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石破政権どこまで冷血 高額療養費引き上げ「予定通り」強行…患者団体や野党が求める「凍結」突っぱねる

2025年03月01日 | 社会・経済

日刊ゲンダイDIGITAL 2025/03/01

「一時凍結へ」──。石破政権が負担上限額の引き上げを予定している高額療養費制度の見直しについて、そんな見出しのニュースが27日、駆け巡った。ところが、一夜明けた28日の衆院予算委員会で石破首相が表明したのは、問題先送りの弥縫策。がん・難病患者に負担増を強いる愚策の強行だった。

■来年8月以降は「検討」の弥縫策

「高額療養費制度の見直し自体は実施させていただきたい」

 衆院予算委で立憲民主党の野田代表から「見直し凍結」の英断を迫られた石破首相は、開口一番、こう答弁。今年8月からの負担上限の引き上げを予定通り実施すると宣言した。

 当初計画では、療養費制度の負担上限は年収700万円の場合、現行の8万100円から今年8月に8万8200円に引き上げられ、年収区分の細分化に応じて2026年8月には11万3400円、翌27年8月以降は13万8600円に3段階で跳ね上がる算段だった。あまりに非情な負担増に批判が集まり、石破政権は26年以降の見直しの再検討を余儀なくされた。

 しかし、患者団体や立憲を中心とする野党が求めているのは、あくまでも「凍結」。8月からの引き上げを白紙に戻し、当事者を含めた議論のやり直しだ。これに対し、石破政権は見直し実施の既定路線を崩さず、来年8月以降については、予算委で「本年秋までに決定したい」と時間稼ぎをし始めた。

 そもそも、療養費制度の負担上限引き上げは厚労省の社会保障審議会(医療保険部会)で昨年11月から約1カ月間のわずか4回の議論で決まった経緯がある。がん・難病患者をなおざりにした結果、非難ゴウゴウの事態を招いているのに、それでも引き上げ強行とは血も涙もない。

■「この間の物価上昇分だ」答弁のマヤカシ

 なぜ、そこまでかたくななのか。石破首相は予算委で、引き上げが約10年ぶりだとして「この間の物価上昇分だ」と言い繕った。そうであれば行うべきは、患者の負担減だろう。

 総務省はきのう、全国の先行指標とされる東京都区部の小売物価統計調査を発表。2月はコシヒカリが5キロ当たり4363円。前年同月から8割近くも上昇し、過去最高を更新した。主食たるコメもしかり、あらゆる食料品、ひいてはモノの値段が上がっているというのに、難病治療の負担増も強いるとは理屈が通らない。

「物価上昇に負けないほど賃金が伸びて可処分所得が増えているならまだしも、そうではありません。物価は上がり続け、家計は圧迫されています。大病すれば収入減は避けられません。本来なら、物価上昇分を考慮して難病患者の負担を減らすべきです。政府は一体、何重苦を強いるつもりでしょうか」(全国保険医団体連合会事務局次長・本並省吾氏)

 場当たりでは墓穴を掘るだけだ。引き上げ凍結の再考しかない。

  ◇  ◇  ◇

 自公維で合意した「高校無償化」は5000億円かかるのに、200億円で可能な高額療養費「見直し凍結」は拒否…関連記事【もっと読む】で詳しく報じている


国民の命も生活も眼中にない、ただ裏金欲しさの偶作が続く。
「高校無償化」も必要。
必要のないものは、突出した「軍事費」だ。
「軍事費」によって国民が見殺しにされる事態は避けなければならない。

今日もプラス氣温の良い天氣。
家の前の舗装道路の氷割り、好きなんです。
これから札幌へ行ってきます。
帰りは遅くなりますので、今のうち更新です。


宇宙船トランプ号の目的地

2025年02月27日 | 社会・経済

氣になる記事を見たので紹介しておこう。
でも、長い記事なので興味のない方はスルーしてください。

 

【寄稿】宇宙船トランプ号の目的地(北丸雄二)

マガジン9 https://maga9.jp/250226-8/

米国・トランプ大統領が2期目の政権をスタートさせてから1カ月あまり。この間、70本を超える大統領令に署名しています。なかでも、就任後すぐに、連邦政府のDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムの廃止と、「性別は男と女の2つだけ」とする大統領令に署名したことは大きな波紋と動揺を広げました。こうしたトランプ政権の姿勢から見えてくるものは何か。ジャーナリストの北丸雄二さんにご寄稿いただきました。

救命ボートの倫理とは

 「救命ボート倫理(lifeboat ethics)」と称して提示される問いがあります。60人乗りの救命ボートにはすでに50人が乗っている。そこにさらに波間を漂う100人もの遭難者がいる。さてその場合、何をどうするのが倫理的か、あるいは最適解か?

 1974年にアメリカの生態学者ギャレット・ハーディン Garrett Hardin が持ち出したこの倫理上の難題は古代ギリシャの「カルネアデスの舟板」(※)の逸話にも似ていますが、カルネアデスが個人の行為として刑法上の緊急避難に敷衍されるのに対し、ハーディンの方は集団の行動規範をどこに求めるかの問題として豊かな先進国と貧しい途上国の関係に置き換えられました。

 残った空間に10人だけを乗せるか、あるいは全員の救命を試みて舟もろとも沈没するか、それとも安全を確保するために10人分の余裕を残したまま波間の全ての遭難者を見捨てるか。

 地球の生態系(人命)を維持するための資源(救命ボート)には限界があります。したがって全員の救命を図るという「完璧な正義」の実現は、実は「完璧な破局」に結びつく。だから生態系維持のためには現状を危険にさらす要素(他の遭難者)は排除しなければならない。すなわち未来を守るためには、途上国を見捨てて先進国の安全を確保することは、倫理的とは言えないまでも必要悪なのだとハーディンは結論づけるのです。

 ハーディンのこの主張は当然の帰結として途上国への援助の停止、共有資源の独占的管理、厳格な移民政策などの政策に結びついていきます。もちろんこれは「反人道的」で「再分配の正義に反している」として強い反発を浴びました。

 もうお分かりでしょう。その批判から半世紀以上が過ぎ、私たちがいま目撃しているのはまさにこの「救命ボートの倫理」の再来です。トランプ政権が、第一次から4年間の周到な準備期間を経た第二次の今回、さらに徹底させているのが、「完璧な正義」を廃棄することで「完璧な破局」から逃れるという道筋の確立です。

 例を取ります。

 完璧な正義とは何か? 少数者を含め、全ての弱者・遭難者を救おうという「DEI(多様性、公平性、包摂性)」の思想に染まる「WOKE(意識高い系)」の理想と目標がそれです。

 なぜトランピズムがそれを徹底排除するのか? 救命ボートもろともの沈没=完璧な破局を避けて、自分たちが生き残るためです。

 その「自分たち」をトランプ政権は「アメリカ・ファースト」という大きな言葉で代用しています。しかしこの「アメリカ」をよく見てみれば、それは未申請・無届け移民やLGBTQ+、およびBLM(Black Lives Matter)の黒人や先住民たちを含まない「普通のアメリカ人」、つまり白人系のアメリカ人に象徴されるアメリカのことです。

※カルネアデスの舟板:船が難破し、船員たちが海に投げ出されたとき、小さな板が流れてきた。一人しかつかまれない板を、自分が生き延びるため他者から奪って相手を水死させたら罪に問えるかという問題

エコファシズムとの関係

 ところでハーディンの生態学(エコロジー)は、1960年代の先進国の工業化に伴う化学農法の拡大や公害の激化を背景にしています。地球の生態系が危機に直面している。1962年にレイチェル・カーソンの『沈黙の春 Silent Spring』が出版され、ジェイムズ・ラヴロックが地球全体を一つの巨大生態系と見る「ガイア理論」を打ち出したのもこのころでした。やがて1973年には、それはノルウェーの哲学者アルネ・ネスの「ディープ・エコロジー」という概念に”深化”します。

 従来の環境保護活動は「シャロー(浅い)」、もっとディープに(深く)徹底しなければならない、というこの考えは、ガイア生態系の中で全ての生命存在が人間と同等の価値づけをされます。そうじゃなければ地球は救えない。人間の利益だけを考えていてはダメなのです。そこではガイアを保護すること自体が目的であって、人間存在の利益は結果的に付与される付随物に過ぎない。

 そしてこの価値観が、実は40年前のナチスの「エコファシズム」と共通する。

 これが本稿の本題である性的少数者排除とどう結びつくのか──トランプ政権の「アメリカ」第一主義が、エコロジーとファシズムの結託によってもたらされるということを示すには、かなり複雑な論理の道筋を辿らねばなりません。

 ナチス・ドイツは発足直後の1933年に動物保護法、1934年に国家狩猟法、1935年に帝国自然保護法を制定しました。動物虐待の禁止、麻酔なしの生体解剖の禁止、野生生物の保護のための森林保護などはまさに地球の生態系の保護、つまり環境保護の先駆け政策です。人間のことだけを考えていてはダメ、人間中心主義から脱却して、全体のバランスを優先しなければダメ。これは、生態系の保護のためには人間の排除もやむなしというJ・ベアード・キャリコットの生態系中心主義に辿り着きます。そこでは人間も動物も同じ要素です。「同じように守られるべき」という主張は同時に、「同じように切り捨ててもやむなし」という結論にも等しく反転します。

 こうして人間と動物の境界線が薄れます。動物の屠殺と、人間に対する殺人が同じレベルで論じられるようになる。

 先進国では19世紀末からフランシス・ゴールトンの提唱した優生思想が受け入れられるようになっていました。ダーウィンの進化論と遺伝学を、人間集団の遺伝的な質を向上させるより良き未来のために使おうという思想です。

 優れた者を優先させるこの考えは、ハーディンのあの「救命ボートの倫理」です。劣っている者=遅れてきた遭難者は見捨てても良い。むしろ人口は積極的に減らした方が持続可能な未来のためには効率が良いとまで言う、マルサスの人口論の発展系。あと10人が乗れるのに、その10人をも乗せずに60人乗り救命ボートに50人のままで行った方が生存率は高まるのですから(あるいはその50人すら40人、30人に減らした方が……)。

 ナチスはそうしてドイツのために「劣等民族」であるユダヤ人の”浄化”に踏み出します。それは動物を屠殺するのと倫理的に違いはない。優秀なアーリア人こそが「ドイツ」です。ちょうど「アメリカ・ファースト」の「アメリカ」が「自分たち」だけのアメリカであるように。

 こうしてディープ・エコロジーは実はナチスによって都合よく使われたエコファシズムにも繋がってしまう。それは「救命ボートの倫理」なのです。トランプを熱狂的に支持するMAGA(※)の人たちは、「自分たち」はその救命ボートに初めから乗り込んでいるのだと信じて疑わない人たちです。本当にそうなのかは、これからのトランプ統治の数年でわかることですが。

 そうやって見直してみると、トランプ政権が矢継ぎ早に打ち出す行政上の大統領令や外交における新基軸──”不法”移民の即時強制退去、高関税の脅し、法人減税、ウクライナとガザにおける「力による現状変更」の容認、グリーンランドやパナマ運河への覇権宣告、51番目の州としてのカナダ構想、行政省庁の縮小解体、DEIの排除、人種および性的多様性の否定、メディアやジャーナリズムの封じ込め、そしてイーロン・マスクの偏重──も、巷間言われる「支離滅裂」「何をやるか予測不能」ではなく、全てがこの「救命ボートの倫理」に則っていることがわかります。そしてこれらの背後には現在、トランプを盾にトランプ以上にトランプ的な政治を体現している、下野の4年間を臥薪嘗胆に周到に準備した、法理論に長けた多数の若手政治戦略家たちが控えているわけです。

※MAGA:Make America Great Againの頭文字をとった造語。トランプの選挙スローガンであり、熱狂的な支持者のこともMAGAと呼ぶ

「キャンセル」される「T」の存在

 その中で、あたかも「自分たち」以外の象徴のように消し去られようとしているのがトランスジェンダーの人たちの権利です。これまで米国政府サイトで使われていた性的マイノリティを列記する言葉「LGBTQI(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・クイア・インターセックス)」が、トランプの再就任直後にすべて「LGB」に変わりました。「LGBTQI旅行者 」のための情報を提供していた国務省のサイトは現在、「LGB旅行者」に、LGBTQI+の養子縁組希望者のための情報ページも「LGB」向けになりました。コロナやエイズ禍で活躍したCDC(疾病管理予防センター)のサイトからも、司法省、労働省、商務省などのサイトからも、LGBTQ+関連の健康資料や性的指向に基づく差別回避の指針などが軒並み消え去りました。「T」だけでなく「LGBTQ+」全部がなくなりつつある……。

