トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

印度細密画の世界 その三

2013-09-10 21:36:44 | 読書/インド史
その一、その二の続き ラジャスタニ絵画とパハリ絵画に二分されるラージプト絵画だが、それぞれの地域ごとにも派があり、ラジャスタニ絵画の一派メーワール(現ウダイプル)派の解説に見るエピソードは興味深い。メーワール王国の支配者はマハーラーナー(王の中の王の意)と呼ばれ、中世に盛んになったイスラムの侵略によるヒンドゥーの抵抗のリーダーであり、剛勇と騎士道精神で知られていた。 だが、王国の要塞チットールガル . . . 本文を読む

印度細密画の世界 その二

2013-09-09 21:10:39 | 読書/インド史
その一の続き ムガル系絵画では歴代ムガル皇帝や王族の肖像画も幾つか載っていた。貴婦人だけでなく貴族の男の肖像画でも、花を持った姿で描かれており、実に華やか。№14「悪魔を射るアウラングゼーブ」は、名称通りムガル第6代皇帝を描いた作品だが、射られた悪魔は痩せこけて腰巻ひとつまとっただけの姿であり、手を上げて降参の意を表している。にも拘らずアウラングゼーブの放った矢が何本も悪魔の身体を貫いていた。 悪 . . . 本文を読む

印度細密画の世界 その一

2013-09-08 16:40:13 | 読書/インド史
『印度細密画』(畠中光享 著、京都書院アーツコレクション)という文庫本を、先日購読した。期待した以上にインドの細密画は鮮やかで美しく、西洋画や日本画とも違う美の世界が楽しめた。著者の畠中氏は奈良県出身の日本画家だが、インドの細密画や染織品のコレクターとしても知られるという。インドの細密画に全くのど素人の私が見てもよかった。 細密画の図版は5章に分けられ、「初期インドミニアチュール絵画」「ムガル系絵 . . . 本文を読む

河田清史のラーマーヤナ その二

2013-06-16 21:10:49 | 読書/インド史
その一の続き ラーマーヤナも含めインドの叙事詩には因果応酬や呪いの話がよく出てくる。ラーマの父ダシャラタ王は、我が子を王位につけたい第二王妃カイケーイーにそそのかされ、最愛の息子ラーマを国から追放するが、それも若い頃の過ちによる因果応酬と呪いだった。 森で狩りをしていたダシャラタは獣と間違え貧しい若者を射殺したことがある。若者には老いた盲目の両親がいて、その世話をしていたのだ。若者の亡骸を両親の元 . . . 本文を読む

河田清史のラーマーヤナ その一

2013-06-15 21:10:47 | 読書/インド史
 子供にも親しみ易く読み易いように、散文と童話風な物語に書き記した『ラーマーヤナ』を見た。副題に「インド古典物語」とあるように、インドの叙事詩ラーマーヤナを扱っている。出版元が第三文明社レグルス文庫で上下巻となっており、創価学会系書籍なのは気に入らぬが、本自体は良かった。初版は何と昭和46(1971)年6月であり、私の買った下巻は2008年6月、初版第16版発行となっている。 著者・河田清史の紹介 . . . 本文を読む

釈迦物語 その三

2013-04-15 21:10:30 | 読書/インド史
その一、その二の続き 事火外道(じかげどう)教団に思う存分神通力を駆使、彼らを仏教に帰依させた釈迦だが、興味深いことに拝火教側にも殆ど同じ内容の記録がある。もちろんこちらは、ザラスシュトラ(ゾロアスター)が論争に勝利という伝承になっている。ザラスシュトラの保護者となるウィーシュタースパ王の宮廷で、ザラスシュトラは己の教義の優越性を証明するため、他宗教の提唱者と積極的に論争する。論争相手には遠くギリ . . . 本文を読む

釈迦物語 その二

2013-04-14 20:39:28 | 読書/インド史
その一の続き 翌朝、聖火堂から微笑んで出てきた釈迦の姿に大カッサパは目を疑った。釈迦が手にしている托鉢用の鉢には3匹の蛇が大人しくおさまり、「大カッサパよ、汝の言う悪龍とはこれのことか?」という。夜中に火を吐き襲いかかった龍を釈迦は折伏、蛇に変えたと仏典に書いてある。釈迦に対する認識を改めた大カッサパは、本格的な技比べに挑むことにした。釈迦のほうもこの大宗教家に対し、これでもか、これでもか&hel . . . 本文を読む

釈迦物語 その一

2013-04-13 21:40:01 | 読書/インド史
 先日、『釈迦物語』(ひろさちや著、新潮文庫)を読了した。書名通り釈迦の生涯について書いたエッセイ集で、28章に亘っている。既に知っている話も多かったが、9章「伝道の旅に出よ」が私的には一番面白かったので、この章を中心に取り上げてみたい。文字通り9章では釈迦や弟子たちの伝道が書かれており、ある日釈尊は60人の弟子たちにこう命じた。 ―比丘(びく)たちよ、あなたがたは伝道の旅に出よ。この世の中には真 . . . 本文を読む

マハーラーナーと呼ばれた王 その二

2012-09-09 20:40:23 | 読書/インド史
その一の続き 即位から22年後の1559年、ウダイ王は要塞チットールガルの修復と共に己の名を冠した都市ウダイプル、つまり「ウダイの町」の建設を開始した。だが、その9年後の1568年、チットールガルはムガル皇帝アクバルの攻撃を受け、全土あげての激しい攻撃も空しく、数万の兵士の犠牲と共に廃墟と化す。 総攻撃の前夜、戦士たちの後顧の憂いを絶つべく、城内では旅路のための薪が焚かれ、再びジャウハルが決行され . . . 本文を読む

マハーラーナーと呼ばれた王 その一

2012-09-08 20:40:37 | 読書/インド史
 インドに無関心な人でも、かつてマハーラージャと呼ばれた王侯がこの国にいたことは知っているだろう。中年世代の中にはディスコのマハラジャで踊った若い頃を思い出す方も少なくないかもしれないが。 マハーラージャは数多くいたが、その中でもマハーラーナーと呼ばれたのがメーワール(現ウダイプル、ラージャスターン州)の王だった。マハーラーナーとは王の中の王を意味し、数ある藩王の中でもメーワール王だけがそう呼ばれ . . . 本文を読む