(写真は、国立西洋美術館の円柱で支えられた
1階)
2016年、フランスの建築家ル・コルビュジエが
設計した上野の「国立西洋美術館本館」が
世界遺産に登録されました。
登録理由は、コルビュジエの”近代建築運動への
顕著な貢献”で、フランスの10作品等、日本も
含めた7か国・17作品が登録されました。
私としては、登録理由が、いまいちピンとこない
ので、先週、そのヒントを求めて、上野の
「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ ―
ピュリスムの時代」展に行って来ました。
コルビュジエが設計した「国立西洋美術館」で、
彼の絵画作品を観れば、登録理由が理解出来る
かも知れないと思ったからです。
(現在、”国立西洋美術館・開館60周年記念”
として、5月19日まで上野で開催中
:1,600円:月曜休館)
国立西洋美術館は、そもそも、川崎造船所社長
だった松方幸次郎が、ヨーロッパ各地で集めた
「松方コレクション」(絵画、彫刻)を中心に
昭和34年に設立された美術館です。
松方コレクションは、戦後フランス政府に接収
されましたが、フランス政府によりその一部が
日本に返還されることになりました。
これは、松方がパリのロダン美術館の開館費用を
援助したことへのお礼の意味もあったようです。
このときのフランス政府の返還条件が、これらの
返還美術品を展示する国立西洋美術館を建設する
ことでした。
こうして、国立西洋美術館は、フランス人の
コルビュジエの設計で建設されました。
この様な経緯もあり、西洋美術館の前庭では、
以下の写真のロダンの彫刻が無料で見られます。
(考える人)
(地獄の門)
(カレーの市民)
館内に入ると、1階は、円柱で支えられた、壁の
ない空間の「19世紀ホール」です。
ここには、コルビュジエが設計した建物の模型、
工事に関する説明等が展示されていました。
前頁の写真は、2階の企画展の展示室へと進む
スロープですが、2階から先は撮影禁止(注)
です。
(注:意外なことですが、国立西洋美術館の常設展
は、フラッシュを使わなければ写真撮影が許可
されています。)
国立西洋美術館は、スロープや自然光を利用した
照明などが特徴で、これらは、日本の戦後の建築
に大きな影響を与えたそうです。
また、国立西洋美術館は、コルビュジエの理念の
”無限に成長する”美術館で、展示品が増えて
きても、必要に応じて、外側へ増築するスペース
が確保出来ているそうです。
1階の19世紀ホールから2階の企画展の展示
スペースへと、スロープで回遊して行きます。
2階の展示スペースは撮影禁止なので、NHK探検
バクモン「世界遺産 国立西洋美術館」の映像と
ナレーションでご説明します。
絵を展示する空間としては壁が命なので、その
壁の前の柱は、一見、邪魔な様に思えますが、
しかし、これには、コルビュジエの意図がある
そうです?
この建物の壁は20メートルと長いので、それを
柱によって敢えて分断して、6.35メートル毎に
柱を置き、わざと空間を区切っています?
これは、言ってみれば”反則技”なのだそうです。
これにより、柱がまるで額縁の様な効果をもち、
目の前の絵画に集中出来る空間をつくっている
のだそうです。
う~ん・・・、なるほどね。
展示されているコルビュジエの西洋美術館の
設計図(撮影禁止)を見てみると、アバウトな
1枚だけです?
縮尺の目盛はキチンと入っているものの、この
簡単な1枚だけでは、建物は建てられない
でしょ~?
う~ん・・・、コルビュジエ程の巨匠ともなると、
イメージ図みたいな設計図だけを日本に送って、
あとは弟子たちが勝手に詳細を設計して建てた、
ということ?
建築家として知られるコルビュジエですが、今回
の展示は、建物の模型などの建築関係の資料と
併せて、彼の絵画作品も多く展示されています。
第一次大戦後、「ピュリスム」を主催する
コルビュジエは、時を同じくして隆盛期を
迎えた「キュビスム」と対峙しました。
ピュリスムと対峙したキュビスムのピカソ、
ブラックなどの作品も併せて展示されている
ので、両者の違いが分かり易いです。
「ピュリスム」だの「キュビスム」と難解な気が
しますが、ここの展示室入って、ピュリスムと
キュビスムの作品をいくつか見ると、あ~あ、
そういうことか、と簡単に理解出来ます。
展示室を見終わって、再びロビーに戻って
きました。
美術館を出るときに、国立西洋美術館がなぜ世界
遺産なのか、もう一度考えてみました。
それは、現代日本の建築の多くが、コルビュジエ
の設計思想を既に取り入れて建築されており、
それを我々は日常生活の中でたくさん見ている
ので、逆に、国立西洋美術館を斬新で目新しく
感じないのかなあ~、と思いました。
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