 実はトランプが最初にアメリカの政治土壌に足を下ろした2017年1月20日のその初日にも、ホワイトハウスのウェブサイトからエイズやLGBTQ+関連のページが跡形もなく消えました。その4年後にバイデン民主党が政権を取り戻して、同時に関連サイトも復活するのですが、さらに4年後の今回、2025年1月20日に再びそれらが(より大規模に)「存在しないもの」になったというわけです。

 前回は騒がなかった日本のメディアも「性別は『生物学的な男女のみ』トランプ氏、多様な性認めぬ大統領令」(朝日)、「『性別は男性と女性だけ』 トランプ氏、大統領令でDEI施策縮小」(毎日)、「性別は『男性と女性だけ』、『ドリル、ベイビー、ドリル』…トランプ第2次政権は前政権否定から」(東京)=いずれも2025年1月21日付=と大きく取り上げました。日本のジャーナリズムにおいてもやっと性的多様性を含む「DEI」問題が”旬”のテーマになったことの証左ですが、本家アメリカが逆方向に向かって日本の方が人権意識に覚醒するというのは皮肉な話です。

“予告”されていた大統領令

 おさらいしましょう。

 トランプの前のオバマ政権は教育や社会保障といった分野で「性別」の定義を個人の選択とする考えを打ち出し、トランスジェンダーの児童生徒に自らが選んだ「性」のトイレの利用を認めました。米軍へのトランスジェンダーの入隊も2016年に受け入れることを決めました。

 ところが第一次トランプ政権は発足1カ月余の2017年2月22日、生徒が性自認に則してトイレを使用できるとしたオバマのトランスジェンダー生徒保護ガイドラインを撤回。同7月には「米軍は圧倒的な勝利のために集中しなければならず、トランスジェンダーの受け入れに伴う医学的コストや混乱の負担は受け入れられない」などとして米軍へのトランスジェンダー新規入隊の停止措置を執ったのです。

 当時すでに米軍全体の0.7%ほどに当たる約9,000人のトランスジェンダーが軍務に就いていました。その当時の連邦裁判所は流石にトランプのこの措置を混乱が大きいとして阻止し、入隊手続きは再開されましたが、トランプ政権は諦めません。発足2年目、2018年の中間選挙を控えて、保守派の票固めをしたいトランプはさらなる攻撃に出ます。

 選挙直前の同年10月、ニューヨーク・タイムズはトランプ政権が「性別」の定義を「男性か女性かのいずれか一方」であり「生まれた時または生まれる前に確認された不変の生物学的特徴に基づく」と規定し、また「出生証明書の原本に記載された性別は、信頼できる遺伝的証拠による反証がない限り変更できない」とする方向で統一することを検討している、と報じました。

 それまでの小手先のトランス排除措置ではなく、性別に違和感を持つトランスジェンダーの存在自体を全否定しようとしたのです。

 ね、今回の大統領令と全く同じ文言でしょう?

 全米で推定140万人(0.4%)と言われたトランスジェンダーの人々の存在を「無」にする動きは7年前のそのときは後が続かず拡大しませんでしたが、すでに十分に予告されていたわけです。

トランスジェンダー抜きに語れぬ歴史

 「性別は男女の2つだけ」という今回の大統領令は、ややこしいトランス差別のあれこれをまとめて一気に吹き飛ばす論理です。

 トランスジェンダーの存在が社会一般に認知されるようになったのは1969年の「ストーンウォールの暴動/反乱」が契機です。当時は性的少数者の内実に関する認識はそう解像度が高くはなく、外部の人間にとっては十把一絡げに「ヘンタイ」であり「オカマ」でした。英語ではいずれも侮蔑語や卑称の「ソドマイト(ソドムの住民)」だったり「ファゴット」「クイア」そして「ゲイ」だったわけです。

 ニューヨーク・マンハッタンのダウンタウン、グリニッジ・ヴィレッジにある「ストーンウォール・イン」はいわゆる「ゲイバー」として伝えられますが、この「ゲイ」は当時は今で言う「LGBTQ+」の人たちを網羅的に示す言葉でもありました。そしてその「暴動/反乱」の主体は、警察の暴力や摘発の最大の標的だった男性相手の街娼たち、つまりドラァグ・クイーンあるいはトランス女性、そして警官隊への反撃を呼びかける第一声を挙げたレズビアンだったというのが定説です。

 つまり現在に続く「ゲイ」の人権運動・解放運動は、ゲイ男性というよりむしろ(今で言うノンバイナリーやトランス女性をも少なからず含んでいただろう)ドラァグ・クィーンや、(今で言うノンバイナリーやトランス男性をも少なからず含んでいただろう)レズビアンの闘士たちが動いたからという起点抜きには語れない。

ちゃぶ台返しの「男女二元論」

 しかし、トランプ政権は当初からすでに同性婚も合法化され可視化や理解も定着したゲイやレズビアンへの攻撃を諦め、より政治問題化しやすく一般の理解も浅いトランスジェンダーを標的にします。

 政治問題化とは、新たな政治資金を集めるためのネタにするということです。また同時に、トランスジェンダーの人たちを、「普通のアメリカ人」にとっての脅威として恐怖を煽ることです。敵を作り、それに打ち勝つための資金を募る、という古典的な政治手法です。

 最初は女性トイレや女性更衣室へのトランス女性の”侵入”を性暴力的脅威だと訴えました。それはやがて女性の競技スポーツの分野でトランス女性が「男性の肉体で思いのままにメダルを獲得している」という話になります。しかし前者はトランス女性による性加害の危険性ではなく、性犯罪者による性加害の問題です。後者は、トランス女性のスポーツ選手にトップ選手はほとんどいないという事実を挙げて包摂的な参加方法を模索する研究者と、わずかな差で勝敗の分かれるトップクラスのスポーツではトランス女性の参加禁止は必須とする研究者で議論が分かれます。

 ところが「性別は男女の2つ」と断じた今回の大統領令は、上記の論争に簡単に片をつける──女性スペースにおけるトランス女性の、性犯罪とか脅威とかの可能性の真偽を論じる面倒くさい議論よりも、「人間には男か女かしかいないのだから出生時の性別で男なら女性スペースには入れない。それが常識だろう」というものです。

 女性競技スポーツにおける議論も同じ。「テストステロンがどうだ、筋肉量がどうだという面倒な話はどうでもいい。男なら男、女なら女。話は簡単」

 トランプが第二期の就任演説で「常識の革命 the revolution of common sense が始まる。コモンセンスこそが全てだ」とブチ上げたのはそういう「常識」のことです。19世紀末からコツコツと積み上げ、人間の性とジェンダーの在り方の不思議を解像度を上げることで「新たな常識」として更新してきた性科学や精神医学の成果が、最大の支持母体であるキリスト教福音派的な「常識」の一言でまるでなかったことにされる。人智の基盤を「宗教から科学へ」シフトしてきた人間の歴史が否定されるわけです。MAGAの人たちが批判する「キャンセル・カルチャー」とはまさにこちらの方ではないか?

吹き荒れるトランス排除の嵐

 このスタンスで、トランプは「化学療法・外科手術による性器除去から子どもを守る」とする別の大統領令にも署名しました。19歳未満を対象とした性適合治療への連邦資金援助を停止する措置です。

 これにも伏線があります。第一次トランプからバイデンに政権が変わった2021年から、主にトランスジェンダーを標的にした反LGBTQ+政治の戦場は連邦から州や地方自治体に移りました。トランス敵対法案の提出は2023年には全米で合わせて年間604本に積み上がり、うち87本が成立。2024年には43州672本に増えました。うち可決は50本で、他613本は否決されたものの、2025年には大統領令のお墨付きもあって激増する恐れがあります。

 現時点では全米50州中26州で青少年を対象とした投薬、手術、メンタルヘルスなどの性適合治療が制限されるようになっています。うち25州は共和党主導の州です。

 「賢いトランプ」として一時はトランプに代わる大統領候補として売り出したフロリダ州知事のロン・デサンティスは2022年7月に州議会共和党と結託して、ゲイなどの性的少数者について公の場で話すことを禁ずるいわゆる「Don’t Say Gay(ゲイと言うな)法」を施行し、現在は高校までのすべての公教育でジェンダー・アイデンティティや性的指向などに関して教えることを禁止しています。もちろんLGBTQ+に関する書籍は図書館から取り除かれてしまいました。これはロシアのプーチン政権が2013年に成立させた「同性愛宣伝禁止法」と同じ考え方です。その思想が全米に拡大しつつあります。

 まだあります。一時はトランプの政敵だったマルコ・ルビオが長官に任命された国務省は、バイデン時代に導入された性別欄「X」付きのパスポートの発行申請を認めなくなりました。『ユーフォリア』や『ハンガーゲーム 0』に出演したトランス女性俳優兼モデルのハンター・シェイファーが、再発行パスポートの性別欄が「F(女性)」から「M(男性)」に変更されたとTikTokで抗議したニュースが流れたのも最近のことです。

 また、連邦刑務所に収監中のトランス女性の受刑者の一部はすでに隔離用施設に移送され、男性用刑務所への移送を告げられている事例も始まりました。

 このほかにも「ドラァグ(異性装)の禁止」「トランス学生のカミングアウトの強制」「出生証明書の性別変更の禁止」「運転免許証の性別変更の禁止」などの法案があり、中にはインターセックス(男女いずれの典型的な身体的特徴=染色体・生殖腺・性器などに当てはまらない性別未分化)の子どもに性別決定手術を強制する流れも生まれそうなのです。

 こうした反トランスの空気が濃くなる中では、反トランス法の制定後にトランスの若者の自殺企図が前年比最大で72%増加した州もありました。トランプ二期目のアメリカ社会で、マイノリティ全般への差別加害がどれだけ拡大するか心配です。

「ノアの方舟」のアナロジー

 さて、再び「救命ボートの倫理」です。

 ここからの結論はなんとも突飛なものです。でも、就任1カ月で前代未聞の約70本もの大統領令を出し、それらが多方向に実に突飛に突出するように見える政権の狙いを見極めるには、こちらも論理を繋ぎながら突飛な分析にならざるを得ない。

 現時点でわかっているトランプ政権の政策では、まず高関税貿易と無届け移民労働の排除でさらなるインフレが誘導されることになります。次に同じく高関税貿易と法人税減税と行政省庁の縮小解体による規制解除で国内企業活動が活性化します。ウクライナ、ガザ、グリーンランド、パナマ運河などにおけるアメリカの覇権拡張で国家の権益も増大する。

 その流れで登場するのは超格差社会です。一般国民の所得も伸びる一方で、企業や富裕層の収益は比較にならないほどに増大します。ちょうど、イーロン・マスクの個人資産が2024年春の時点で約2000億ドル(30兆円)だったのが、同年末には人類史上初の約4000億ドル(60兆円)に倍増したように。

 4000億ドルというのは、韓国、オランダ、ブラジルの国家予算に匹敵します。マスクの所有するスペースXなどは米国政府から200億ドル(3兆円)もの連邦資金を得てロケット開発を進行中ですが、そのマスクがDOGE(政府効率化省)のトップとしてNASA(アメリカ航空宇宙局)を潰そうとしているのはまさに利益相反、つまり「NASAの宇宙開発は効率が悪いから是非うちのスペースXのロケットに転換を」と言っているようなものなのです。

 超格差社会の出現で、何をするのか? 超富裕層向けの救命ボートを作ることです。

 「救命ボートの倫理」はナチスのエコファシズムと通底していると書きました。人減らしを目論むマルサスの先の「超」人口論とも。ゴールトンの優生思想とも。

 地球は、もう人類を支えるだけの環境を持ち得なくなっている。気候変動は(「神の意思なのだから」と福音派支持者には説明するが)もはや人間がどうこうできるものではない。しかし民主主義とは、WOKEとは、DEIとは、現在の77億人から2050年には97億人にもなる全ての人類を救おうとする非効率な試みだ。完璧な正義は完璧な破局をもたらす。我々は世界全体を救うことなどできない。ならば、生き延びられる者、優秀な者、選ばれし者が生き延びる道こそが人類の選択すべき最も倫理的な道である。

 まさに福音派の好きそうな「ノアの方舟」のアナロジー。実に古典的な白人至上主義、男性優位主義の復活です。

 ベルリン自由大学グローバル思想史大学院の博士研究員ベン・ミラーは、ローリングストーン誌の「ARE TRUMP’S ACTIONS ‘UNPRECEDENTED’? HERE’S WHAT SEVEN HISTORIANS SAY(トランプの行動は先例なきものか? 7人の歴史家は語る)」(2025年2月22日)の記事でこう指摘しています──トランスジェンダーの人々に向けていま飛んでいる攻撃は「the front of a flying wedge which is really going after the bodily autonomy of absolutely everybody, cis women included(トランス女性とシス女性を分断させる楔(くさび)の先端に見えるが、実はそれはシス女性を含む本当に全ての人間の身体的自律を対象とした攻撃なのである)」。

