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読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

古代オリエントの神々 その三

2020-06-11 21:10:33 | 読書/中東史

その一その二の続き
 東アジアにもブランコを使った儀礼はあったそうだ。一説には春秋時代桓公が北方の異民族と戦い、その際に伝わった遊具がブランコで、中国では鞦韆と書くという。農作物の豊作祈願よりも遊具の役割が主だったらしく、六朝時代に入るとブランコは女性専用のものとなった。後の代になると、露骨な性描写のため発禁となった『金瓶梅詞話』の中にはブランコを使った性行為が描かれているそうだ。
 当然日本にもブランコは大陸から伝わったが、昔は樹木や梁から吊り下げたもので、公園や校庭で見られる現代の形とは異なっている。私は見たことがないが、ブランコを置いているラブホテルもあるそうで、ヒントは中国の奇書からだった?

 第三章「死んで復活する神々」もまた、著者のいう通り日本人にはなじみがない。その意味ではキリスト教の祖イエスもまた「死んで復活する神」となるが、大半の異教徒日本人には荒唐無稽としか思えない。著者は日本人にはなじみがない事情をこう説明する。
「死んで復活する神とは、植物神であり、中でも穀物神である。米は粒のまま食べることが普通だが、麦は粒よりも、粉にして食べることが多い。麦を砕いて、ひいて、粉にすることを、穀物神の殺害を象徴している儀式と結びつける解釈もある。この解釈によって、同じ穀物であっても、死んで復活する神の神話が、稲作地帯になく、麦作地帯にあることの説明が、できるかもしれない」(211頁)

 古代には夥しい神々がいた中近東社会も、7世紀以降はイスラム化、古代の神々は忘れ去られてしまう。そして終章のタイトル通り、「「アブラハムの宗教」が対立する世界」と化していく。イスラム以前のアラビアも女神信仰は行われていたが、3~5世紀にかけて一神教の影響が強まり、女神信仰は衰退していった。
 女神の中でも特にアル・ウッザーは有力部族からの信仰を集めていたが、629年、ムハンマド軍は女神アル・ウッザーの聖所を破壊し、神体のアカシアの木を伐採する。破壊が他の神々の聖所にも及んだのはいうまでもない。

 しかし、殆どの人々が神々を信じ、神像を祀っていたのに、唐突に聖所が破壊されても戸惑うだけで、密かに神々に病気快癒などを祈願する人たちが絶えなかったようだ。このことを本書で知り、救われる思いになった。
 中東世界がイスラム化した要因は様々あるが、経済的事情も大きいようだ。神殿で神々を祀る多神教は、財政的な裏付けがないと維持継続は難しい。経済的に破綻すると、神像を安置し、定期的に祭儀を行い、奉献、供犠を継続することは困難となる。こうした神々を祀れない状況になっていたところに、従来の多神教のような信者に経済的な負担のある宗教とは違う、イスラム教がもたらされたのだ。

「一方で、イスラーム教は貧しい者にとって経済的な負担の少ない宗教である」(296頁)の一文にはハッとさせられた。さらにイスラムに改宗すれば、人頭税を支払う必要もない。かくしてムスリム支配者のもとでイスラム化は着実に進み、西アジアから多神教は一掃される。著者は終章で一神教をこう解析している。
一神教は多神教の長い歴史の中から生まれた宗教で、古代オリエント世界の定住農耕民の知恵や思想が形成した多神教は、元来は非定住民の宗教である一神教にもその一部は継承されているのである」(297頁)

 20世紀から現代に至るまで西アジアは「アブラハムの宗教」を信じる人々が争いを繰り返す世界と化しており、本書は次の一文で結ばれている。
いうまでもなく、この争いの原因は宗教だけではなく、国際政治の複雑な問題であるが、同一の神を信じている人々が繰り広げている、深刻な一種の内戦なのである」(298頁)

 第四章「神々の王の履歴書」には、バビロンの神殿に安置されていたマルドゥク神像がしばしば異国に盗まれ、その後奪還されることが繰り返されたエピソードが載っている。
 神像を取ったり取り返したりする行為を現代人なら笑うが、古代人は真剣だった。神像を奪った勝者も像を大切にしたし、現代のイスラム原理主義者のように偶像破壊が目的ではなかった。このエピソードに古代社会の大らかさを感じてしまうのは、私が非一神教徒ゆえだろう。

