出せば、匿名でもファクスの送り主を特定できます。警察はサイバー犯罪などに特化した人材を育成するために予算を多くもらっているので、特定できないほどヤワではありません。あえて公表していないという可能性も考えられますが、ファクスの送り主を本当に特定できないのなら大問題です。いずれにしても、職務怠慢。五輪を来年に控えているのに、緊張感に欠けています」

 津田氏は今回の騒動について「電話による攻撃で文化事業を潰せてしまう悪しき事例をつくってしまった」と悔やんでいた。

 ファクス1枚で東京五輪が中止――怠慢警察の下ではあり得ない話ではない。

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 「表現の不自由展」中止問題 大メディアが傍観の不思議(一部抜粋)

   日刊ゲンダイ2019/08/06

 元共同通信記者でジャーナリストの浅野健一氏はこう言う。

「メディアは表現の自由に対する公権力の介入と報じるべきなのに静観している。深刻な状況です。例えば首相官邸にガソリンをまく、と予告すれば即刻逮捕ですよ。今回も警察など当局が徹底捜査に動くような報道があって当然なのに何もない。現場記者や報道機関全体の低レベル化が進んでいるとしか思えません」

 安倍政権の大本営発表に慣らされた従軍記者ばかり増えているようだ。



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