 トランス女性でもシス女性でもない誰かが、この楔を投げつけている。そしてその誰かは、他の全ての人間の自律を蔑ろにして、自分たちだけは別の世界にいる。

 かつて「宇宙船地球号 Spaceship Earth」という言葉がもてはやされました。地球という運命共同体の乗組員の一員として、国家間の争いはもうやめようという意味でも使われました。

 いまイーロン・マスクの画策する「宇宙船トランプ号」は、そんな地球を見捨てて「自分たちだけ」で火星へ向かおうとしています(いま何か起きた時の当座の避難場所は太平洋のシェルター付きの孤島だったりしますが)。その「陰謀」の目眩しに、地球上に取り残されることになる私たちにはトランスジェンダーや異人種や移民や難民の「問題」にボウボウと放火して騒がせている。トランス抹消の目論見は、そういう大きな青写真の中で考えなければならない──私のこの「突飛な」「突拍子もない」分析が、トランプ嫌いの癇癪持ちの妄想に過ぎない「陰謀論」であればよいのですが。

 


衆院予算委 田村委員長の質疑

2025年02月23日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2025年2月22日

 日本共産党の田村智子委員長が21日の衆院予算委員会で石破茂首相に対して行った質疑でのやりとりは次の通りです。

課税最低限引き上げだけでは何千万人に恩恵がない

 田村委員長 日本共産党の田村智子です。税制改正についてお聞きいたします。この間、所得税の課税最低限を現行の103万円から引き上げるということが、予算案の焦点であるかのように扱われています。最低限の生活費には税金をかけないという生活費非課税の原則から(課税最低限)引き上げは当然ですが、それだけでは、年収103万円に届かない最も苦しい状況にある皆さんには恩恵がない、取り残されてしまう。住民税非課税世帯は約1500万世帯です。それ以外の所得税非課税の人は900万人規模になります。総理、この何千万人もの人たちには恩恵がなく、置き去りにされる。このことをお認めになりますか。

 加藤勝信財務相 当面の対応として、特に物価高の影響を受ける低所得者世帯向けの給付金、また地域の実情に応じた物価高対策を後押しをする重点支援地方交付金など重点的な対応も講じています。

 田村 事実上、給付金しかない。今年度の補正予算で1回だけのもの。議論されているのは、来年度からの恒久的減税ですからね。そこに対しての施策は何もない。置き去りにするってことですね。

 石破茂首相 置き去りになんかしません。だから給付金がきちんと支給されるように、そしてまた最低賃金が上がるようにということで今回いろいろな提案をこの予算の中でさせていただいている。

中間所得層も含め 消費税の負担が最も重い

 田村 恒久的な制度はないんです。それだけではありません。今日一番議論したいのは、中間所得層も含めて最も重い税金は何かということです。ご覧ください。(パネル①)

 総務省の家計調査に基づいて、勤労者世帯の年収別税負担率をあらわしました。年収200万円以下では、所得税の負担率0・6%、消費税は10倍以上の6・3%になります。そして年収201万~300万円で所得税1・2%、消費税は4・6倍の5・5%。701万~800万円で見ても、所得税2・3%、消費税は1・7倍の3・9%。結局、年収1000万円を超えてやっと所得税の負担率が消費税を上回ります。そうすると中間所得層も含めて、消費税の負担が最も重いということになりますよね。

 首相 それはご負担の面から見ればそういう議論もあります。ただ給付という観点から見た場合、それは所得の再分配という面もあります。年金生活者支援給付金等々、消費税の財源が充当される社会保障給付など給付は、低所得者の方々ほど手厚くさせていただいている。そういう方々にこそ、きちんと消費税は使われるべきものであり、ご負担よりも多くの給付をさせていただくこともご理解いただきたい。

所得税減税だけでは負担減実感ない

 田村 今、私が聞いているのは税制の問題です。所得税と消費税の負担の割合について聞いています。例えば年収200万円世帯、所得税は年1万2000円程度、消費税は12万6000円もの負担になるわけです。今、所得の低いところには社会保障の給付がって言ったけれども、この低所得の人ほど社会保障、医療・介護の負担、本当に重いです。給付が充実しているなんて誰も感じてないですよ。もう一度聞きます。所得税と消費税では圧倒的に消費税の負担が重い。お認めになりますね。

 財務相 (田村氏が示した)消費税の中には地方消費税も入っています。今お話があった低所得者の方には、年金生活者支援給付金は、住民税非課税世帯で前年の年金収入等が約89万以下の年金生活者に原則として月額5300円を支給する。こういったものも消費税を財源として行っています。

 田村 払っている側にしたら、地方消費税も消費税なんです。消費税の負担が重い。消費税を不問にして、所得税の減税だけの議論で、本当に負担の軽減になるのか。政府案では、年収300万円の人で年間5000円の減税にしかなりません。1カ月にしたら420円にもならない。さらなる見直し案が報道されていますが、その見直し案でも年間1万円、1カ月にしたら、830円程度の減税にしかならない。消費税に指1本触れないで、税負担が減ったと実感できるでしょうか。

 財務相 今回の103万円に関する政府からの提案は、所得税の基礎控除の額等が低額であることから、物価が上昇すると実質的な税負担が増える。こういう課題に対応するため、それぞれの控除額を10万円ずつ引き上げるということです。この引き上げ幅は、消費者物価指数が最後の基礎控除の引き上げから直近までの消費者物価の動向等も踏まえたものであり、生活必需品を多く含む基礎的支出項目の消費者物価が20%程度上昇していることを勘案すれば、生活実感も踏まえた調整となっているということが言えると思います。

物価高騰は消費税に反映

 田村 物価高騰への対応と言いましたが、物価高騰はそのまま消費税に反映するんですよ、一番は。総理うなずいておられる。お米が高い。そこにかかる消費税も重くなる。食料品の値上げは止まりません。今でも重い負担の部分がもっともっと重くなっていくということになる。生活を守るための税制をどうするのかということの議論がなされるべきなのに、所得税の課税最低限の引き上げだけに議論がフォーカスされている、これでいいのかと大きな疑問を抱かざるを得ない。一番重いのが消費税なんですから、いかがですか。

 首相 それは物価が上がれば消費税というものもそれに連れてご負担が増えるということはそれはことの当然なのであって、それについて同意をしたというのは当たり前のことでございます。複数税率というものを何のために設けたかと言えば、そういうご負担を減らすために設けておるものでございますし、併せまして、いかにして低所得の方々の給付を増やすかということで今度の予算も編成をさせていただいております。ご負担を上回る給付というものをやっていかなければ、低所得者の方々に対する支援にはなりません。そういうことによく配慮して、今回の予算を組ませていただいております。ぜひともご賛同賜りますようお願い申し上げます。

年収800万円以下では税の累進性がない

 田村 今、消費税の負担が重い、しかも物価高騰がなされれば、ますます重くなることを総理も認めた。もう一つ問題を指摘したい。このパネル?では、所得税・住民税の負担割合は年収に応じて累進性がはっきりと認められます。しかし、消費税を含めた税全体の負担率を見ると、年収200万円以下、また201万円から300万円の世帯で10・8%、年収700万円のところでも10・8%、800万円でも10・9%。税負担の累進性が全くなくなっている。1000万近くになるところまでほぼ累進性がないんですよ。総理の認識をうかがいたい。

 首相 消費税の持つ再分配機能にもぜひご注目をいただきたいと思っております。それは累進性というものがなかなか効きにくいというそういう性質は持っております。それはむしろ直接税です。所得税等々の累進課税ということで発現される効果です。むしろそれでいただいた税で再分配機能を発揮して、所得の低い方々に多く給付をすると。本来、社会保障というのはそういうものだと私は認識をいたしております。

 田村 税の累進性というのは大変重要な問題ですよ。それは、負担能力に応じた税負担を実現するというものです。それは憲法25条、生存権を税制の面から保障する、そのための原則ですよ、税の累進性というのは。ところがね、消費税の逆進性があまりにも強くて、税負担の累進性が失われている。これは全く問題がないと言われるのですか。

 財務相 そこは所属再配分どうやるかという話だと思います。消費税そのものは逆進性がありますが、軽減税率を入れていること、またそうしたことを財源として、生活の厳しい方等に対する福祉的な支出もしている。全体を見て判断すべきだと考えます。

低所得者ほど負担は重い 逆進性が公平性を損なう

 田村 税制のあり方として答弁できない。累進性がこんなに奪われている。社会保障というが、医療も介護も年金も国民の負担は重くなるばかりです。低所得の人ほど負担は本当に重くなっている。これまで示したように、消費税の負担が税の負担としては最も重い。しかも、その逆進性が、税負担の公平性を著しく損なっている。累進性を失わせている。消費税の減税こそ、議論すべきではないか。

 首相 急速に進む少子高齢化社会に対応するための財源として所得税や法人税といった基幹3税は貴重な財源ですが、景気の動向によって振れ幅があまりに大きすぎる。安定的な財源という意味で、消費税の重要性は、減ずることはないと思っています。給付の面において、いかに低所得の方に厚くするかということに極めて強く配慮したのが、今回の予算です。

 田村 低所得者の方への配慮なんか本当にないですよ。高額療養費の引き上げまでやろうとしているじゃないですか。社会保障を言い訳にするのはやめるべきです。

 2022年に総理は著書で、消費税を導入した当時は所得水準に今のような格差がなかったというふうに指摘をして、次のように述べています。「現在の経済格差を前提とした時、当時(消費税導入時)のままの考え方でいいのだろうか、という疑問が生じるようになりました。格差が大きいと、消費税はその逆進性が顕在化します。結果として、低所得者に厳しい制度になってしまってはいないかという疑問が生じるのです。消費税についての議論をタブー視してはいけないだろう」と。その通りです。タブー視しないで議論すべきではないですか。

 首相 消費税を導入したときからこの議論はあります。これが10%になりました。格差が、かつてに比べれば、つまり導入した平成元年(消費税率3%)に比べれば広がったこともまた事実です。どのようにして所得の格差を縮めていくか、まず議論をしていかねばならない。だからこそ物価上昇を上回る賃上げ、コストカット型経済からの脱却ということを申し上げている。消費税の問題点をいかにして越えていくかというときに、まず大切なことは、所得を拡大する。格差を是正する全部の労働者の4割の非正規が、正規労働者の6割の所得しか得られていない。こういう状況を打破するということで、私どもとしては政策を集中しているところです。

超富裕層への応能負担徹底で消費税5%減税は可能

 田村 第2次安倍政権で消費税は2度にわたって増税されて、同時に法人税率が引き下げられたんですよ。2023年度だけで、大企業向けの減税優遇は11兆円にもなるわけです(パネル)。
ここにメスを入れて、超富裕層への応能負担を徹底すれば、消費税5%減税は十分にできるわけです。

 総理は昨年夏に出版した著作でも、こう言っています。「法人税減税にめぼしい意義は見いだせず、もしも経済的格差の拡大を是正する方向性を考えるのであれば、消費税の逆進性をどう軽減するかを議論すべきではないでしょうか」。その通りです。消費税減税に指一本触れてはならない、社会保障を持ち出して議論することさえ封じる、それはおかしい。今こそ議論すべきではないですか。

 首相 大切なのは、応能負担をもっときちんと考えようということであり、その応能負担のあり方は、法人税でも所得税でもそうです。消費税の場合に、なかなかその概念が入り込む余地が少ないが、そうであるだけに直接税において応能負担の役割というのはさらに議論が必要だと思っています。

 田村 (パネルは)私たちが初めて出した資料なんです。この逆進性。累進性が全くなくなっている。私たちは、徹底的に計算して出したんですよ。これだけ逆進性が強く、応能負担を崩しているのは消費税です。(消費税減税の)議論こそやるべきだと強く申し上げまして、質問を終わります。


さすがですね。
低所得者がせっせと税金払って、自分のための「給付金」作ってるようなもんですものね。


「非正規制度つくった人たちを一生恨む」 図書館職員たちから悲痛な声、関係団体が待遇改善を要求

2025年02月20日 | 社会・経済

弁護士ドットコム 2025年02月20日

    地方公共団体が設置する「公共図書館」の職員の4割以上、学校図書館の職員の9割近くが、1年ごとに契約される「会計年度任用職員」として働く中、図書館職員の安定した雇用や待遇改善を求める院内集会が2月19日、東京・永田町の衆議院第1議員会館で開かれた。

    集会を開いたのは、図書館問題研究会や公務非正規女性全国ネットワークなど、この問題に取り組んできた6団体で構成する実行委員会で、日本図書館協会(日図協)も協力した。図書館関係者だけでなく、与野党の国会議員や関係省庁の担当者らも参加した。