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18 コメント

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桜と菩提樹氏へ (mugi)
2022-02-22 23:14:41
 貴殿の初コメントは興味深いですが、私的には同意できない箇所があります。先ず、現代欧州世界と古代地中海世界も直接的な関係はないと断言されていますが、ルネサンスは無視でしょうか?ルネサンス美術は古代の神話をテーマとする作品も多い。
 現代の欧州人は知識人でなくともキリスト教以前の古代の神々の名を知っている人が多い。対照的に中東世界ではイスラム以前の神話は知識人でも知らないほうが大半。「無明時代」のことなど学ぶ必要はないため、忘れ去られてしまったのです。これでは「断絶」と断定されても当然と思います。

 仰る通りササン朝ペルシャは古代の文明を継承していました。欧州のキリスト教世界から亡命してきた学者を受け入れており、そのために古代地中海文明が現代に至るまで受け継がれました。
 残念ながらササン朝はイスラム軍に征服され、イスラム化していきます。但し早々にイスラム化したのではなく、少なくともペルシア全土がイスラム化するのには数世紀は要している。そしてゾロアスター教徒は迫害されるようになり、インドに亡命する者が続出します。彼らが現代のパールシーの祖先です。

 アラブ帝国とも呼ばれたウマイヤ朝に対し、アッバース朝はイスラム帝国で、様々な人種や宗教の混在するグローバルな社会でした。同時代の欧州とは比較にならないほど寛容だったし、人頭税を払えば異教も認めました。ちなみにこの税はイスラムオリジナルではなく、ササン朝ペルシャから受け継ぎました。

 初期のムスリムは異教徒の学問への抵抗は全くなかったし、インドから学者を招聘したり、インドの数学を学ぶため留学したアラブ人もいました。
 対照的に同時代の欧州人は、異教徒から学ぶということは考えられなかった。これを以ってキリスト教を非寛容と見る人も多いですが、イスラム教とは事情が違っていた背景もあると思います。

 キリスト教は先ずユダヤ教徒から、次いでローマに迫害されました。尤も彼らのいう殉教はかなり誇張されていますが、そのため異教に強い敵意を抱くのは無理もない。対照的にムスリムへの迫害は大したことはありません。メッカ軍にも勝利、教祖は自然死。これでは異教に対する姿勢も違ってくるはず。

