代表作であり、最高傑作の『カルメン』のため影が薄いが、この短編もまたメリメの作品である。題名のタマンゴは黒人の主人公名。メリメは実話を基に書いたとされるが、19世紀前半の黒人奴隷売買の実情をリアリズムに描いている。
「ルーツ」というアメリカの黒人奴隷のTV番組があった。主人公クンタ・キンテはドラムの皮を取ろうと狩に出かけ、悲運にも白人に捕えられて奴隷として アメリカに連行され苦難の生涯をおくる、というストーリーだった。このような話はあったとしても、むしろ例外の部類なのだ。何故なら白人が自ら黒人を捕え るのはあまりなかったから。
意外と知られていないが、黒人を捕獲し奴隷として売り飛ばした者の大半は黒人だったの だ!黒人といえ、部族、宗教も異なれば同じ黒人という意識など皆無で、敵対した部族の捕虜や同じ部族の犯罪者などを酒やガラクタ同然の雑貨と引き換えに白 人に売り飛ばしていたのが事実である。白人だけでなくアラブ人やトルコ人にもかなり売っていた。アラビアンナイトに黒人奴隷が登場するのはそういう背景が ある。イスラムは神の前の平等を詠っているが、それは表むきで実はアラブ、ペルシア人は黒人など見下していた。中世に書かれた『ペルシア逸話集』(東洋文庫)など読むと、「黒人は醜悪で愚か」「黒人は怒ると顔が赤黒くなり益々醜くなる」との表現さえ見られる。
タマンゴもそんな奴隷商人だった。“お得意様”の白人には、以前手に入れた西欧の軍服と安っぽい装身具を身につけたスタイルで登場する。「これで紳士で 通ると思い込んでいるようだ」とメリメは辛辣に書いている。交渉中から酒が入るため、商談成立時の彼は泥酔状態。ついには口答えをした自分の妻まで売り飛 ばしてしまう。素面に返って妻が船に積まれてるのを発見した彼は、彼女を取り戻そうとするが、逆に捕われ自分自身も奴隷として連行される。白人側の隙を狙 い、反乱を起こして逃亡を図るものの結局失敗して妻も死んでしまう。死の前、夫を愛していた彼女は自責の念に駆られ、「タマンゴ、許しておくれ」と詫び る。
奴隷商人が奴隷に身を落とす結末は、奴隷でも人格者だったアンクル・トムとは異なる。白人が来る前のアフリカは暗黒大陸だったというのは傲慢な白人の思い込みだが、平和で牧歌的世界というのも黒人側の幻想なのだ。
「ルーツ」というアメリカの黒人奴隷のTV番組があった。主人公クンタ・キンテはドラムの皮を取ろうと狩に出かけ、悲運にも白人に捕えられて奴隷として アメリカに連行され苦難の生涯をおくる、というストーリーだった。このような話はあったとしても、むしろ例外の部類なのだ。何故なら白人が自ら黒人を捕え るのはあまりなかったから。
意外と知られていないが、黒人を捕獲し奴隷として売り飛ばした者の大半は黒人だったの だ!黒人といえ、部族、宗教も異なれば同じ黒人という意識など皆無で、敵対した部族の捕虜や同じ部族の犯罪者などを酒やガラクタ同然の雑貨と引き換えに白 人に売り飛ばしていたのが事実である。白人だけでなくアラブ人やトルコ人にもかなり売っていた。アラビアンナイトに黒人奴隷が登場するのはそういう背景が ある。イスラムは神の前の平等を詠っているが、それは表むきで実はアラブ、ペルシア人は黒人など見下していた。中世に書かれた『ペルシア逸話集』(東洋文庫)など読むと、「黒人は醜悪で愚か」「黒人は怒ると顔が赤黒くなり益々醜くなる」との表現さえ見られる。
タマンゴもそんな奴隷商人だった。“お得意様”の白人には、以前手に入れた西欧の軍服と安っぽい装身具を身につけたスタイルで登場する。「これで紳士で 通ると思い込んでいるようだ」とメリメは辛辣に書いている。交渉中から酒が入るため、商談成立時の彼は泥酔状態。ついには口答えをした自分の妻まで売り飛 ばしてしまう。素面に返って妻が船に積まれてるのを発見した彼は、彼女を取り戻そうとするが、逆に捕われ自分自身も奴隷として連行される。白人側の隙を狙 い、反乱を起こして逃亡を図るものの結局失敗して妻も死んでしまう。死の前、夫を愛していた彼女は自責の念に駆られ、「タマンゴ、許しておくれ」と詫び る。
奴隷商人が奴隷に身を落とす結末は、奴隷でも人格者だったアンクル・トムとは異なる。白人が来る前のアフリカは暗黒大陸だったというのは傲慢な白人の思い込みだが、平和で牧歌的世界というのも黒人側の幻想なのだ。