安藤さんは、なんと48歳、無一文で、インスタント
ラーメンの開発に乗り出したのです。
それまでは様々な会社の社長や信用組合の理事長を
務めていたのですが、その信用組合が破産。
その負債を負い、無一文となりました。
ただ自宅が残っただけです。
このままでは、人生、敗北・・・。
48歳の安藤さんは、インスタントラーメンの開発に
これからの人生を賭けることにしたのです。
彼は裏庭に掘っ立て小屋を立て、来る日も来る日も、
インスタントラーメン開発の研究を続けました。
いまでは当たり前ですが、お湯をかければ食べられる
ラーメンなんて、これまで誰も考えつかなかったことです。
モデルもないし、作り方なんて、誰も知りません。
ですから、考えて考えて、実験を重ねて重ねて、
研究し続けました。
失敗を繰り返し、挫折を味わい、1日睡眠が3~4時間
の日が続きました。そして、1年間を経て、安藤さんは
ついに発明します。
世界初のインスタントラーメンの誕生でした。
1958年に商品化されると、どんぶりに入れて湯を注ぐ
だけでおいしく食べられる「チキンラーメン」は、
瞬く間に人気商品となりました。
そして、ご存じのように、いまでも根強い人気のラーメン
となっているのです。
ピンチこそチャンス・安藤さんは後に語っています。
「事業と財産を失い、裸一貫、絶対の窮地から
出発したからこそ、並でない潜在能力を発揮できた
のではないか。
逆説的に言えば、事業失敗がなければ、
(チキンラーメンの開発に没頭するという)
これほど充実した時間はもてなかっただろうし、
即席めんを生み出すエネルギーも生まれ
なかっただろう」
誰でも潜在能力をもっています。
その能力を発揮できるかどうかは、いろいろな
要素があると思います。
・明確な目標をもっているか?
・その目標に向かって、行動しているか?
・その行動を日々、続けることができるか?
・失敗を繰り返しても、あきらめないで、常に目標に
向かっているか?
このような意識で行動している人は、いずれ目標を
達成するでしょう。
特に、窮地に立たされている人は、自分の眠って
いる能力が発揮しやすいのです。
「窮鼠、猫を噛む」ではないですが、逃げ場がなく、
やるしかない!という状態で、必死になれば、
誰でも普段の何倍も力が発揮されます。
ですから、ピンチこそチャンスです。
窮地は、人間を成長させます。
ピンチのときに、自分の潜在能力を発揮
できるのです。
明確な目標を持ったあとは執念だ。
ひらめきも執念から生まれる。
知識も大切だが、知恵をもっとだせ。
知識は比較的簡単に手に入るが、知恵は大きな
努力と体験がないとなかなか手に入らない。
私は眠るときも、メモと鉛筆を枕元に用意する。
四六時中考える習慣をつけなさい。
お客様は神様です、という言葉があるが、
消費者は神様以上のきびしさをお持ちである。
即席めんの開発に成功した時、私は四八歳に
なっていた。遅い出発とよく言われるが、人生に
遅すぎるということはない。
五〇歳でも六〇歳でも新しい出発はある。
author:中井俊已
まじめに人生を送り42歳になった。
下の子供も小学校に入ったし、そろそろ自分の家を
持ちたいと思った。
そして、夫婦でマンションを探した。
そんな時、比較的、手頃で綺麗なマンションが売りに
出されていた。
見に行くと確かに普通のマンションより広いし、安い。
販売会社は徹底的なコストダウンをしていると自慢げに
話していた。
家族で相談して思い切って買うことを決めた。
銀行に相談したら返済は月々、約15万円になる。
それを家族全部で節約して払うことになった。
彼は決意したが、生来、慎重な性格の彼は目前に
迫ってきているのが生涯一度の買い物であり、もし
間違えば家族も巻き添えになって苦しむことを
知っていた。
そこで知り合いの人を通じて建築士に頼み、20万円を
支払って買おうとするマンションが大丈夫かどうかの
調査を頼んだ。
建築士は現物を見、建築確認申請などの必要書類が
整っているかを調べ、彼に「大丈夫ですよ。
検査もキチンと行われていますし、検査機関も大手です。
と答えた。
彼はやっと安心してローン契約を済ませた。
・・・ これは実話である。
欠陥マンションを買った人の中に、専門家に見て
もらった人もいたのだ。
家族4人が希望に胸をふくらませて新しいそのマンション
に引っ越したのはそれから程なく経った頃だった。
妻は念願だった新居を手に入れて幸福そうだったし、
子供も新しい小学校に馴染んでいるようだった。
これまでまじめ一徹に働いてきた彼は自分の努力が
報われるのを実感した。
それから程なく経ってからであった。
突然として湧き上がったように「マンション偽造事件」
が起こり、「姉歯一級建築士」という人が現れ、そして
あれだけ慎重に調べて買ったはずのマンションが実は
偽造された設計図に基づいて建築されたマンション
だったことが判ったのである。
それでも信じられなかった。妻は真っ青になっていたが、
彼は「建築確認申請も通っているんだ。少しは弱いかも
知れないけれど、心配しなくてもいいよ。」と
家族をなだめた。
でも事態は次から次へと進展し、住民説明会が開かれ、
逃げ惑う区の説明に唖然とした。
間もなくして自治体から「退去命令」が届いた。
今まで愛してきた日本、信じてきた国や区役所、
それがこんな仕打ちをするとは考えられなかった。
彼は頭を整理することができない。
建築許可を下ろした当の自治体から「退去命令」?