    集会では、文科省が推進している「1校につき学校司書1人」の裏で、1人の職員が複数の学校を掛け持ちしている過酷な実態が明らかになった。

    また、会計年度任用職員に対する調査では、低賃金や待遇の低さが浮き彫りとなり、中には「非正規雇用や会計年度任用職員なんて制度をつくった人たちを一生恨んでも恨みきれない」といった声もあったという。

「ボーナス支給されたら時給下げられた」

    この集会に先立ち、実行委員会は1月、総務大臣と文部科学大臣に対し、会計年度任用職員の継続雇用を求める要望書を提出している。

    要望書では、「全国3300館以上ある公共図書館は市民の生活になくてはならないもの」であり、特に学校図書館は「児童生徒の成長に不可欠」であるとして、そこで働く人たちの不安定雇用の改善を求めている。

    集会では、日図協の非正規雇用職員に関する委員会の高橋恵美子さんから、2023年におこなった学校図書館職員を対象とした実態調査の報告があった。報告によると、会計年度任用職員は、フルタイムで働いても月収の平均が17万3000円ほどで、正規職員の月収31万9000円と大きな差があったという。

この調査では、次のような声も寄せられた。

「底辺の悲しさは体験している人しかわからないと思う。20年近く働いているがよくなったことはひとつもない」

「今年度から賞与0.5か月分が年2回、支給されることになったが、時給は100円下げられた。年収としては変わらない。馬鹿にされている気持ちになりました」

「嫌ならやめれば」と言われてしまう図書館職員

    集会の最後には、不安定雇用の女性専門職について研究している大阪信愛学院大学の廣森直子准教授が登壇し、「我慢するか、やめるしか選択肢がない」という図書館職員の実態について語った。

    廣森准教授は、図書館職員が待遇の悪さをうったえると「嫌ならやめればと言われてしまう」と説明。「その中で、自分が我慢するか、やめるしか選択肢がないという状況になってしまっている。なぜ職場や労働条件をよくする選択肢を私たちは奪われてしまっているのか、考えていかなければならないと思います」と指摘した。

    そのうえで「専門職としての業務をできる勤務時間」「働き続けるための生活保障(賃金)」「職場で専門職を育てる仕組みや研修」「経験や能力が評価され賃金にも反映されるしくみ(昇給)」などが必要だとして、問題の解決をうったえた。


「非正規雇用」、諸悪の根源だ。

天氣の良い朝です。
氷点下15どくらいです。
今年はまだー20℃を超えていません。

 

 

 

 


古賀茂明 石破首相は「ジャパン・ファースト」の自主独立外交を目指すべき 米国と中国には日本の“地政学的特徴”が大きな武器に

2025年02月18日 | 社会・経済

 AERAdot 2025/02/18

 石破茂首相がトランプ米大統領との首脳会談を「無事」切り抜けた。

「石破首相がトランプ大統領に気に入られるのは無理」「石破話法はトランプ氏が最も嫌うタイプだ」「トランプ大統領の無理難題にどう対応するのか」などとマスコミは書き立て、「安倍晋三元首相ならうまくやれたはずだが、石破では全く期待できない」「首脳会談に失敗すれば石破政権の終焉に近づく」と自民党内の右翼層は石破首相の失敗を待ち望んだ。

 仮に、会談でトランプ大統領から過激な追加関税などで脅され株価暴落などという事態になれば、「待ってました!」とばかりに、「やっぱりダメだった」「恐れていたことが起きた」と批判の嵐になっていただろう。

 では、実際はどうだったのか。

 彼らが期待したことは何も起こらなかった。

 それどころか、トランプ大統領が石破首相を持ち上げる場面が見られるなど、むしろ、石破首相は、当初の予想を大きく裏切り、トランプ大統領との間で、信頼関係を築く第一歩を踏み出すことに成功したようにさえ見えた。

 何から何まで「予想外」の出来だ。

 今や、「なぜ、石破首相はこんなにうまくトランプ大統領に取り入ることができたのか」「実は、こんな裏話が……」などと面白おかしく報じられている。

 しかし、今回の結果は、むしろ予想どおりだったというのが私の見方だ。

 ただし、「石破首相が素晴らしくうまくやった」という意味ではない。

 そもそも、今回の首脳会談の最大の目的は、表向きには「トランプ氏と信頼関係を築く」ことだとされたが、ほとんどの人は、本音ではそんなことは無理だと思っていた。「トランプ氏と決裂しない」「無理難題をふっかけられても、今後の交渉の余地を残す」というところでとどまれば十分だと考えていた。

 もちろん、それだけの結果であれば、国内で評価されることはなかっただろうが、公平に見ても、その程度の結果であれば、カナダやメキシコなどが直面している状況やEUが確実に陥ると予想される苦境と比較しても、決して悪い結果ではないはずだ。

 マスコミなどが特に強調する成果としては、日米同盟の強化について両首脳が一致できたこと、尖閣諸島が安保条約の対象であると再確認できたこと、台湾問題について「力による現状変更」を認めないことや北朝鮮の非核化目標を維持し、拉致問題解決への協力の約束を取り付けたことなど、安保政策についての評価が多い。ただし、そのほとんどは、従来の日米同盟関係を再確認しただけのものだ。日本側が防衛力強化やGDP比2%を達成する予定の2027年度以降もさらに防衛費を拡大すると約束したことが批判されているが、これは、もともと石破首相自身が示唆していた内容であって、米側に何か押し込まれたということではない。

トランプ大統領が融和的姿勢を見せた理由

 追加関税についても日本を狙い撃ちにした具体的な引き上げ提案がなかったことで、「とりあえずはよかった」という評価が大勢だが、今後どんな脅しが投げかけられるかは未知数のままだから、評価できるかどうかは定まらない。

 要するに、すべてが既定路線の延長線でしかなく、今後何が起きるかは全く予想できないということだ。だが、逆に言えば、既定路線が全てぶち壊しになることがなかったという意味で、正気とは思えない政策を連発するトランプ大統領との会談の結果としては、「成功」だったと言えるのだ。

 なぜ日本の首相がトランプ大統領のご機嫌を取ることが、そんなに重要なことだと多くの人が考えるのだろう。それは、政府自民党が唱える日本の「危機的状況」説が生み出した考え方だ。

 北朝鮮、ロシアが事実上の軍事同盟を結び、中国もロシアとの関係を強化して東シナ海、南シナ海での活動も活発化しているように見える。台湾有事は2027年までに起きると予想され、沖縄攻撃は避けられない、その次は日本本土だと彼らは騒ぎ立てる。

 これだけ聞かされると、日本は地政学的に難しい立ち位置に置かれ、「危機的状況」にあるという政府自民党の主張は正しいように見える。

 そのため、「米国に日本の安全を守ってもらうことがこれまで以上に重要になる」と言われれば、「確かにそのとおりだ」となり、「だから日米同盟が日本の生命線だ」となって、「したがって、米国の機嫌を損ねることは絶対に避けなければならない」という結論が自明なことのように思えてくる。

 この理屈で、自民党政権により、集団的自衛権の行使を認めて敵基地攻撃能力を持つためのミサイル開発を始め、防衛費をGDP比1%程度から同2%程度に拡大する道が正当化された。

 その延長線で今回の日米首脳会談をとらえれば、いかにトランプ大統領のご機嫌を損ねず、米国が日本を守ると言ってもらうのかが最大のテーマだということになる。

 そして、石破首相は、なんとかその目標を達成したと、みんなで安堵しているわけだ。

 これだけを見ていると、石破首相は引き続き対米依存一択の外交安全保障政策をとっているように見える。

 しかし、少し視野を広げると、それとは全く違った絵が見えてくる。

 今回、トランプ大統領が日本に攻撃を仕掛けず、少なくとも表面的には融和的姿勢を見せたのはなぜだろうか。特に何かを求めるのでなければ、石破首相と会う必要はなかった。それなのに、わざわざ会って、石破氏を持ち上げるような演技をしたのは、日本の地政学的な重要性を考えてのことだったと見るべきだ。それはトランプ大統領の考え方というよりも、外交安保を担うスタッフたちの考え方を反映したものかもしれない。

米側から見ると石破首相は「今までとは違う」

 1月21日配信の本コラム「石破首相の持論『米国からの自立』を進めるチャンス トランプ氏の“横暴”をかばわず『米国の本性』を知らしめろ」に、私は、「トランプ登場により、世界での米国への信頼は地に堕ちた。……グローバルサウスは、米国寄りからむしろ中国に軸足をずらしつつある。こうしたことは、米国の外交・軍事関係者も認識しているはずだ。トランプ氏のやりたい放題にしていては、米国は、経済だけでなく、外交でも安全保障でも世界での地位を大きく落とし、それがまた米国経済に跳ね返るという悪循環に陥ることを最も懸念するはずだ」と書いた。

 トランプ大統領の政策は、米国を世界から孤立させる方向に進んでいる。アジア諸国では、元々、米中いずれにも与しない外交安全保障政策をとる国がほとんどだが、トランプ大統領の登場で、少なくとも従来よりも米国寄りになる国はないだろう。それとは逆に、米国から離れていく遠心力が強まることは確実だ。

 米側から見ると、石破首相は、明らかにこれまでの自民党の首相とは違う。

 就任早々中国の李強首相、習近平国家主席と立て続けに会談し、それを受けて、中国がビザなし渡航を日数延長の上で再開し、日本が富裕層向け10年間の数次ビザを新設するなど両国の交流が活発化している。中国側からは、石破首相の早期訪中の招請があり、石破首相もこれに応じる姿勢だ。その先には習主席の訪日も視野に入っている。さらに中国側が日本産水産物の輸入解禁に向けたステップを踏み出した。中国軍関係者が訪日し、与党議員の訪中も実現した。

 自民党内右派の批判にもかかわらず、日中関係の改善は驚くほどのスピードで進んでいる。

 石破首相は、ASEAN諸国との連携を強める動きも見せている。

 ASEANのように、米国一辺倒ではなく中国との間でバランスをとる外交姿勢に切り替えようとしているようにも見える。

 米側から見ると、これらは極めて危険な兆候である。

 意外かもしれないが、こうしたことを背景に、実は、日本の世論もまた大きな役割を果たしている。

 日本の世論はトランプ大統領に対して非常に批判的だ。

 今や「トランプ大統領は世界中で最も異常な独裁者の一人だ」という見方が日本国内でも広がっている。そのトランプ大統領が関税などで脅しをかければ、日本の世論はさらに反トランプに傾く可能性が高い。

中国も石破首相を繋ぎ留めようと必死

 日本の世論が反トランプ色を強めれば、石破首相はより強気になって、持論である対米自立路線に走る恐れがある。その場合、石破首相を失脚させる戦略もあり得るが、世論が反トランプなら、選ばれる新政権も反トランプになる。石破政権より反米的性格を持った政権交代になる可能性すらあるので、こうした戦略は得策ではない。日本の世論が米国を牽制しているのだ。

 こうした図式を大きな目で見れば、日米関係は大きな転換点にあるということがわかる。「日本は米国の言いなりになる」と米側に見切られていた岸田文雄政権までの自民党の首相には、米国追従という選択肢しか考えられなかったのに対して、石破首相は自ら切り拓いた中国との関係改善というカードを見せながら、米中の間でバランスをとりつつ、「ジャパン・ファースト」の自主独立外交路線に少しずつ舵を切ることが可能になったということなのだ。

 もちろん、「バランス外交」と言えば聞こえは良いが、一つ間違えば「コウモリ外交」として両国からの信頼を失う可能性もある。

 現に、今回の日米共同声明に関して、中国政府は、日本の在中国公使を呼び出して厳重な抗議を行った。

 だが、大使ではなく公使というところに、中国側の「配慮」が見て取れる。中国としては、日本に対して極めて融和的政策を打ち出したばかりなのに、石破首相が思いの外トランプ大統領と近づく姿勢を見せていることに対して、「メンツを潰された」と感じたかもしれない。

 しかし、だからと言って石破首相を「裏切り者」と切って捨てることはせず、穏当な方法で抗議することで、日中関係改善の流れを変えたくないという意思を表明したように見える。

 中国もまた石破首相を繋ぎ留めようと必死なのだ。

 米中という超大国から見て非常に重要な地政学的位置にある日本は、実は有利な立場にあるということを認識すべきだ。この地政学的な「利点」を活かして、真の自主独立外交への転換を一歩ずつ着実に進めてもらいたい。


先日の続きで、納屋の屋根雪降ろし。
汗が出ないようにと少しづつ、でもやっぱり暑い。


労働組合―労働者を守る砦

2025年02月12日 | 社会・経済

フジ問題で民放労連アピール

「女性役員3割に」署名も

「しんぶん赤旗」2025年2月7日

  元タレントの中居正広氏の性加害疑惑をめぐって、日本放送労働組合連合会(民放労連)はこのほど開いた臨時大会で、「単にフジテレビだけにとどまる話ではなく、放送業界全体が直面している深刻な課題である。放送業界で働く人々の権利とメディアの倫理が厳しく問われる出来事となった」とするアピールを採択しました。

