沖縄県民大会に2500人
「しんぶん赤旗」2024年12月23日
「命・尊厳守るために行動」
沖縄県内で昨年12月に発生した米兵による少女暴行事件に抗議し、日米両政府に再発防止を求める沖縄県民大会が22日、沖縄市の沖縄市民会館大ホールで開かれました。女性団体を中心に、平和団体や労組なども加わる実行委員会の主催。女性の権利の象徴、ミモザのイエローカラーのストールなどを身に着けた参加者が会場とロビーいっぱいに約2500人(主催者発表)詰めかけ、命と尊厳を守るために行動していくことを誓い合いました。
知事 基地ある不条理告発
実行委共同代表の伊良波純子・県女性団体連絡協議会(女団協)会長が主催者あいさつし、県議会が事件発覚直後の7月に全会一致で可決した意見書に言及。「求めているのは当たり前の安心安全な暮らしだ」と強調しました。大人世代には、被害者の少女を独りにせず、子どもたちに安全な日常を約束することなどの役割が課せられるとして、その責任を果たすためにも県議会意見書の実現を日米両政府に求めていこうと呼びかけました。
玉城デニー県知事も駆け付け、米軍基地あるがゆえに不条理を強いられ続ける沖縄の状況を国際社会に伝えていく意義を指摘。「私たちは小さな島の一県民ではあっても、国際社会と同じ規範が適用されることを求めているのだと訴えていこう」と力を込めました。
10月の国連女性差別撤廃委員会の審査に市民団体の代表として参加した親川裕子共同代表は、同委員会が初めて在沖米軍の性暴力に言及する勧告を日本政府に出したことについて報告。高良沙哉共同代表(沖縄大学教授)は、事件を半年間も県民に知らせなかった日本政府などの隠蔽(いんぺい)によって被害者の保護が図られなかった問題を糾弾しました。
若者の声を訴えるため中塚静樹さん、崎浜空音さんの大学生2人が登壇。沖縄高校生平和ゼミナールで活動する生徒たちのアピールもビデオ上映され、切なる訴えに、多くの参加者が涙ぐみながら大きな拍手を送りました。
被害者への謝罪とケア、補償や事件発生時の迅速な情報提供、日米地位協定の抜本的改定などを求めた大会決議文を神谷めぐみ共同代表が読み上げ、参加者の拍手で採択されました。
大会の進行はユーチューブで配信されたほか、名護、宮古島、石垣の各市でもサテライト会場が設けられ、中継されました。
日本共産党からは小池晃書記局長、赤嶺政賢衆院議員、白川よう子参院比例候補らが参加しました。
登壇者の発言(要旨)
日米政府の責任追及
大会実行委員会共同代表 沖縄大学教授 高良沙哉さん
1995年の県民大会から30年、変わらず女性や子どもが踏みつけられる状況に私たちは声を上げました。女性や子どもの尊厳を踏みにじる性暴力は絶対に起こしてはなりません。
2023年12月に起きた少女誘拐・性的暴行事件に県民は怒り、事件が知らされずさらに4件の事件が隠されていたことに抗議しました。7月10日に沖縄県議会は全会一致で抗議の意見書を可決。事件の悪質性を指摘し、被害者への謝罪やケア、実効性ある再発防止策実現を求めるものです。
基地の事件・事故防止と、被害者を守り加害者を処罰することは日米両政府の責任です。意見書の一日も早い実現と、二度と事件を起こさせないことを両政府に求めていきましょう。
国連委動かした力で
大会実行委員会共同代表 Be the change Okinawa代表 親川裕子さん
今年10月にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で日本政府の女性差別撤廃条約に関する報告書の対面審査が行われました。
沖縄にとって何が画期的だったか。女性差別撤廃委員会から初めて在沖米軍に関する質問と勧告が出されたという点です。女性、平和、安全保障に関する項目と、ジェンダーに基づく暴力の2項目で勧告が出されました。
