トーキング・マイノリティ

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拝啓・東大名誉教授 殿 その六

2015-02-22 21:10:44 | マスコミ、ネット

その一その二その三その四その五の続き
 欧米批判を繰り返す日本の中東研究家連中だが、いくら非難されても欧米人が見方を改めることは絶対にない。それよりも強かな欧米諸国にいかに対処するか、知恵を絞る方がいいはず。中韓の反日政策と同じく、アラブ諸国も反欧米・イスラエルプロパガンダを繰り広げているのだ。
 日本の中東研究家は何故か触れないが、他にアラブ諸国でやり玉に挙げられているのがトルコ。何かといえば、「全てはトルコ人が悪い!奴らが四百年も支配したからだ!」となるそうだ。もちろんトルコは周辺諸国に一切謝罪せず、アラブと同一視されるのを嫌っている。『イスラーム国の衝撃』で、著者の池内恵氏は日本の中東専門家や思想家の特殊性をこう述べている。

日本にはイスラーム世界とも欧米とも異なる独自の「イスラーム」認識があり、権威的にこの問題を論じる専門家や、日本の対外関係や近代世界の中での位置をめぐって活発な議論を展開する思想家・知識人の言説を通じて、社会や政治に独特の影響を与えている。
「先鋭的」であることに存在意義を見出す論者は、しばしば「イスラーム」を理想化し、それを「アメリカ中心のグローバリズム」への正当な対抗勢力として、或いは「西洋近代の限界」を超越するための代替肢として対置させる。「イスラーム」という語が、現代社会の解決不能な諸問題を、一言で解決する魔術的なパワーを秘めたものとして、テキストや現実の事象を踏まえずに用いられているのである。

 そのような言論人の言説に導かれ、「イスラーム国」に身を投じる者が出てこないとは限らない。要するに、日本における「イスラーム」は、「ラディカル」に現状超越を主張し、気に入らない社会やエスタブリッシュメント、そして体制そのものを勇ましく「全否定」してみせる「憑代(よりしろ)」として一部で受け入れられてきたのである…」(166頁)

 最新書で日本人のイスラム教学者で信者の中田考を称賛している内藤正典氏だが、wikiには中田の「イスラーム国についての考え」が載っており、イスラーム国の虐殺対象となっているヤズィーディー教徒には昨年こう述べていた。
ヤズィーディー教、全く興味ないし理解もできないが、本気で信じているなら、はた迷惑だが殉教でもなんでもすればよいそれが宗教の自由
ああ、どうして私はこんなヤズィーディーなどというどうでもいいものを相手に時間を浪費させられているんだろう。 (/。\)

 誤記も珍しくないwikiだが、イスラム主義者ならば「イスラーム国側に立った無慈悲な」発言をするのは当然なのだ。尤もイスラム主義を自称する中田の趣味は漫画やライトノベルを読むこと、現在でも将棋に熱中しているのだから爆笑モノ。60年生まれで、日本に生まれ育った中田が漫画を見ない暮らしは難しいにせよ、改宗した時点で漫画を一切拒否、持っていた漫画は全て焼却処分にするべきだったのだ。
 これでイスラム主義とは大笑いさせられる。彼にとってイスラム主義は飯のタネであり、正体はイスラム被れのコスプレ親父。あの中東風のゆったりとした衣装は、たるんだメタボ体型を隠すのには最適でもあるが、メディア映えする効果もあろう。1月22日付けの朝日の電子版では、こんな似非イスラム主義の50男の声を載せていたが、“イスラーム国側に立った無慈悲な言葉”は無視している。

 内藤正典氏はトルコのベストセラー小説『トルコ狂乱』日本語版で解説を書いており、それは面白かった。氏は1990-92年にかけ、トルコのアンカラ大学政治学部客員研究員をしていたそうだが、『イスラーム国の衝撃』にはトルコの外交の強かさが知れる話が載っている。
 トルコは1991年の湾岸戦争の際、イラク北部への米国主導の「飛行禁止地区」の設定に協力、サダム・フセイン政権の統治から脱したイラク北部クルド人地域との間に、市場・通信網やエネルギー輸送網を確立することで経済的な勢力圏に実質上収めている。さらにトルコはシリア北部にも「飛行禁止地区」を設定、「安全地帯」を設けることを主張しているという。まるで旧オスマン帝国領を取り戻すかのようだが、このようなことを内藤氏も知っていたはずだ。もちろんトルコも単なる米国追随ではなく、国益を追求した上でのこと。

 今回の安倍首相の中東訪問は失敗と、中国メディアは恒例の反日キャンペーンの一環として嬉々として報じたが、板垣雄三東大名誉教授はその協力者のひとりでもある。それを意図して板垣氏が書いたのかは不明だが、新聞の御用学者に高質な論説を期待するのはもう無駄なのだ。東大准教授の池内氏が著書で述べた日本での不気味な予測は気になる。
無自覚に現存秩序の否定を唱導する知識人の、誤解に基づいた「ラディカル」な言説に煽られて、日本社会の片隅で不満や破壊衝動を持て余した者たちが、過激派に一方的な思い入れを託して爆発する事態が、運悪く生じてくることもありうる」(167頁)

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