岡山県議会議員 森脇ひさき

2023年の岡山県議選で5期目当選させていただきました。
「命と暮らし、環境が最優先」の県政へがんばります。

子どもたちに何を教えるのーー放射線の副読本

2012-01-29 | 教育・子育て充実のとりくみ
 副読本は小学生向け、中学生向け、高校生向けで、それぞれ教員向けの指導書もあります。文科省ホームページから見ることができます。
 放射線は自然界にある、人類は放射線のなかで生まれ進化してきた、放射線を受けながら生活している、医学など様々なところで利用されている・・・など、「だから危険はない」「安全」と思わせたいのでしょうか。今このようなことを子どもたちに教えないといけないことなのか、最初からすごく違和感を感じました。 

 今、国民はどんな思いでいるでしょうか。「安全」と言われてきた原発の事故によって、危険にさらされている福島県や周辺の人々の状況を見聞きするなか、国や東電への怒りを大きくするとともに、これから先どうなるのかなど不安を大きくしているのではないでしょうか。人類はこれからも危険と隣り合わせの原発に依存し続ける以外にないのか、自然エネルギーではどうなのかなど模索している状況ではないでしょうか。――副読本はそういう思いにまったく答えていないわけです。
 さらに、原発事故の核心部分にはまったく触れられていません。原発は、一旦事故が起こったら、暴走を止めることができない、被害は広範囲に広がり、長時間に及び、収束のための費用は莫大なものになるだけでなく、地域そのものが崩壊の危機にさらされています。不幸にして、起こってはならないことが起こったことによって、原発以外の事故には例がない「特異な危険」がいっきに白日にさらされたのです。このような大問題に触れず、事故後もなお「安全」をふりまく文科省はいったい何を考えているのでしょうか。子どもたちをどう育てようというのでしょうか。それこそ恐ろしくなります。

 「自然界にある」「常にあびている」などと書かれていますが、大きな間違いがあると思います。1つは、「自然界の放射線も危険」だということです。自然界の放射線量はごく微量であるため、これによって「がん」などになる確率は極めて少ないでしょう。しかしゼロではありません。もう1つは、自然に存在するカリウム40と原発から放出されたヨウ素131、セシウム134などを同レベルで比較する問題です。「自然に存在するカリウム40の内部被爆量より今回のヨウ素131やセシウム134による内部被爆量の方が少ないので心配ない」という議論も一部にあります。しかし、放射性物質によって、体内でのふるまい、放射線の影響はずいぶん違います。カリウム40は軽いため体内を動き回り、半減期は13億年でゆっくり崩壊するため、1つの細胞に与える影響は少ないといわれています。一方、ヨウ素131やセシウム134は重いので、一定部分に留まり(ヨウ素は甲状腺、セシウムは内臓に留まりやすい)、半減期は比較的短い(ヨウ素131は8日、セシウム134は2.1年)ので、いっきに崩壊し、局所的に打撃を与えるため、1つの細胞に与える影響は大きくなると言われています。
 科学的、医学的には有用な面があことも述べる必要はあるでしょうが、それにしても、なぜ、「危険でない」ことを強調しなければならないのか、まったく腑に落ちません。放射線に安全なものは無いこと、放射線は受けない方がよいことを理解してもらうことこそ必要ではないでしょうか。

 人体への影響についても不正確です。「100ミリシーベルト以下の低い放射線を受けて、がんなどの病気になる明確な証拠はない」「低い放射線でがんになる人が増えるかどうか明確でない」との記述がありますが、これもまた「心配ない」ことを言いたいためでしょうか。確かに確率的には少ないでしょうが、ゼロではないわけです。遺伝子への影響についても、「人間で証明された事例は無い」と記されていますが、動物では事例があり、人間だけが例外というのは考えにくいと思いませんか。なぜ、ここでも危険な面を書かないのか不思議で仕方ありません。妊婦のおなかにいる胎児や女性の卵巣への影響、小さな子供ほど影響が大きいことなどもまったく触れられていません。

 長くなりましたが、福島第一原発の事故の教訓がまったく生かされていないのは大問題だと思います。これからの社会を生きる子どもたちに、いまどのような知識が必要か、幅広く意見を聞いて決めるべきだと思いました。このような副読本は使ってほしくありません。

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