
(写真は、伊藤若冲の「群鶏図」 )
今年の2月に、渋谷の山種美術館に「ゆかいな
若冲展」を見に行きましたが、 水墨画のみの
展示で、極彩色の「群鶏図」などを期待していた
私は不完全燃焼のままでした。

若冲は、京都の錦大路の青物問屋の長男に生まれ
ましたが、家督を弟に譲り43歳の頃から絵を描き
始め、後に仏教に帰依して、ひたすら絵を描く
ことに没頭した人生を送りました。
蛇足ですが、「若冲(じゃくちゅう)」の
”冲”は”さんずい”ではなくて”にすい”
です。

そして、遂に昨日(5/20)、上野・東京都美術館
の「生誕300年記念 若冲展」(1,600円)で、
憧れの若冲の極彩色の鶏の絵などの80点を一度
に観る事が出来ました!

今回の目玉は、若冲が10年もの歳月をかけて
描いたという宮内庁所蔵の「動植綵絵(さいえ)」
で、30幅が初めて一堂に会します!!

(これまで、分割しての展示はありました。)
そして、若冲作品の発掘者である米人プライス氏
のコレクションもアメリカから来ていますので、
これ以上の若冲の作品が揃う展示会はもう二度と
ないでしょう!

会期が4月22日~5月24日と短期間なので、昨日
は混雑を覚悟で出掛けました。

11時に列に並びましたが、平日にも拘わらず、
何と!会場に入ったのは3時半・・・

炎天下に、何と!4時間半も、水分控えめで
トイレにも行かず忍耐の行列でした・・・

展示会がスタートした4月末頃は空いていた
らしいので、もっと早く来れば良かったなあ・・・

この感じだと、今日・明日の土日は、絶望的な
混雑ではないでしょうか。
そして、中に入ってからも、人気の作品の周り
には黒山の人だかりで、見づらい状況でした。

以下の若冲作品の写真は全て、展示会で購入した
カタログ本の「生誕300年記念若冲展」
(3,000円)からです。

圧巻は、1階の全フロアを使用して、ぐるりと
半円状に展示されている30幅の「動植綵絵
(さいえ)」の勢揃いと「釈迦三尊像」3幅です。

これらは、若冲が10年もの歳月をかけて描き、
51歳の時に京都の相国寺(しょうこくじ)に
寄進した渾身の力作です。


(1階の展示フロア:BS日テレ「ぶらぶら
美術博物館」から)

上は、「動植綵絵」中の一番の傑作「群鶏図」で、
時を告げたり、辺りを見回したりする雄鶏の
多様な様子を、勢いのある筆遣いで描いています。
若冲は、自宅の庭に、数十羽の鶏を飼って観察
して描きました。

若冲の絵は、江戸時代中期なので、描かれてから
二百数十年経っているのですが、実物の絵を見る
と、たった今描き上げたかの様に、鮮やかな色彩
が保たれているのが不思議です。

伝えられるところでは、若冲は、永久不変の美を
描くため、変色しない絵具に徹底的に拘ったそう
です。

当時、驚くほど高価だったペルシャンブルー等を
ふんだんに使用して、永久に伝えられる絵を
目指しました。

上の「月梅図」は、空間恐怖症と言われた若冲の
特徴がよく表れており、絵を埋め尽くす様に隅々
まで描かれています。

若冲の絵の特徴は、動植物を丹念に緻密に
描き込む独自の作風で、近くで見ると
その精巧さに圧倒されます。

しかし、単に緻密に写生することに徹している
だけではなく、動物も植物も絵から生気が溢れ
出て輝いている様な、独特の不思議な雰囲気が
醸しだされています。


上は何と!、83年振りに、今年1月に発見
されたという「孔雀鳳凰図」です!!
(現在は、箱根・岡田美術館所蔵)

上の「老松白鳳図」の鳳凰の羽は、実は、若冲が
黄色の顔料を裏から塗ったものですが、これが
表からは絹を透かして金色に見える、という
「裏彩色」の高度な技術を施したものだそうです。
う~ん、黄色がどう見ても金色にしか見えません!
(若冲マジック?)



上の「樹花鳥獣図屏風」は、プライス氏
コレクションで、約4万個の桝目を、一つ一つ
彩色していったという気の遠くなる様な
モザイク画風の絵です。


上は、切り抜いた型紙で色を付ける”合羽摺り”
という技法で描かれた「花鳥版画」ですが、
現在の画家では、模写/再現が不可能だと言われる
くらいに手が込んだ手法で、凄い手間が掛かって
いるそうです。

上の「果蔬(かそ)涅槃図」は、果物と野菜だけ
でお釈迦様(中央のダイコン)の涅槃を描く
という、ユーモア溢れる作品です。


上の「鷲図」の鷲の表情は、若冲自身を表して
いるのではないか、と言われています。
今回の「若冲展」は、大変な混雑に耐えて行って
来ましたが、それでも行って良かったし、行く
価値が充分にある展覧会だったと思いました。

ps.
東京都美術館の隣りの国立西洋美術館では、
カラヴァッジョ展をやっていましたが、
「ル・コルビュジエの建築作品(国立
西洋美術館を含む)」が世界文化遺産への
登録勧告された影響でしょうか、こちらも
館外まで行列が出来ていました。