>>一説によると人間は1000年前の方が現代人より平均的に知能が高く、2000年前の方がさらに知能が高かったと考えられています。

 お釈迦様のような偉人はともかく、一般人でも現代より知能が高かったのは想像できます。現代と違い優れた機械はなかったし、それゆえ知能を発達させる他なかった。
 この先の人類がどうなるのかは分かりません。超知性的な人工知能に奉仕する存在になるのは、SFの世界に留まらないかも。
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Unknown (桜と菩提樹)
2022-02-21 23:41:57
うーん
上の皆さんや欧州の研究家は古代の中東と
中世の中東が「断絶」しているかのように
主張していますが本当にそうでしょうか?
私はもし古代オリエントやエジプト・地中海世界
と中世イスラムが関係がないと考えるなら、
正直現代欧州世界と古代地中海世界も
直接的な関係はないと断言してもいいと思います。
イスラム教の黎明期には主にパリサイ派の
残党やナザレ派の厳格な一神狂徒の 
影響下にあったマッカのムハンマドに
よって中東の多神教時代は
「無明時代」と勝手にみなされました。
しかし、これはビザンツ含める欧州でも
同じで古代地中海世界における文明は
野蛮なキリスト狂徒とゲルマン諸族など
武装難民にによって破壊されることとなり
わずかな痕跡を残して駆逐されました。
西方世界が一神教の厄災的な蠱毒に
よって呑まれようとしていた時に、唯一
古代の文明を継承していた地域がありました。
それがササン朝ペルシャです。
そして、正統カリフ率いるイスラム教徒軍は
ササン朝を併合することに成功しました。
その後、ウマイヤ朝を打倒したアッバース朝は
イスラム帝国として超民族的なイスラム国家
を建設していくことに着手します。
アッバース政府は当時(笑)悪夢の一神教の中では
いくらか穏健的だったイスラム教スンナ主流派の
思想的寛容性を支持して一定の思想の自由を
保障しました。まだ、アッバース朝の時点では
古代はそう遠くない昔だったため、素晴らしい
遺産が多く残されていました。そして、古代文明を
上手く活かし発展させることができたアッバース朝
や中世イスラム文明は繁栄を喫することとなりました。
中世のイスラム教徒の学者も古代文明に対して
リスペクトを払っているのは言うまでもありません。
その後、内憂外患によってイスラム世界は
混乱して反動化していき文明は大きく後退しますが
12世紀から徐々に進展していった欧州文化の変化は
イスラム圏から移入した文化が明らかに基層と
なっています。特に、西欧は古代文明から直接的に
継承した文化はキリスト教関連以外では12世紀
まで何一つなかったといっても過言ではないでしょう。
そのため、現代の欧州と古代の文明には
現代の中東と古代文明と同等、もしくはそれ以上に
連続性はないと言った方が正解かと思われます。
さて、一説によると人間は1000年前の方が
現代人より平均的に知能が高く、2000年前の
方がさらに知能が高かったと考えられています。
お釈迦様とかはまさにそうですね。
ですので、人間はこれ以降滅びていくか超知性的
な人工知能に奉仕する存在になるでしょう。
返信する
Re:付け届け (mugi)
2020-06-19 22:33:51
>スポンジ頭さん、

 受領は倒るる所に土を掴むという諺があるし、日本の場合も中央から任命されて地方に赴く役人は現地で搾取していました。そのためこれに反発した武士が台頭することになります。

 私は吉川英治の水滸伝を見ただけですが、梁山泊の好漢が役人だった時は賄賂を要求していた話はなかったような……未完の絶筆ということもありますが、日本人向けにソフトに修正していたのやら。
 聊斎志異は読みましたが、とにかく中国人は訴訟好きの印象を受けましたね。もちろん原告被告ともに裁判前にちゃんと“手数料”を払っています。払えない場合はとにかく誹謗中傷する。この辺りだけでも日本とはかなり異質な社会だと感じました。

「付け届け」には賄賂の意味もありますが、少年文庫なので賄賂と書くよりもソフトな意味合いの言葉を使ったのでしょう。賄賂が横行していたのは儒教圏に限らないし、イスラム圏も贈収賄に極めて寛容です。こちらも建前上政府は公平に行政サービスを行い、税金の多寡でサービスを変えたりしないことになっていますが、血族部族社会では公平な行政サービスはほとんど無理です。
返信する
付け届け (スポンジ頭)
2020-06-18 23:10:20
>賄賂=手数料が納められない民は家畜以下の扱いでしょう。

 中国の場合、下級の役人は地方採用で異動なし、上級の地方役人が中央から任命される仕組みです。実務は下級の役人が行います。もちろん、彼らも賄賂を取るのですが、きつく取り締まると業務が滞るので腐敗根絶ができないのです。

 水滸伝でも当然の常識として賄賂が横行し、賄賂がなければ牢屋できつい労役をさせられたりするのですが、賄賂を払えば楽な業務に回され、規則で決まっている懲罰も課されません。大体梁山泊で好漢と呼ばれる人間でも、役人だった時は賄賂を要求したり、賄賂で秘密裏に囚人を処刑する事を請け負ったりしているのですから結構酷いものです。無論、流刑になったりする場合は賄賂を役人に渡します。

 子供の時に岩波の少年文庫で読んだ際は「付け届け」と称していてあまりおかしいとも感じなかったのですが、成長すると賄賂が横行するとんでもない社会だと気づきました。賄賂が手数料扱いになるのはともかく、司法の分野を歪めるのは大問題でしょう。

 現代の政府が昔の中国の政府と異なるのは、建前上政府は公平に行政サービスを行い、税金の多寡でサービスを変えたりしない、と言う点ですね。
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Re:賄賂 (mugi)
2020-06-18 22:12:34
>motton さん、