  アピールでは、「この問題を単なるスキャンダルとして捉えるのではなく、労働者が安心して働ける職場環境を作るための契機とし、信頼されるメディアを目指すために透明性と公平性を求める声を上げ、業界全体の改善に取り組む」と強調しました。

 また、民放労連とMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)は、「今しかない! メディアは“オールドボーイズクラブ”からの脱却を! はじめの一歩として女性役員を3割にすることを求めます」とのネット署名を開始しました。

  これは、フジの問題が、「業界全体の構造的な課題であり、高齢男性が意思決定層を占める現実が多様な視点を排除し、問題を見過ごす要因」になっているとして女性管理職の比率増加を求めています。

 集まった署名は3月初旬に民放キー局、民放連に提出したいとしています。

 ⁂     ⁂     ⁂

職場のハラスメント根絶を

全労連がキャンペーン開始

「しんぶん赤旗」2025年2月6日

 職場のハラスメントが問題になる中、全労連は5日、あらゆるハラスメントと性差別の根絶をめざすキャンペーンのスタート集会を参院議員会館で開きました。仕事の世界のハラスメントを禁止する国際労働機関(ILO)190号条約の批准、男女賃金格差解消につながる女性活躍推進法の改正に向けた運動強化を提起しました。

 あいさつした髙木りつ副議長は、「表に出ている被害は氷山の一角だ。声に出せない仲間もいる。特に女性と性的マイノリティー、若い世代に苦しんでいる人が多い」としてハラスメントを許さない闘いの前進を訴えました。

 民放労連の岩崎貞明書記次長は、放送局で適切なハラスメント対策が取られていない実態を受け、テレビ各局に対応を求める談話を出したと紹介。女性の人権が軽視される背景に意思決定層に女性が少ない実態があるとして管理職比率の調査結果などを報告しました。

 群馬県医労連の古川真由美書記長は、「見て見ぬふりをしない」職場に向けた学習会や実態調査にふれ、「労働者を守り、声をあげられる仕組みを作っていく」と強調。全教の檀原毅也書記長は、「学校は差別や偏見を乗り越える力を育てる場となる可能性を持つ」として、教育にジェンダー平等を貫く取り組みを紹介しました。

 角田由紀子弁護士が講演し、ハラスメントの定義も罰則もない現行制度のもとで被害者救済などの「法的対応がおざなりになっている」と指摘し、国際水準の規制確立を訴えました。

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ハラスメント根絶へ

全労連がフジ労組連帯談話

「しんぶん赤旗」2025年2月6日

 全労連は4日、「フジテレビ労組及び民放労連の組合員と労働者を守り、ハラスメント根絶めざすたたかいに連帯する」との黒澤幸一事務局長の談話を発表しました。

 談話は全労連が民放労連委員長の談話「安心して働ける環境の実現をすべての放送局に求めます」の支持を確認したと紹介。フジテレビで働く全ての労働者の雇用と仕事を守るための支援、メディア界全体のハラスメントと暴力などの総点検と是正措置を求めています。

 フジテレビ労組組合員が急増していることに触れ、労組が強くなり、労使が対等に物を言えるようになることが、全ての労働者の力になると指摘。人権を大事にし、職場のあらゆるハラスメントと暴力を許さないたたかいに連帯すると表明しています。

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賃上げを勝ち取ろう

愛知 トヨタ総行動に600人

「しんぶん赤旗」2025年2月12日

 愛知県内各所で11日、大幅賃上げと下請け単価引き上げを求めて、第46回トヨタ総行動が行われました。トヨタ総行動実行委員会、全労連、愛労連、愛知国民春闘共闘委員会の呼びかけで、集会、宣伝などが取り組まれ、全体で延べ約600人が参加。「トヨタ・大企業は社会的責任を果たせ!」の声が響きました。

 トヨタなど大企業のオフィスが入る名古屋市中村区のミッドランドスクエアに近い西柳公園では、2025国民春闘勝利へ向けた決起集会が開かれました。

 全労連の秋山正臣議長は、「トヨタの内部留保が増える一方で、労働分配率の低下や下請け単価の抑制が続けられるなど、大企業の内部留保は労働者の犠牲の上に成り立っている。内部留保をこれ以上積み増すのではなく、国家多数の富のために活用するよう強く求める」と話しました。

 愛労連の西尾美沙子議長は、「物価高騰で実質賃金は下回り、エンゲル係数は過去最大。国民の生活は食べ物すらまともに買えない状況です。私たちの声が、『失われた30年』という経済停滞を変える力になる」と呼びかけました。

 参加者は、「大企業は539兆円もの内部留保をため込んでいる。もうけを経営陣や株主だけでなく労働者と取引先に分配させ、すべての労働者の物価高騰を上回る賃上げを勝ち取ろう」と集会アピールを採択。「団結がんばろう」と拳を晴天に突き上げ、会場周辺を練り歩きました。

 日本共産党の本村伸子衆院議員が参加しました。


底が抜けてしまった日本社会を取り戻すのは「労働組合」ではなかろうか!

さて、今日も1日雪が降り続いています。


「トランプ・フォーエバー」計画 

2025年02月08日 | 社会・経済

ICC制裁へ米大統領令

「無法な政策」と内外から非難

「しんぶん赤旗」2025年2月8日

 【ワシントン=洞口昇幸】トランプ米大統領は6日、イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)当局者への経済制裁や渡航制限を可能にする大統領令に署名しました。米国内外から「無法な“イスラエル第一”の政策だ」(米・イスラム関係評議会)と強い非難の声が上がっています。

 ICCは昨年11月、パレスチナ自治区ガザを軍事侵攻するイスラエルのネタニヤフ首相らに、戦争犯罪や人道に対する犯罪の容疑で逮捕状を発行。イスラエルや米国はICCに未加盟ですが、日本を含む約120の加盟国はネタニヤフ氏が渡航した場合には拘束する義務が生じています。

 ホワイトハウスの6日の発表によると、同逮捕状についてトランプ政権は「米国と同盟国の重要な安全保障や外交の活動を損なう」と主張。捜査に関わったICC当局者やその家族らを、米国内の資産凍結や米国への入国停止といった制裁の対象にしました。

 米・イスラム関係評議会は声明で、「ICCへの横暴は、ガザでのイスラエルの戦争犯罪の説明責任を求める人々を威嚇する策だ」と指摘。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、国際社会が長年苦労して築いてきた国際的規則を「破壊する残忍な第一歩だ」と批判しました。

 国連事務総長のハク副報道官は6日、「われわれはICCの仕事を支援する必要性を非常に鮮明に主張してきた。ICCは国際司法制度において必要不可欠な柱だ」と述べました。

 米国の同盟国で、ICC本部が置かれているオランダのフェルドカンプ外相は6日、X(旧ツイッター)で遺憾の意を表明。「ICCの仕事は不処罰との闘いで不可欠だ」と批判しました。

⁂     ⁂     ⁂

“2025以降”米国の行方 「トランプ・フォーエバー」計画 「君主制」を目指す“新右翼”(1/28)#ポリタスTV(約1時間弱)


恐ろしい社会が到来しつつある。
「制裁」ではなく「平和」を求めて来た日本国民の心情からも大きな隔たりを感じる。
日本の独立した方向性を確立しよう。

今朝の冷え込みもさほどではありませんでした。
-14℃。


北原みのり おんなの話はありがたい  有名人が、大企業がなぜ「性欲」でつまずくのか #MeToo後に語られるべきは男性の「性」

2025年02月07日 | 社会・経済

AERAdot 2025/02/07/ 16:00

中居正広さんにまつわる週刊誌報道から始まった#MeTooが日本社会を揺るがしている

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、中居正広さんの週刊誌報道からはじまった、日本の#MeTooのその先について。

*   *  *

 #MeTooが止まらない。先週末は「#私が退職した本当の理由」というハッシュタグがトレンド入りしていた。希望をもって入社した会社で、どのような目にあったか。女というだけで、どのような屈辱を受けてきたのか。女性たちが溢れるように語り出しているのだ。

 もちろん背景には、フジテレビを巡る一連の報道がある。中居正広さんに関する週刊誌報道から、日本社会を揺るがすまでに発展した#MeTooが日本の根本を揺さぶっている。

 被害は詳細に語られる。入社直後、「今年の新人の顔はどう?」とニヤニヤと取引先の男性が聞いてくる。それに困ったように答える先輩たちがいる。難しい取引先に若く綺麗な女性が同行することになっている。職場の男性たちが連れ添って風俗に行き、その話がオープンに語られる。日本を代表する大手企業の名前と共に語られる被害は、あまりにも簡単に想像でき、とても簡単に理解できる。そのくらいに、私たちの絶望は似ていて、「わかるよ、私もそれ、味わってきたよ」と女性たちは息を吐くのだ。

 それにしても、ここまで大きな話になるなんて、誰が思っていただろうか。先日、海外メディアから「日本で何が起きているのか?」と驚いた調子でコメントを求められた。有名人の週刊誌報道ではなく、その後に起きた社会の反応に、である。今回は、スポンサーが一斉にフジテレビから離れた。コンプライアンス違反を理由にして生島ヒロシさんがすべての番組を降り、芸能活動を無期限で自粛するなど、影響が広がっている。5年前だったら、ここまで急激にことが進んだだろうか? 日本社会が性に関して急激にカーブを切ろうとしているのだ。振り落とされる人は、きっとものすごい数いるだろう。

 フジテレビの記者会見を観た。さすがに10時間は無理だったが、横になりながらスマホで聴いていた。率直に言えば、時間が長いだけで中身の薄い記者会見であった。記者会見後、むしろ、フジテレビに同情の声が大きくなったのは世情のリアルというものであろう。

 私は同情はしなかったが、テレビ業界の人の体力に驚いた。登壇した役員一同高齢男性だが、あの人たちはフツーのおじいさんじゃない。「24時間戦えますか」の昭和を駆け抜け、激しい人事戦争を勝ち抜き、男組織で生き抜いた高齢男性の体力は私よりも多分ある。無理だよフツーに10時間なんて。

 記者会見後に、実感する。今の日本で吹き荒れる#MeTooが明らかにしたのは、女を排除し、女を利用し、男で連帯し、男が競い合うことで発展してきた組織が結局何につまずくのか、ということだ。男たちは、最終的に自らの足に絡まってつまずいた。今までと同じ歩き方をしていたのに、女を前に、激しく転倒した。もしかしたら、男の人たちとは、そのことをいやというほど知っているからこそ、女を警戒し排除するのかもしれないと思うほどに、今回、男たちが激しく転ぶのを目撃した思いである。

 日本が#MeTooで揺れている。そして男たちは男たちの性欲で転がり続けている。

 いったい、性欲とは何なのだ。

 なぜ、あれほど地位も名誉も人気もあった人が、そんなことでつまずくのだろう。

 なぜ、あれほどの大組織が、こんなことで転ぶのだろう。

「性欲と性加害を結びつけるべきではない」とは、良識的なフェミニストが言ってきたことだ。性加害とは、性欲ではなく、支配欲によるものなのであると。では、なぜ「支配欲」は「性」と結びつくのか。ある種の男たちが女という性に、自分の男根と人生をかけて暴力を振るう、侮辱する、攻撃するのはなぜなのか。なぜ、性は、これほどまでに利用されるのか。

 専門家によれば、性欲は定義されていないのだそうだ。私も性について関わり続けているが、性欲は心理学の専門分野であるが、性欲研究はほとんどされていないことを知ったのはつい最近のことである。

 3000人以上の性犯罪加害者と関わり、性依存問題に向き合い続けている精神保健福祉士の斉藤章佳氏による『セックス依存症』(幻冬舎新書)には、AV男優の森林原人氏との対談が収められている。

 そこで森林氏が性欲には「支配関係欲」があると語っていた。率直な当事者の声として腑に落ちた。男性が性でつまずき、性で女たちがこれほど苦しむ理由が見えてくるように思ったからだ。問題はそういった男性の性欲が、男性自身が求め肯定する「男性らしさ」と強く結びついていることである。

 少し前に取引先の人(男性50代)から聞いたことだが、某雑貨店で一番売れているのは精力剤ということであった。風俗に行く前に、精力剤を求める客が少なくないのだそうだ(しかも男どうしで連れ合って)。1000%意味がわからなかった。風俗に行くのはそもそも精力があるから、ではないのか。なぜそれをさらに「補おう」とするのか!?!?!?!? 理解不能である。私の理解があまりにも追いつかなかったので、取引先の人が教えてくれた。精力=男らしさなのだ、と。男性が怖いのは、女に嫌われることではなく、「性欲が薄れること」なのだ、と。それはつまり、男じゃなくなることなのだ、と。