その命令には退去せよということだけが書いてあり、
どこに退去させるのかは書いていない。
家族4人まるでこの豊かな日本の中で突然、
中世の難民になったような錯覚に襲われる。
憤激やまぬ彼に妻が諭す。
「あんた。そんなにカッカしていても損するだけよ。
早く都の住宅でも申し込みましょう。」
妻も辛いだろう。そうだ、俺も気を取り直してと、
都営住宅の申込書を取り寄せ、現住所がどうの
収入がどうのと書き入れる。
申込書に書き入れながら、彼は情けなくなった。
確かに建築会社が悪いのかも知れない。
でも俺はそんな人は知らない。
検査を担当する会社も知らない。
それは全部、国や自治体が認可を与えているのでは
ないか??もし何の認可もなければ俺ももっともっと
慎重にしたのに!
極限の心労と疲労の中で書き上げた書類を役所に
提出した。月々15万円のローンですら辛い。
家族全員で節約してやっとだった。
それに新しく都営住宅を借りるのにまた10万円近くの
お金がいる。
それも退去命令で出なければならないのにだ。
彼はどうしても納得いかなかった。
数日たって、都営住宅の抽選結果が届いた。震える手
でそれを開く妻。そこには、「抽選にはずれました」
と冷たい印刷の文字が並んでいた。
認可を降ろし、それがダメなら退去命令を出す。
そして退去命令を出した自治体が抽選で落とす。
地獄絵だ。
妻は意識が遠くなるのを感じた。
幸せを夢見て買ったマンション。
そのために毎日、どんなに考え節約してきただろう。
子供にも我慢させた・・・そう思うと、妻は涙が止まら
なかった。なんで、正直に一所懸命生きているのに
こんなに酷い仕打ちを受けるのだろう?
・・・信じられないが、これも真実である。
建築確認申請や検査システムを信じて買ったマンション
の人が公共住宅に申し込み、抽選ではずれたのも
事実である。
2005年に起こった欠陥マンション事件は国が全面的に
被害者を救わなければならない。もちろん「国」というのは
我々の税金であるが、それでも救わなければならない。
それが先決である。
次に、今回の事件の悪人共を捕らえなければならない。
でもそれだけでこの事件を終わらせてはいけない。
かつて、水俣病が起こったとき、事件の中核は国だった
のに、国は逃げ、チッソだけに責任を負わせた。
そのことが後に、カネミ油症事件、ミドリ十字事件を起こし、
多くの犠牲者を出した。
カネミ油症事件でも、ミドリ十字事件でも、同じくその
事件を起こした会社を懲らしめて終わりとなった。
もし今度も関係会社を処罰して終わったら、
日本国民でありながら、危険から守ってくれない
「切り捨て国家」からこの可哀想な国民は逃れることが
出来ないだろう。
この事件について。
一つは「一級建築士」という「専門家の倫理」であり、
一つは「現代社会における国の役割」である。
マスコミは今日も年末番組を流し、その中で今年の
言葉は「愛」であると言ってはしゃいでいる。…