 中国の中央集権体制の実態を分かり易く解説して頂き、有難うございました!中央集権体制と言っても何から何まで皇帝が決めるトップダウン型ではなく、役人による間接支配だったのですね。このやり方にもメリットはありますが、賄賂=手数料が納められない民は家畜以下の扱いでしょう。

 いくら役人を中央から派遣して定期的に異動させても、中央政権の権力が弱まるや、早々に地方軍閥が台頭するのが中国史でした。現代は共産主義体制となっている中国ですが、統治の仕方は基本的に王朝時代とさして変わらないような。
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賄賂 (motton)
2020-06-18 09:42:16
今の日本だと金・サービスの流れが「民-(税金)->政府-(給料)->役人-(行政サービス)->民」じゃないですか。
それが「民-(賄賂=手数料)->役人-(行政サービス)->民」になっているのです。

政府(皇帝)の仕事は、役人に手数料をとる権限を与え、行政サービスの結果で役人を評価することです。
社会に大きな害を与える悪質な賄賂だと罷免(処刑)するだけで、社会が富めばそれでいいのです。
民は家畜みたいなものなので公平である必要や個々の民の人権は考慮する必要はなありません。

間接支配なので、中央政府としては少数で統治できる、政府(皇帝)に民の恨みが直接向かわない、広大な大陸で現地に合った政治ができる、といったメリットがあります。地方自治体とほぼ同じですね。

問題は、地方役人が現地の民と組んで自立して地方軍閥化することです。だから、地方役人は現地採用ではなく中央から覇権して定期的に異動させます。これが中国の中央集権体制です。(戦前の日本の知事もこれでした。)

日本の場合、民は家畜(支配者の財産)ではなく、政府は民の長(おさ)の役割を求められるので、公平である必要があります。だから、賄賂には嫌悪感があります。
返信する
Re:不道徳な内容 その2 (mugi)
2020-06-17 22:18:00
>スポンジ頭さん、

 女中の夫も西門慶の第四夫人と密通するとは、ろくでなしだったのですね。さらに殺人事件揉み消しの背景を知って驚きました。カネさえあれば強盗殺人プラス主人殺しでも、チャラになる社会には言葉もありません。
 西門慶の奉公人が重罪人から口利き料をせびり取るのも仰天させられますが、主人が主人だけに悪知恵が働くのでしょうね。先のコメントの「正直、あの作品は基本的にまともな人間がいません」がやっと理解できました。

 多くの日本人は賄賂には嫌悪感を抱いていますが、中国社会では一種の手数料という面があったという指摘には納得させられました。むしろ“手数料”を払った方が税が低くなるなら、こぞって“手数料”を出しますよね。本当に日本人には想像のできない社会です。
返信する
不道徳な内容 その2 (スポンジ頭)
2020-06-16 21:27:53
> 西門慶は自分と密通している女中の夫に罪をなすりつけ、流刑にしたこともあったのですか!

 密通を知った夫が酒に酔って西門慶を○す、と騒いだからです。その夫も密通を知らせた西門慶の第四夫人の孫雪娥と密通するようになっていたので、ダブル不倫どころではありません。

 殺人事件揉み消しも、商売旅行に出た商人に同道していた従者が主人を殺して品物を奪う強盗殺人事件が対象です。犯行が露見した際、犯人は西門慶の奉公人に伝手があったので西門慶に見逃して貰うのです。最初西門慶は強盗殺人プラス主人殺しの重罪だったので利益がないと揉み消しを拒否したのですが、犯人が強盗殺人で得た財物の大半を差し出したので、引き受けました。
 これに対して西門慶を弾劾した役人がいたのですが、西門慶は宰相に取り入っているので、その力でこの役人を潰してしまいます。誠実さが逆に命取りになる状態です。

 この事件、賄賂を取るのが西門慶や仲間の役人だけでなく、西門慶の奉公人も主人への口利き料として犯人から金をせびり取るので、汚職の片棒を担いでいるのも同様です。しかもこの人物、この作品中では悪人レベルではなく、知恵が回って気が利くと言う扱いですから油断も隙もない世界です。