 たとえば、薄毛治療薬は男性ホルモンの生成を抑制するので抜け毛を減らすが、性欲が減退する可能性があるとされる。薄毛を選ぶか性欲を減退させるか男の人は深く葛藤し究極の選択をするのだ……と(ちなみに性欲が薄くなっても勃起しなくなるわけではないという)。

 私は女性モノの仕事をしてきて、男性の性欲については全く考えたことはなかった。でも、「一部の男性の特殊な事件」と言い切ってしまうには、あまりにもこの社会で女性たちは性被害にあっている。日常的にセクハラにあっている。それは仕事を続けられないほどの強度で。そして、女性たちは案外自分の性に向き合い語ろうと努めているのだが、男性たちは「自分の性の語り方」すら、もしかしたら知らないのではないかと思われる。

 男らしさ=性欲の強さ、というような男性観、性欲観がもたらす弊害に、日本社会が揺れている今こそ、男性の性について語っていくのが必要なのかもしれない。男性の性について語る。それが、女の#MeTooの後に求められていることなのではないか。


今日の予報は曇りですが晴れました。
これから明朝にかけ晴れるので氣温はひょっとすると今季一番の冷え込みになるかもしれません。

youtubeを観ていると氣になるドキュメントが紹介されていましたので、参考までに紹介しておきます。

【小学校~それは小さな社会~】
【海外の反応】世界が泣いた!米アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画ノミネート、日本の小学校を舞台に少女の成長を描く感動作|日本の教育システムに賛辞と異論も


期限切れのマイナンバーカード「更新しないとどうなる?」荻原博子さんが解説

2025年02月02日 | 社会・経済

女性自身 2025/01/31

マイナンバーカードに有効期限があることをご存じでしょうか。実は、2025年には約1千500万枚もの有効期限切れが発生します。

マイナンバーカードには2つの有効期限があります。1つはカード自体の有効期限で10年と、もう1つは本人証明として使われる電子証明書の5年です。

思い起こすと、政府はマイナンバーカードの普及を促進するため、2020年9月から5千円相当のポイントを付与するマイナポイントキャンペーンを行いました。このときマイナンバーカードを取得した方が、2025年に電子証明書の期限切れを迎えます。

データ解析会社、Liquidの調査によると、マイナンバーカードに2つの有効期限があることを知っている人は全体の48.6%といいます(2024年12月実施)。

半数以上が知らないようですが、有効期限が近づくと、自治体から「お知らせ」が届きます。ただ、更新にはポイント付与などもないので、手続きをしない方もいるでしょう。

更新せずに有効期限が切れて放っておくと、マイナ保険証が使えなくなります。2024年12月2日以降は従来の紙の保険証の新規発行が停止されたため、マイナ保険証がないと病院を受診できなくなると心配する方も多く、有効期限問題がさらに不安をあおる状況です。

■更新手続きをしなくても資格確認書が送られてくる

しかし、結論としては、何の問題もありません。ご安心ください。

なぜかというと、まず、今マイナ保険証を持たない会社員は、手元にある保険証が2025年12月1日まで使えます。また、保険証の有効期限が切れる前に「資格確認書」が自動的に送られてきます。

資格確認書は、保険証とは名前が違いますが見た目はそっくりで、使い方や機能は同じです。病院で月1回提示すれば、今までどおり保険診療が受けられます。

次に、マイナ保険証がない国民健康保険の方も、手元の保険証が有効期限まで使え、有効期限の前に資格確認書が送られてきます。

どちらも利用者からの申告は不要、待っていれば届きます。

すでにマイナ保険証を持っている方は、有効期限のお知らせが届いたら更新手続きをすると、そのままマイナ保険証が使えます。

更新手続きをしなかった場合でも、有効期限切れから3カ月後の月末まではマイナ保険証が使えます。そしてその3カ月の間に資格確認書が届くことになっています。

デジタル庁のトップが交代したためか、利用者は何もしなくても時期が来たら資格確認書が届く、安心なシステムに落ち着きました。

ですが、資格確認書で受診できるようにするなら、病院に顔認証付きカードリーダーの設置を急がせる必要はなかったのではないでしょうか。デジタル化を機に廃業した医師も多く、病院関係者は経済的にも労力としても多大な損害を被ったと思います。

政府の拙速なデジタル化推進を猛省していただきたいと思います。


今日は曇り時々弱い雪。
それでも日中はプラス氣温になりアスファルトが見え、水が流れています。


介護崩壊の実態迫る

2025年01月31日 | 社会・経済

いま「赤旗」を 注目の紙面

「しんぶん赤旗」2025年1月31日

 「訪問介護“空白”加速」(1月10日付)と報じた本紙記事が衝撃を広げています。自公政権が昨年4月に訪問介護の基本報酬を引き下げて以降、昨年下半期の半年間で、訪問介護事業所がない自治体が10町村増え107自治体になったことをスクープした記事です。

 日本共産党青森県東青地区委員長のさいとうみおさんは、「今日はこの新聞を持って市内の事業所をいくつか回りました。『残念だけど、わが社、訪問介護やめました。あんたらの言う通りだよ』」とSNSに投稿し、59万件の閲覧がありました。

 編集局には社会保障の運動団体やメディアから情報提供の要請が相次いでいます。

 訪問介護事業所ゼロの自治体数の集計には、厚生労働省が年2回公表するデジタルデータを活用しています。どのメディアも入手可能ですが「赤旗」は、介護崩壊の“証拠”を明らかにできると重視し、分析してきました。「しんぶん赤旗」日曜版2024年8月11・18日合併号では、昨年6月末時点の状況を特集しました。今回は新しいデータが公表された翌日に分析を終え、結果を報じました。

 「しんぶん赤旗」は、政府が昨年1月に、訪問介護報酬引き下げを打ち出すと即座に問題点を指摘。実施後はそれが介護崩壊につながることを告発し、撤回を求めて報道を続けてきました。

 1月7日付では「報酬引き下げで危機 新潟・村上市 減収さかのぼって支援」と、報酬引き下げによる事業所の減収を独自に補助する新潟県村上市の取り組みを報じました。同記事は「赤旗」のHPで公開されると、数日で6300件近いアクセス数を記録しています。

 東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは、SNSで同記事を引用し、「これに追随するマスコミ報道がない」と投稿しました。上野さんは各種シンポジウムなどで介護保険問題にかかわる本紙記事を引用。「介護保険の改悪を一貫してブレずに追ってくれているのは『赤旗』さんぐらい」などとエールを送っています。

 

いま「赤旗」を 1928・2・1~創刊97周年

元外務省国際情報局長 孫崎享さん

2025年1月28日

民主主義支える言論

 自由主義、民主主義の土台は報道がしっかりしていることです。日本社会ではこの10年ほどの間に報道の自主性が大きく崩れてきました。安倍、菅政権は政権の意向に反する人たちに露骨な圧力を加え、個人が排除されるだけでなくメディア自体にも大変な圧力が来る。経営状況が苦しくなることも加わって、メディアは独立性を失い、ますます自民党の広報機関になってしまっています。

 そのもとで政治のあり方が非常にゆがんでいます。原発推進、基地問題をはじめ米国との軍事協力、格差社会の拡大など、大きな問題が存在していればいるほど、政権に都合の悪い報道をさせない圧力が強くなってきました。報道の役割が失われる状況です。

 その中で「赤旗」は、裏金問題をはじめ自主的な調査報道で政治のゆがみをあぶりだし、具体的成果をあげています。いつの時代にもまして「赤旗」の役割が大きくなっています。その「赤旗」が発行の苦境にあると聞きました。民主主義を支える自由な言論空間を維持するためにも「赤旗」をぜひ守っていただきたい。

 

いま「赤旗」を 1928・2・1~創刊97周年

東京大学大学院教授 本田由紀さん

2025年1月29日

重要なデータソース

 「赤旗」のすごさは独自の取材力と問題を暴き出す鋭い視点にあります。日本になくてはならない強力なメディアです。

 「裏金」問題に象徴されるそのすごい取材力は、「赤旗」発で日本の政治全体を揺るがすような告発をしています。

 X(旧ツイッター)を見ると、「赤旗」の重要でインパクトのある記事に多く出合います。現在進行中の東京都議会の自民党会派の「都議会自民党」がパーティー券収入の“中抜き”を指示していたと党都議団が暴露した記事もその一つです。

 3年前、日本共産党の志位和夫委員長(当時)との新春対談に出させてもらいました。志位さんが国際関係について非常に熱く語っていたことが印象に残りました。

 共産党自身が教育に関心を持つ党で、「赤旗」が教育関係の記者会見やシンポジウムなどを取材して記事にしてくれているのも頼もしいです。「赤旗」は私の仕事の重要なデータソースでもあります

 

いま「赤旗」を 1928・2・1~創刊97周年

法政大学名誉教授・前総長 田中優子さん

2025年1月31日

新聞の信頼引っ張れ

 戦後日本の自民党一強政治は、その裏側に何が潜んでいるかわからないまま、続いてきた。しかしその壁も崩れ始めている。誰かが、壁に穴をあけたからだ。

 その誰かとは「赤旗」の記者たちだった。パーティー券、余剰金等々の不記載を綿密に調べ、2022年に「赤旗」がスクープした。その時、他の報道機関は取り上げなかった。特捜部が動いたことで、1年以上たって大手メディアがようやく報道を始めた。これは刑事告発がなされた結果だったが、しかし「赤旗」の調査報道がなければ、そもそも告発もできなかったのである。

 さまざまな問題が、大手報道機関が取り上げないことで隠されてきた。今はYouTubeにも優れた報道機関が生まれている。しかしまだまだ玉石混交だから、どの情報を信頼するか、というアンケートではやはり新聞が筆頭にくるそうだ。新聞はどこも購買数が落ちていて、テレビの視聴率も落ちている。「信頼できるメディア」が、大手以外の新聞や、テレビ以外のインターネット・チャンネルになっていく可能性は大いにある。

 「どの新聞が信頼できるか?」と問われたら、私は「赤旗」と答える。これからも新聞の信頼を引っ張っていくことが、「赤旗」の役割であり、存在理由だと思う。(寄稿)


「赤旗」が発行の苦境にある。
迷える国民の「北斗七星」であるこの新聞を潰すわけにはいかない。
「闇」は一層深く、強くなるでしょう。
皆さんのご支援をお願いいたします。
日刊紙・WEB版   ¥3,497(税込み)
日曜版       ¥990(税込み)


雨宮処凛がゆく! 「楽しい日本」への大きな違和感。

2025年01月30日 | 社会・経済

 マガジン9 2025年1月29日

     https://maga9.jp/250129-1/

 

 「楽しい日本を目指していきたい」

1月24日、施政方針演説で石破総理が語った言葉だ。

 その翌日、毎週土曜日に東京都庁の下で「もやい」と「新宿ごはんプラス」によって開催されている食品配布には、食料を求めて828人が並んだ。

 コロナ前は50〜60人だった場だが、コロナ禍を受けて「一食分でも節約したい」と並ぶ人は増え続け、この日、過去最多を更新したのだ。

 困窮者支援の現場にいると、「楽しい日本」という言葉は随分と無神経なものに聞こえる。以下のような悲鳴を、相談会などをするたび耳にするからだ。

 「仕事をクビになり、給与の残りで生活している。食べるものにも困っている」(60代女性、単身)

 「無職。ネットカフェ等で暮らしている。頸椎症性脊髄症を発症し、両手のしびれ、足のふらつき、失禁などの症状がある。安定した住まいを確保したい」(50代男性)

 「失業中で一年くらいまともに食べていない。保険証もなく病院にも行けない。現金がなく食べ物に困っている」(50代男性)

 この30年間、日本は先進国で唯一賃金が上がらなかった国である。そこに5年前、コロナ禍が直撃。この3年間はそこに物価高騰が加わる「三重苦」。そんな中、庶民の暮らしは限界に達しているというのが私の実感だ。

 電話相談のたびに、「とにかく一万円でもいいから給付金がほしい」「なぜ国は物価高対策をしないのか」「自民党は底辺の人の暮らしをまったくわかっていない」「消費税引き下げや現金給付などの対策を今すぐにしてほしい」という嘆きの声が寄せられる。

 昨年夏に発表された国民生活基礎調査によると、生活が苦しいと回答したのは約6割。

 また、日銀が1月17日に発表した生活意識アンケートによると、1年前と比べて暮らしに「ゆとりがなくなってきた」と回答した人は57.1%。その理由が「物価が上がったから」と答えたのは89.7%だったという(複数回答)。

 そこに「一人ひとりが主導する『楽しい日本』」と言われても。

 「楽しい日本」について、石破総理は「すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、『今日より明日はよくなる』と実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。そうした活力ある国家」と語っている。

 が、「豊か」だった日本を30年かけて貧しくし、国力を奪い、未来の見えない不安定な働き方を激増させて少子化を推し進めたのが自民党政権であることについてはどう考えているのだろう? その果てに、「今日より明日は悪くなる」という空気がこの国には蔓延していることを知らないとでも言うのだろうか?