背景には、県内の市民社会から女性差別撤廃委員会への働きかけがあり、県外の団体からの働きかけもありました。総合力の成果と言えると思います。今後の取り組みで、今日の県民大会も大きな一歩ですし、県内外の関係機関への直接要請行動も非常に重要です。
国際社会と同規範を
沖縄県知事 玉城デニーさん
この少女暴行事件を受けて県知事として、多くの県民がこれまでも、そして今も、不安の中で基地と共存させられていることを、もっと厳しく、もっと大きく声に出し、行動していかなければと痛切に感じています。
私は9月の訪米でも、この非情な事件が沖縄の現実であることを米国政府関係者らに伝えました。国際社会に私たちは、小さな島の一県民ではあっても、国際社会と同じ規範の適用を求めているのだと、みんなで協力して訴えていきましょう。
まきてぃーないびらんどー(負けてはなりませんよ)、まじゅん、ちばてぃーいちゃびらなやーさい(ともに頑張ってまいりましょう)。
理不尽な現実打破を
大会実行委員会共同代表 沖縄県女性団体連絡協議会会長 伊良波純子さん
1995年の少女暴行事件から29年。今も軍事性暴力が子どもたちの平和な日常を脅かしている現実、沖縄に生じる理不尽を打破しなければいけません。
今回の事件は半年間、県民に隠され、被害少女には保護が届かなかった。隠蔽(いんぺい)は政治的な意図によるものではないか。捜査から裁判まであらゆる段階での被害者が保護を望みます。
被疑者の米兵の身柄引き渡しを日本側は求めませんでした。地位協定による特権は、米兵犯罪が行われ続ける背景であり、改正を強く求めます。
(被害少女に)あなたは悪くない。私たちはあなたの味方だと伝え続けたい。これ以上沖縄に生きる人々を軍事性暴力の犠牲にしてはいけない。
沖縄犠牲に「安全」か
大学生 中塚静樹さん
何度目でしょうか。沖縄に幾度となく押し寄せる悲しみの波は、いつになれば止まるのでしょうか。県民を危険から守らず、被害女性の人権よりも、日米関係を重視する日本政府に憤りを感じます。
日米の安全保障が沖縄の犠牲のもとに成り立つものなら、そんなものは安全保障と呼ばない。安全保障優先で県民の声に向き合ってこなかった政府にも事件の大きな責任があります。
事件は、被害女性の人権を踏みにじり、深い心の傷を負わせました。この事件は、米軍基地由来の事件ではありますが、基地賛成・反対の枠組みの中だけで考える問題ではありません。目を向けるべきは、性暴力によって、人権がじゅうりんされたというところです。
私自身、性暴力を女性だけの問題として傍観していました。暴力が弱者に向けられる社会構造や、沖縄が置かれた不平等の問題を一人一人が認識する必要があります。それが被害者に寄り添い、被害をうまないための第一歩につながります。
声を上げ続けても変わらない現状に、憤りや無念を感じているかもしれません。ですが、沖縄の人権と平和を守るために諦めず発信しましょう。保革問わず皆で共に訴え、沖縄の痛み、苦しみを、県外、国外へと共有しましょう。
若者の行動が大きな力となります。事件を二度とうまない平和な未来をつくるために地域を超えて皆で協力し行動しましょう。私はこれからも平和の扉が開くまで行動し続けます。
絶対に繰り返さない
大学生 崎浜空音さん
2016年、20歳の女性がウオーキング中に強姦(ごうかん)、命を奪われました。当時私は中学2年で初めて県民大会に参加。大勢の人がもう絶対に繰り返さないと言っていたのを覚えています。
進学した東京では米兵に襲われることを恐れたことはありません。沖縄に生まれ、基地があるという理由でなぜ青春を奪われなければならないのでしょうか。
ウチナーの女性は二重に人権を侵害されています。米軍の植民地的支配と、女性蔑視の問題です。一人一人が性暴力をなくすために行動していきませんか。
私はこの言葉を、この県民大会が最後の県民大会となるように、その重みが子どもたちに希望を持たせるために使います。「もう絶対に繰り返さない」
珍しく、今日も晴天でした。
気温も下がり今朝は―15.5℃、昨日よりちょっとマシ。