 現代中国も賄賂が盛んですが、歴史的にきちんと俸給を支払うと税金が更に重くなるので(それほど行政機構に関わる人間が多い)、一種の手数料扱いの面もあったとかで、本当に根が深いです。
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Re:ハイヌウェレ型神話 (mugi)
2020-06-15 22:09:15
>motton さん、

 仰る通りオオゲツヒメのように日本神話にも、殺害された女神の遺体から様々な植物や穀物が生まれたというお話があります。ただ、オオゲツヒメやウケモチはそのままの姿で復活していません。

 ハイヌウェレ型神話を検索したら、東南アジアやオセアニアにも殺された遺体から植物や芋や宝物が発生する神話があるのですね。オオゲツヒメやウケモチ、ハイヌウェレ等は女神というのが興味深いです。
返信する
Re:不道徳な内容 (mugi)
2020-06-15 22:07:03
>スポンジ頭さん、

 昔の金瓶梅には全訳されず、すべて漢字になっている部分もあったのでしたか。そのような作品が明代に描かれていたのもある意味スゴイ。
 一夫多妻制でも中国の場合、第一夫人が大変権力を持っていたことを聞きました。中国ほどではありませんが、イスラム圏でもやはり第一夫人が力を持っているそうです。

 西門慶は自分と密通している女中の夫に罪をなすりつけ、流刑にしたこともあったのですか!これほどのワルなら、賄賂で殺人事件の揉み消しも朝飯前でしょう。
 現代中国でも賄賂が当たり前ではないでしょうか?たまに汚職摘発があっても捕まるのは権力闘争に敗れた者や雑魚ばかり。名は忘れましたが、国名とは裏腹に明は中国史で最も暗い時代だったと言っていた研究者がいました。

 イスラム改宗者ならともかく、異教徒がバーミヤン大仏破壊バンザーイというのも滑稽ですね。尤も掲示板なので、日本語で書いても日本人とは限らないし、日本人耶蘇も仏像破壊を喜んでいる輩が多いのです。

 作者は「イスラーム教は貧しい者にとって経済的な負担の少ない宗教である」と述べていますが、果たしてそれだけでイスラム教が食い込んだのでしょうか?仰る通り、食い込んだ理由の考察は意味深いと思います。
返信する
牛蒡剣さんへ (mugi)
2020-06-15 22:02:57
 ブランコを使った性交は確かに落っこちてしまう危険性がありますが、逆にそのスリルが堪らないという好き者もいたかもしれません。実際にその個所や挿絵を見ていないので、どんなプレイだったのかは想像できませんが。
 金瓶梅は普段の飲食シーンも細々と描いているそうですが、エロも延々書かれているようですね。初めは面白くとも途中で飽きそう。

「イスラーム教は貧しい者にとって経済的な負担の少ない宗教」の指摘には、私も鋭いと思いました。ゾロアスター教のように神像は置かなくとも、神殿には火の燃えている拝火壇を安置する必要があり、かなり負担になります。その点イスラムは楽。
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ハイヌウェレ型神話 (motton)
2020-06-15 10:03:07
>死んで復活する神とは、植物神であり、中でも穀物神である。

この下りは違和感があります。

日本神話だと、『古事記』のオオゲツヒメ、『日本書紀』のウケモチが相当するのですが、世界各地にあるハイヌウェレ型神話で南方系(芋栽培や焼畑農耕)の神話です。

麦を砕く=穀物神の殺害、よりも、芋は端を埋めると再生する、焼くことで畑が再生する、排泄物や死骸を肥料にする、などの方が直接的かと。

穀物は収穫した種子の一部を播けばいいので、再生ではなく継承のイメージです。(穀物伝来神話では神nなどが種子を持ってくる。)
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不道徳な内容 (スポンジ頭)
2020-06-15 00:49:28
>何故この場面が省略されていたのでしょうか。

 翻訳した時代が古かったのもあるでしょうね。実際、本には出ていてもすべて漢字になっている部分もありました。それでも分かりますが(笑)。

 呉月娘はいささか短気ですが、浮気する夫を支えて物事に誠実に対処しようとする人間です。さすがの潘金蓮も彼女には手が出せません。孟玉楼は常識的で財産もあるので自分から波風を立てる事もありません。ただ、危機管理能力は素晴らしいものがあります。大体、同じ夫人でも第一夫人とそれ以外では非常な差があります。

>役人に対する取り入り方や利用方法がリアルに描かれていたためだった?