 ここにそれを証明するような数字がある。

 日本財団による、6カ国(日本、アメリカ、イギリス、中国、韓国、インド)の18歳への意識調査だ(2024年)。

 それによると、「自分の国の将来」について「良くなる」と答えた日本の18歳はわずか15.3%。中国の18歳は85.0%が、インドの18歳は78.3%が「良くなる」と答えているのにぶっちぎりで最下位だ。諸外国と比較しても相当な悲観ぶりである。この国の18歳が見ている日本と、67歳の石破総理が見ている日本はずいぶん違うようである。

 さて、施政方針演説では「地方創生」にも触れられた。石破総理は「地方創生2.0」とブチ上げ、「これを『令和の日本列島改造論』として強力に進める」と自信満々だ。

 そうして「若者や女性にも選ばれる地方」などと述べるが、まずはここまで地方を衰退させるような政策を自民党政権が進めてきたことについてはどう思っているのだろう。

 それだけではない。演説ではNISAやiDeCoなどの名前も出し、「資産運用立国の取り組みを強化する」と主張。なんか国が投資とか勧め出すのって、いかにも「末期」って感じがするからやめたほうがいい気がするんだけどどうだろうか。

 施政方針演説の中でもブッたまげたのが「闇バイト」や「匿名・流動型犯罪」への対策について触れた部分だ。

 「仮装身分捜査により検挙を徹底する。『闇バイト』の求人情報の削除の促進、SNS等での若者向けの注意喚起、防犯カメラの整備の支援等を進める」と「対策」を語るが、闇バイトが蔓延するもっとも大きな理由は「貧困」ではないだろうか。

 働いても生活できない、マトモな賃金の仕事がない、あるいは失業してもセーフティネットになかなかひっかかれないなど、この社会が30年かけて傷んできた結果のひとつが「闇バイト」の蔓延に私には思える。また、闇バイトなどよりずっと多いのが、全国のコンビニやスーパーで起きている、おにぎりひとつが買えずに万引きして逮捕されるような事件だ。逮捕されているのは高齢者やロスジェネ、若者など全世代。こんな悲しい事件の頻発は、20年前には決してなかったものだ。

 そんな中、もっとも早く闇バイトを根絶する方法は、この国の経済が立て直されることだろう。

 しかし、それをやらずに「仮装身分捜査」や「防犯カメラの整備」とは、どうしても「小手先」に思えてしまう。

 というか、自民党政権はこの30年、ずーっとそんなことばかりしてきたように思うのだ。例えば火事そのものを鎮火しようとしたり火事を起こさないようにしようとはせず、「どの消火器を使おうか」みたいな議論ばかり。

 少子化対策だって、安定雇用を増やせばかなりの部分が解決するのに決してそこには踏み込まなかった。ロスジェネに関しても、20年以上放置したところでやっと「人生再設計第一世代」と名付けて正社員化とブチ上げても、もうその時点で手遅れ。常に小手先で後手後手で、抜本的な解決策には手をつけず、やってる振りをしてきた。

 そういうことを繰り返して、取り返しがつかないところに来たのが今の日本ではないのだろうか。

 と、そんなことを「楽しい日本」という言葉を聞いて考えたのだった。

 おそらく、ほとんどの人が望んでいるのは「楽しい日本」より「安心して生活できる日本」「老後の心配をこれほどしなくていい日本」「未来が今より明るく思える日本」ではないだろうか。

 しかし、その辺、石破総理って全然見えてないんだろうな……。だって今、「楽しい日本」って選んでしまうセンスの持ち主だもんな……と遠い目になっている。


朝玄関の戸を開けると、車が半分埋まっている。
これはひどいなと思いながら除雪作業開始。
しかしそれほど積もっているわけではなく、22,3cm程度。
どうやら車周りに吹き溜まったようだ。
温度計を見ると0.1℃、プラス氣温だ。


トランプ大統領就任 世界は米国の都合で動かない

2025年01月22日 | 社会・経済

 「しんぶん赤旗」主張 2025年1月22日

 米国がどういう国際秩序を目指すのか。トランプ大統領の就任演説が注目されました。“世界のルールも国際協力もおかまいなし”といわんばかりの自己都合優先の姿勢には、強い危惧を抱かざるをえません。

 平和の秩序をめぐる問題では、すべての戦争を終わらせるとの言葉はありましたが、ウクライナや中東への直接の言及はありませんでした。それどころか、「世界が見たこともない最強の軍隊を構築する」と軍拡の必要性を述べ、「米国は領土を拡大し、新たな地平に国旗を運ぶ」と、前時代の領土拡張主義者のような発言も飛び出しました。

■国際ルールを無視

 国際的に定着しているメキシコ湾という名称をアメリカ湾に改称することや、1999年に全面返還したパナマ運河を「取り戻す」との持論を繰り返したことに各国は懸念を強めています。パナマのムリノ大統領は「就任演説の内容を拒否する」と声明しました。

 国際協力の課題では、世界が格闘している気候危機問題で、国際的枠組み「パリ協定」からの再離脱を表明し、逆に化石燃料の輸出で米国はもうけると宣言しました。温室効果ガス排出世界2位の国として重大です。米国が最大の資金拠出国である世界保健機関(WHO)からの離脱も表明し、感染症拡大などに対する国際的な取り組みへの影響が懸念されています。

 しかし、「米国第一」の再来で平和や国際協力がふりまわされることはあっても、前進を押しとどめることはできません。米国が世界に大きな影響力を持つことは事実ですが、今の国際社会全体は、アメリカの思い通りに形成されているわけではないからです。

 国際社会は、国連憲章・国際法に基づく秩序、包摂的な平和構築、核兵器をはじめ非人道兵器への反対、気候危機打開、持続可能な社会の実現など全人類的課題の重要性を広く共有し共同で取り組んできました。

 米国であれロシアであれこうした努力に背を向ける身勝手な大国に、世界の多くの国はおいそれと追随することはないでしょう。トランプ1期目を通じて、その手法を知る各国は、今度は米国とより巧みに外交を展開する条件を持ちます。

■日米同盟絶対改め

 トランプ流の「米国第一」をごり押しすれば、同盟国とさえ矛盾を深めることになります。トランプ氏が高関税をかけると脅したカナダや、グリーンランドを領有するとねじ込もうとしたデンマークは、トランプ氏に同意しないでしょう。対GDP比5%の軍事費という法外な要求も、あつれきを広げることになります。

 こういうときだからこそ、ブロック対立や軍事対軍事でなく、世界共通のルールである国連憲章と国際法に基づく平和で包摂的な秩序をめざす外交努力がますます重要となります。

 「米国第一」を掲げる政権に、「日米同盟絶対」の硬直した思考で対応すれば、軍事でも経済でも、これまで以上の負担を求められるのは必至です。石破茂首相はトランプ氏への就任祝辞で、「日米関係のさらなる強化」で「緊密に協力」したいと表明しています。日米軍事同盟への依存をやめ対等平等の日米関係への転換こそが必要です


2019年9月の国連でのトランプの演説の一部です。

それぞれの国には大切な歴史、文化、遺産があり、それは守り、祝うに値するものです。そしてそうすることが我々の可能性や強さに繋がっています。

自由な世界はその国の基盤を受け入れねばならず、それを消し去ったり置き換えたりしようとしてはなりません。壮大で偉大な地球を見渡せば真実は一目瞭然です。

あなたが自由を求めるなら自国に誇りを持ちなさい。民主主義を望むなら主権を保ち続けなさい。平和を望むなら自国を愛しなさい。賢明な指導者は常に自国民を優先し自国を第一に考えるものです。

未来はグローバリストのものではありません。未来は愛国者のものです。未来は主権国家、独立国家のものです。国民を守り、隣人を尊重し、違いを尊重することがそれぞれの国を特別でユニークなものにしているのです。

美しい「ことば」ではありませんか。
「ことば」は「ことば」でしかありません。

 


政党助成金315億円 9党申請

2025年01月19日 | 社会・経済

共産党は受け取り拒否

「しんぶん赤旗」2025年1月19日

 2025年分の政党助成金の受給を9政党が申請したことが、総務省の発表で明らかになりました。総額は約315億3600万円にのぼります。

 政党助成金は、国民から集めた1人当たり250円の税金を各党が分け取りする仕組みで、いわば政党への“強制カンパ”。思想・信条の自由を保障する憲法に違反する制度です。「政治改革」の名目で、企業・団体献金の「禁止」と引き換えに導入した制度でしたが、政治資金パーティー券収入を含む企業・団体献金は温存され、多くの政党は企業・団体献金と政党助成金を二重取りしています。日本共産党は政党助成金の受け取りを一貫して拒否し、廃止を主張。国会に政党助成法廃止法案と企業・団体献金全面禁止法案を提出してきました。

自民1割減も136億円に

時事が配分額試算

 時事通信が政党助成金の各党への交付予定額を試算したところ、昨年10月の衆院選で議席を大きく減らした自民党は前年比12・9%減の136億3900万円となりました。(100万円未満切り捨て、以下同)

 議席を伸ばした立憲民主党は同15・8%増の81億7100万円。躍進した国民民主党は同56・7%増の19億7900万円、れいわ新選組は同35・3%増の9億1600万円、参政党は同111・9%増の5億1600万円でした。

 衆院選で受給要件を初めて満たした日本保守党は1億7200万円を得ます。日本維新の会は32億900万円(前年比4・6%減)、公明党は26億4700万円(同7・6%減)、社民党は2億8300万円(同1・3%減)となります。

 各党への配分額は1月1日時点の所属国会議員数、直近の衆院選、直近2回の参院選の得票数に応じて決まります。(時事)


国民に身を切らせて裏金と税金で肥え。

わたしのblogもイメージチェンジしました。
いかがでしょうか?

昨日とは打って変わって青空の広がるいい天氣。
気温も下がり朝の最低氣


北原みのり おんなの話はありがたい  NHK大河「べらぼう」よ、なぜ? 「男が女で遊ぶ場所」が今もある社会で「吉原」大連発

2025年01月18日 | 社会・経済

AERAdot 2025/01/17

 テレビから性的なことが流れてくるのは、50年以上生きていても、やっぱり慣れない。特に、そばに誰かが一緒にいるときなど、それが両親であったりするならばなおのこと、友だちであってもそれなりに、とても気まずく、落ち着かず、とたんに時の歩みは遅くなり、どういうわけか耳が熱くなる。

 NHKである。大河ドラマである。これからの大河ドラマは、各自、個室で一人でスマホで観てくださいね、ええ、日曜日の夜にお茶の間で家族全員で観るドラマじゃなくていいんですよ、一人一台の時代ですからね! とNHKから一方的に突きつけられたような思いだ。さようなら、私の大河ドラマ。日曜の夜、それぞれ新しい週の準備をしながら大河ドラマをかけっぱなしにするような時間はもうなくなっちゃった。

 そう、今期の大河ドラマ「べらぼう」は江戸時代の吉原が舞台である。NHKによれば「吉原というのは男が女遊ぶ町」(ドラマの中でそう紹介されていた)とのことで、主人公は「日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物”蔦重”こと蔦屋重三郎」(NHKホームページ)である。

 ご存じのように蔦屋重三郎とは、「吉原細見」という、今風に言えば、「風俗店紹介誌」をつくった人だ。吉原のマップをつくり、お店を紹介し、女性を格付けしたりなどして、寂れつつあった吉原を盛り上げた男である。

 当然、ドラマの中では、吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原……と「吉原」という単語が何十回も音声として流れてくる。セックスシーンはないが、女性の裸の遺体が「悲惨」の表現として出てくる。さらに昼間に再放送もされた番宣番組では、ドラマ出演している俳優のかたせ梨乃さんが現代の吉原を探訪したりして、2025年に入ってまだ2週間も経っていないのに、ものすごい量で「吉原」という単語が繰り返し公共の電波に流れ、ものすごい勢いで「吉原」がエンタメ化されているのを実感している。Xで秀逸なことを言っている人がいた。「(吉原は)男が女と遊ぶ場所ではなく、男が女遊ぶ場所だ」と。