 前近代は特に賄賂が当たり前たっだので、それだけではならないでしょうが、金が地位と人脈を作り、それがまた金を生み出すという循環が発生するので、貧乏人は不当な扱いを受けても太刀打ちできません。役人と交際し、宰相に付け届けを送り、地位を得てからは賄賂で殺人事件の揉み消しもやっています。他、自分と密通している女中の夫に罪をなすりつけて流刑にしています。実に悪質です。女中の方も最初は主人と密通したら利益になるので喜んでやっているのですが、自分の夫がそのような事になった際は流石に取り乱し、自殺未遂の騒動となっています。

 実際の舞台は明の後期で誇張があるにせよ、そのような時代に庶民として生まれたら生き辛いでしょうし、山東と言う地方の金持ちでも豪勢な生活をして法律を曲げることができるのですから、首都の財産家は同時代の日本の大名家より権力を持っていたのではないでしょうか。

>日本人改宗者がバーミヤンの大仏が破壊された時、よくやった!と掲示板で書き込んでいるのを見た時はゾッとしました。

 これなんですが、この手の人間が結構いて、何故か自分を相手と同一化するのですよね。相手にしてみれば、劣った相手から同一化されたら迷惑だろうと言いたくなりますが。

>西欧人が再発見した古代オリエント文明より黄金期のイスラム時代に関心を示す傾向が強いのです。

 逆にそれほどイスラム教が食い込んだ理由も考察の対象になりそうですね。キリスト教の欧州では古代ギリシャ・ローマ風の建築や彫像もありますから。
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Re:その場面です (mugi)
2020-06-14 22:10:39
>スポンジ頭さん、

 果物を使ったHプレイ描写は現代のエロ作家も顔負けで面白かったです(笑)。何故この場面が省略されていたのでしょうか。食べ物で遊ぶのは罰が当たると翻訳者も思っていたのやら。

 未読なのでよく分かりませんが、wikiで見る限り正夫人の呉月娘や孟玉楼はまともに思えます。発禁本になったのは単なるエロ小説だからではなく、役人に対する取り入り方や利用方法がリアルに描かれていたためだった?

 21世紀でもISのような原理主義者が世界的な支持を集めるのは、皮肉にもネットの影響が大なのです。日本人改宗者がバーミヤンの大仏が破壊された時、よくやった!と掲示板で書き込んでいるのを見た時はゾッとしました。
 原理主義者ではない一般のムスリムさえ、西欧人が再発見した古代オリエント文明より黄金期のイスラム時代に関心を示す傾向が強いのです。西欧文明のルーツは中近東と言うあたりは、日本と儒教圏の関係に似ていると感じましたよ。

 思ったよりパピルスは丈夫なようですね。記録媒体としても優れモノだったのでしょう。イスラム化以降、どれだけのパピルスが消滅してしまったのやら。
返信する
Unknown (牛蒡剣)
2020-06-14 21:01:19
ブランコと性交云々ですが、普通に危ない気が。。。
古今東西性交についてはにわかに信じられない話
があるものですが、なんとも。どちらかもしくはどちらも落っこちて怪我しそう・・・・・。エロいというより間抜けな画ずらしか想像できませんwww

金瓶梅て延々とエロエロしてるのに飽きてぶん投げたので主要登場人物の名前すら憶えていないですwww。WIKIみたら水滸伝の2次創作と知り微妙な気分。

 >「一方で、イスラーム教は貧しい者にとって経済的な負担の少ない宗教である

これはしびれる指摘ですね。一本取られた感がありあります。
返信する
その場面です (スポンジ頭)
2020-06-13 22:30:32
>「こんな場面も挿絵もなかった」とはこの箇所でしょうか?

 そうです。足を藤棚にぶら下げて果物を投げる場面は読みましたが、その部分もある程度省かれていますし、私が読んだものだと果物を投げていた西門慶が酔い潰れて寝てしまい、起きたら金連の足を解いて終わりです。挿絵がないから普通に頭を下にしてぶら下がっている状態を想像していましたし、ぶら下がっているから金連の頭が朦朧としているのだと思っていました。

 それにしても、西門慶は容姿も整っていて商売は次々と当たり、大勢の美人を侍らせてよい思いをした挙げ句頓死したのですから、本当に思い残すことはなかったでしょう。彼の取り巻きは西門慶の死後、別のたかり先を見つけますが、本当に金の切れ目が、と言う感じです。正直、あの作品は基本的にまともな人間がいません。

 ただ、金瓶梅は服飾や装身具の描写が細かく、当時の金銭の使い方、役人に対する取り入り方や利用方法がリアルで単なる発禁本でもないのですよ。

 スフィンクスの鼻を欠いたのが14世紀の場合だと「時代だから仕方ない」と言えますが、原理主義者は現在やっていますし、ツタンカーメンの宝飾品は素晴らしいもので、あれが潰されたら人類の損失です。ロゼッタストーンはフランスが最初に発見しましたが、原理主義者なら破壊してしまうでしょうね。そして、あの手の文字が三種類書かれている記録も長い歴史の中、消滅していったのでしょう。

 全然関係ありませんが、昔エジプト旅行に行った際、お土産として私の名前を象形文字で記したパピルスを買いました。飾っておいた場所にもよりますが、今でもきれいなままです。パピルスの記録能力、恐るべし。
返信する
Re:雑感 (mugi)
2020-06-13 21:16:08
>スポンジ頭さん、

 金瓶梅は未読ですが、ブランコを使った性行為は記憶になかったのですか??もしあれば、かなり印象的な場面になっていたはずですよね。当時は性倫理基準が厳しかったため発禁を食らっても仕方ありませんが、ひょっとすると邦訳でも際どい描写はカットされていたのやら。
 それにしても、新訳が一部ネットでも見られるとは知りませんでした。検索したらちゃんとヒットしますが、「こんな場面も挿絵もなかった」とはこの箇所でしょうか?
https://twitter.com/t_tomoyuki77/status/983247804263837697

 古代オリエント文明は全て欧州人が発掘・再発見しましたよね。バクトリアの歴史や文明も同じです。欧州ではキリスト教化しても、古代文明は断絶することなく何とか遺ったのに、中近東は完全に忘れ去られのは対照的ですよね。

 ツタンカーメンにせよ、もし発見したのがイスラム原理主義者だったならば破壊されていたと思います。エジプトのイスラム原理主義者の中にはスフィンクスとピラミッドの破壊を呼びかけた者までいますから。スフィンクスの鼻が破壊されたのは14世紀後半の可能性がある、というブログ記事もありました。
https://55096962.at.webry.info/201104/article_5.html
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雑感 (スポンジ頭)
2020-06-13 10:25:20
 金瓶梅は読みましたけど、ブランコで普通に遊ぶシーンはあっても、ブランコを使った性行為って記憶にないんですよ。大体性描写が露骨だと言いますが、最初読んだときは「それほどでもないじゃん」と言う印象でした。が、今思えばそのようなシーンは相当カットされていたんですね。現在新訳がストーリーの途中まで出ていてネットに一部掲載されてたのですが、「こんな場面も挿絵もなかった」ったと言うシーンが登場していました。別にカットするのは構いませんが、抄訳って書いておいて欲しいですよ。平○社さん。

> 古代には夥しい神々がいた中近東社会も、7世紀以降はイスラム化、古代の神々は忘れ去られてしまう。

 楔形文字を解読したのも、当時の遺跡を発掘したのもすべて欧州ですからねえ。アッシリアかどこかの遺跡を発掘してても、地元の人間はそんなものがあると知らず、コーランの伝説時代の人間が作ったものかと思っていたそうですから。完全に断絶していますよね。エジプトの象形文字を解読したのはフランスのシャンポリオンですが、ギリシャ語とヒエログリフが同時に碑文として書かれていた時代もあったのに、完全に忘れ去られていたと言うのが悲しいところです。
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