攻めてますね、NHK……とついつい嫌味を言いたくもなる。あまりにも衝撃的なセンスではないか。

 吉原で働いていた女性が客の男に殺されたのは、コロナ禍の2023年5月だった。既に大河ドラマの企画は進んでいたとは思うが、そこで「吉原を舞台にするドラマは無理ではないか」という判断にならなかったことがまず不思議である。なぜなら、「吉原」が決して過去の歴史ではないことを、あのとき、私たちは突きつけられたのだから。そこは現在進行形で行われている「男が女で遊ぶ場所」であって、現在進行形で貧困に喘ぐ女たちが働き、現在進行形で性病に罹患し、現在進行形で女が殺され、現在進行形で差別と偏見がうまれている。戦国時代じゃないから戦国時代を歴史エンタメとして楽しめるのであって、「吉原」という世界を現在進行形で生きている女がリアルに無数にいる現代で、吉原を舞台にした歴史エンタメを楽しめなんて、そりゃあムリというものじゃないか。

「吉原」をドラマで表現しないで! とまでは言わない。NHKの看板中の看板である大河ドラマでなぜに? という単純な疑問である。歌舞伎町で少女買春する男たちが社会問題になっている今、完全なる人身売買だった江戸吉原を盛り上げた男を主人公にする理由って何よ? というシンプルな抗議である。

 テレビから性的なことが流れてきて気まずいのは、それが「性的なことだから」というよりは、それがたいてい、私自身の身体を侵蝕するような居心地の悪いものだからだと思う。両親の前で、友だちの前で、私の身体は硬直する。それは侮辱されているように感じるからだ。だから耳が熱くなったりなど身体が反応するのだろう。率直にいえば、日本の公共放送でも流れてくる性的なもののほとんどが、一方的に女に欲情する側の視線だ。居心地が悪くなるのは、テレビにセクハラされているからだろう。

 先日、NHKの「鶴瓶の家族に乾杯』という番組をたまたま観る機会があった。鶴瓶さんがさまざまな地方をまわり、その土地に生きる人々と出会い、市井の人々と鶴瓶さんがあったかく交流するアットホームな番組である。しかし、そういう番組だからといって油断できないのが、日本の公共放送だ。そんなことを改めて突きつけられる回だった。

 その日、鶴瓶さんは温泉ホテルで女性に「3人(ご自分と純烈のリーダーと女性)でお風呂入るねんで」みたいな冗談を言いっていた。鶴瓶さんのその言葉に、言われた女性は「きゃぁ」とふざけ、そのリアクションの面白さが褒められるシーンがあった。

 わからない人にはわからないかもしれないくらいの、微妙な笑いであり、微妙な間である。そして「放送される」ということは、現場でも、編集段階でも、誰も「変だと思わなかった」からだろう。だいたい鶴瓶さんは暴力的ではなく、「一緒にお風呂入るねんで」とからかわれた女性は、楽しげである。相手がオジサンでも鶴瓶さんは同じことを言ったのかもしれない。でも……私たちには「これ、どういう意味?」と肩をこわばらせるのに十分な条件の社会を生きているのだと思う。だって、「エンタメ」という大義名分で、一方的にセクハラ動画を見せられることが多いから。「笑い」「ほのぼの」という文脈で、セクハラをされることがあまりに多いから。それは、おもしろいことではないから。

 NHK大河ドラマ「べらぼう」は「笑いと涙と謎に満ちた“痛快”エンターテインメントドラマ!」と謳っている。その“痛快”とは誰のものなのか? そんなことを、どうしても思わずにはいられない。「男が女で遊ぶ場所」があたりまえのようにある社会で、それをリアルな表現物として観るにはあまりに重すぎるから。


今朝の積雪は今季最大。


阪神・淡路大震災30年 明日を開く

2025年01月17日 | 社会・経済

被災者 生活再建の苦闘続く

「しんぶん赤旗」2025年1月17日

借金が増え自己破産 「やっぱり国からお金の援助がどうしても必要です」

 6434人の犠牲者と家屋全半壊(焼)約47万世帯という被害となった阪神・淡路大震災(1995年1月17日)から17日で丸30年となりました。被災者は震災の打撃に加え長年、生活再建に苦闘を強いられ、被災者を無視した政治と復興のあり方が問われ続けた30年でした。

 「国も神戸市も政治家も、私たちを思いやる気持ちはなかった」

 神戸市東灘区の深江南町市営住宅に住む矢田悦子さん(76)はつぶやきました。

 神戸市灘区の賃貸マンションで被災し、半年後に西区の仮設住宅に。当時、矢田さんは東灘区で会社勤め、夫の喜一郎さん(故人)は自営業、中学生と小学生の子どもが灘区の学校に通っていました。毎日、喜一郎さんが車で有料道路を通って子どもと矢田さんを送迎。3人が電車で通うより安いとはいえかなりの交通費で、蓄えは尽きました。

 1997年に東灘区の復興市営住宅が当たり、暮れに入居。都市部のため生活が便利になり、学校・職場も格段に近くなってようやく落ち着きました。

 震災後に借りた災害援護資金350万円の返済が2000年に開始。月約6万円の返済を求められましたがとても無理で、月5000円の少額返済になりましたが夫の仕事も減っていて矢田さん夫妻にはそれも厳しく、子どもの大学の入学金など出費がかさんで借金が増え自己破産せざるをえませんでした。「震災がなければこうはならなかったのに。やっぱり国からお金の援助がどうしても必要です」

 10年には、兵庫県や神戸市、西宮市などが復興公営住宅のうちURなどから借り上げた住宅の入居者に、「借り上げ期間は20年間」として退去を迫る問題が起きました。

 矢田さんの住宅もその一つで、寝耳に水。「そんな話は一切聞いていなかった。ずっと住めると思っていたのに」。市があっせんする転居先はどれも遠方で、喜一郎さんがかかりつけの近くの病院に通院できなくなるなど転居はとても無理でした。応じられないなか市は17年、世帯主の喜一郎さんに退去を求めて提訴しました。

切実な要求掲げ支援策前進させた闘い

 2020年2月に喜一郎さんは肝臓がんで亡くなり(享年86歳)、裁判は終了。同年12月に矢田さんは不本意ながら現在の住宅に引っ越しました。同じ東灘区内であることがまだ救いでした。

「棄民政策」

 「追い出しの問題が夫のストレスだったと思う」といいます。「私たちは悪い見本になりました。今後の災害では、政治や行政は被災者に寄り添ってほしい」

 震災後、被災者を助けようとしない自民党政治は「棄民政策」と呼ばれました。

 阪神・淡路の被災者への公的支援・個人補償を政府が拒否したため、被災者は融資に殺到し、返済の重圧を負いました。

 約5万6000人が借りた災害援護資金(最高350万円)は06年に完済のはずが返せない人が続出。21年に神戸市が、22年に兵庫県が未返済者の返済免除を決めるまで、返済の問題が続きました。業者向け緊急災害復旧資金融資は約3万4千件の利用があり、5500件余が返済不能に陥りました。

絶望死とも

 持ち家を失った人の約3分の1が、資金不足で自宅再建を断念。再建してもローンに苦しみ、震災前のローンも残る二重ローンは特に返済が多額でした。再建した住宅を手放す人が相次ぎました。

 仮設住宅と復興公営住宅は、多くが郊外など被災市街地から離れた地に建設。抽選で被災者はバラバラになり地域のコミュニティーが壊されました。貧困や病気もあって孤独死は激増し、「絶望死」とも呼ばれた仮設住宅の孤独死は233人、復興住宅では1431人(集計終了の23年末まで)に上ります。

 約7700戸供給された借り上げ復興公営住宅では、県や神戸市、西宮市などが裁判に訴えるなど入居者を強引に転居させ、大問題になりました。

 一方、被災者と阪神・淡路大震災救援復興兵庫県民会議、日本共産党は長年、切実な要求を掲げて闘い、支援策を前進させました。

方針変える

 災害援護資金の返済問題では相談会や政府・自治体交渉を重ね、月1000円からの少額返済や免除枠の拡大を実現。多くの被災者が救われました。復興公営住宅の戸数増と家賃低減、民間賃貸住宅の家賃補助なども実現しました。

 借り上げ復興住宅追い出し問題では、入居者の必死の闘いと日本共産党の議会論戦で、県と神戸市は全員退去方針を変え、13年に神戸市は85歳以上、県は概ね80歳以上―などの基準で一部継続入居を容認。さらに借り上げ県営住宅では、それ以外の世帯も転居困難な事情を第三者の判定委員会に申請すればほぼ継続入居が可能になりました。宝塚市と伊丹市は全員を継続入居としました。

国連が被災者支援を勧告

 被災者の厳しい実態に国連が02年、日本政府に被災者支援の強化を勧告したほどです。

 国連社会権規約委員会は同年8月発表の見解のなかで、多くの被災高齢者が孤立しケアもないことや住宅再建の資金調達の困難さなどに懸念を表し、(1)兵庫県に高齢者や障害者へのサービスを拡充させる(2)住宅ローン返済を援助する措置を迅速にとる―ことを日本政府に勧告しました。

被災者自身の組織が力に

 元借り上げ住宅協議会運営委員・元日本共産党神戸市議 段野太一さん(85)

 借り上げ住宅の問題で神戸市などは最後まで当事者の声を聞きませんでした。追い出すために裁判までやるなどもってのほかです。

 入居者の闘いと共産党の論戦が連携し、県営住宅では途中からほとんどの人が残れるようになり、訴えられた人たちも裁判では負けたとはいえ、最終的にはある程度希望に沿った市営住宅があっせんされました。

 その一番の力になったのは、被災者自身が2011年に借り上げ住宅協議会という組織をつくったことです。これがものすごく大きかった。月1回高齢者のみなさんが集まって、法的な問題などを学んだり交流したりして、自分たちは間違ってないと元気に頑張れました。

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阪神大震災30年

教訓生かさない政治を変える

「しんぶん赤旗」主張

 1995年の阪神・淡路大震災は、住宅の損壊約64万棟、災害関連死を含めた犠牲者6434人という、都市部を襲った未曽有の災害でした。

 この30年間、政府は悲痛な教訓を受けとめ生かしてきたのか。政治の最大の課題である、国民の安心と安全に真剣に取り組んできたのか。答えは「ノー」です。

 能登半島地震では、避難所の雑魚寝、冷たい食事、断熱性のない仮設住宅など、30年前と同じ劣悪な状況が繰り返されています。

■住民より大型開発

 阪神大震災では「創造的復興」の名で、震災後の10年余で、直接被害額10兆円を上回る16兆円超の復興事業費が投入されました。その約6割が高速道路、港湾、海を埋め立てた神戸空港建設、都市再開発などにあてられ、震災前からの開発計画が推し進められました。

 一方、生活や生業(なりわい)再建は「自助自立」にされ、住宅などを再建した人も二重ローンに苦しみました。住民が区画整理で追い出され、「陸の孤島」といわれた郊外の仮設住宅や高層の復興公営住宅ではコミュニティーが壊され孤独死や自殺が続きました。商店街にはビルができましたが、住民が戻れず、消費が回復せずにテナントが撤退しています。

 住民無視の「創造的復興」は、その後の震災でも被災者を苦しめています。

 震災前年、日本共産党神戸市議団は市の消防体制の弱さを指摘していました。当時も経済効率優先で病床削減や自治体リストラが行われていました。いま、それがさらにすすみ、自治体のマンパワー不足が能登の復旧を妨げています。

 南海トラフ、首都圏直下型地震の危険性が指摘されるなか、一極集中、超高層ビルの建設ラッシュ、湾岸開発など防災を無視した都市開発がすすんでいます。

 なぜ教訓が生かされないか。自公政権にとって「安全保障」とは米国の世界戦略にどう従うかが中心であり、「国土強靱化」は“投資しても安心なインフラ”の海外へのアピールだからです。こうした政治を変えなければなりません。

■支援法拡充求める

 そのなかで特筆されるのは、阪神大震災被災者の粘り強い運動と世論で被災者生活再建支援法を勝ち取ったことです。当時、政府は「私有財産制の国では個人財産は自己責任」と住宅再建支援を拒みました。

 議員立法を求める被災者・市民と力を合わせ、日本共産党の衆参議員らが国会議員有志に働きかけ97年に法案を提出。政府はこれを拒む一方、世論を恐れ98年に支援法を成立させましたが、阪神・淡路には適用されず、わずか百万円の「見舞金」で住宅再建には使えないというものでした。

 2000年の鳥取西部地震で住宅再建に3百万円を支給する片山善博知事(当時)の英断も受け、支援法改正の世論と運動が高揚。政府も個人の住宅再建は地域再建という公共性があると認め、07年、住宅本体の建設・改修を支援対象とする現行法が実現しました。

 住宅は憲法が掲げる生存権の保障に不可欠です。災害列島・日本。金額を引き上げ真に住宅再建可能な制度にする必要があります。政府が責任を果たしきるよう求める運動を各地で大きなうねりにしましょう。


能登地震では「棄民・棄地」政策である。
わが北海道の僻地もまた見捨てられるのだろう?