10月27日、宮城県知事選挙があった。事前の予想通り無所属で現職の村井嘉浩氏(53)が、無所属新人で弁護士の佐藤正明氏(65)=共産推薦=に大差をつけ、3選を果たした。開票結果は前者の591,265票に対し、新人候補の佐藤氏は92,790票。投票率は、これまた予想通り2009年の前回(46.57%)を大幅に下回る36.58%、過去2番目に低かった。対抗馬が共産推薦候補だったこともあるが、7割以上の県民が棄権している。
宮城県に限らず地方の知事選では、よほどの失政でもない限り現職が優位だし、多くの県民が選挙に行かなかったのも、どうせ現知事が再選されると思っていたはず。もっとも期日前投票は前回よりもアップしたらしく、それで私も投票した奇矯な県民の1人となろう。候補者が2名しかいないため止む無く私は現職に投票したが、佐藤氏が選挙前に訴えた言葉で特に印象的だったのが、「人間のための政治」だった。
これほど陳腐で抽象的なスローガンを振りかざすのこそ、日本のサヨクの特徴なのか?知事が県民のための政治を目指すのは書くまでもないのに、こんな古臭い決まり文句が有権者に有効と未だに思っているらしい。宮城県選挙管理委員会の公報チラシには佐藤氏の略歴が載っており、「人権まもって40年弁護士」という見出しの次はこう書かれていた。
―1948年1月1日、福島市生まれ。東北大学法学部卒業。1974年4月、仙台弁護士会登録。仙台弁護士会会長(1998年)、日本弁護士会連合会副会長(1999年)。松山死刑再審事件、国鉄労働組合不当労働行為事件などの弁護士をつとめる。趣味はゴルフ。学生時代は演劇部に所属。
さらにチラシ上部の大見出しにも、「大型開発優先をくらし優先に転換、“人間の復興”ふるさと再生」のコピーがある。私も含め多くの県民は、今回の知事選での立候補で初めて佐藤氏の名を知ったのではないか?選挙前の分析でも佐藤氏の知名度の低さを指摘する向きもあったし、出身が今年7月の参議院選で落選した岡崎トミ子と同じく福島県だったことも公報で知った。
チラシにある略歴を見ただけで典型的な“人権派弁護士”なのが分かるし、これでは一般日本人のための政治をしそうもない人物なのが伺える。しかも、弁護士会の中ではトップの地位に就いた人物なのだ。試に「宮城県 佐藤正明」で検索したら公式HPがヒット、サイト名が「あったか宮城の会」というのも苦笑した。
しかし、佐藤氏は過去2番目に低い投票率にも拘らず、92,790票もとっているのだ。投票者が全て共産党員若しくは党支持者とは限らないだろう。「被災者の医療介護負担免除」「住宅の自力再建に百万円を県が負担」等の“公約”目当てに投票した被災者もいたと思う。選挙前に耳触りのよい公約を掲げるのが政治家だが、特に福祉や補助金を前面に打ち出すのが共産党。その類の餌に釣られる有権者も少なくないかもしれない。
“人間のための政治”“人間の復興”のフレーズだけで私なら引いてしまうが、己の政策又は支援する人間のための政治、活動員数を大いに復興するのは共産党員の使命でもある。佐藤氏は必ずしも空虚な決まり文句を言っている訳ではなかった。
ただ、佐藤氏の「人間のための政治」の言葉で、4年前の拙ブログへのコメンターをふと思い出した。コメントには「人間のための生活」「人間に眼を向けた政策」の文句があった。件のコメント主もブロガーだったが、「25年間、ネパール、インド、タイとうろうろ歩き回っています」「東京で居候している」と自称していた人物。消費を促し、如何に企業の活性化を図る経済政策を批判する一方、現地でも何とかネットに繋がる生活空間を築いていたのは滑稽だった。齢を重ねても世の中知らずの有閑階級にとって、「人間のための政治」というフレーズは酒以上に未だに酔える観念らしい。
現代の民主主義体制の真の支配者は巨大企業であり、選挙制度とは自分たちにこそ主権があると大衆に信じ込ませるための欺瞞といった意見をネットで見たことがある。世論を形成するのはマスコミだが、そのマスコミ自体が巨大企業。傭兵たちを描いたベストセラー小説『戦争の犬たち』では、傭兵の主人公が巨大企業代理人にこんな台詞を言い放つ。
「表面に見えているのは一握りの政治家と外務省の役人だが、彼らは役所の縄張り争いや再選のことしか見えない、考えないただの操り人形さ。そして彼らの背後に巧妙に姿を隠しているのが、あんたの大事なジェームズ卿のような不当利益者だ…」
『戦争の犬たち』に登場する巨大企業オーナーは、「大抵の人間は金か恐怖を吹き込むことによって買える」という信念を抱いている。政治体制を問わず、これは何時の時代も変わりない人間の性なのだ。近代以前、世界の殆どの地域では王侯貴族や聖職者が支配していたが、彼らも自分たちやその郎党のための政治を優先していたし、同士に眼を向けた政策を採用、金か恐怖を吹き込んで従わせた。同胞でも決して無名の人間のための政治はやらない。
◆関連記事:「戦争の犬たち」
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「貧困ビジネス」はあらゆる宗教に見られますが、「人権ビジネス」は共産党の飯のタネですよね。トップは豪邸で暖衣飽食していても、下っ端活動員は貧相ぞろいだし、あれだけでも共産主義者の唱える平等や人権など信用できません。『共産主義黒書』というブログ記事があり、管理人は「共産主義とは、間違いなく、テロリズム思想そのものです」と断言しています。
http://sasaki01.blog38.fc2.com/blog-entry-68.html
右翼は「愛国ビジネス」となりますね。拙ブログにも似非愛国者がアラシをしてきたことがありますが、「日本に誇りを持とう」と言っていた者は日本の総人口数さえ知らなかった。連中のスローガンはタカリの口実です。
エントリーとは無関係ですが、旬もまあ今日まででしょうから。
しかしこの日本シリーズは、私の「負の法則」が、ものの見事に的中してしまい、ために「感動の瞬間」には立ち合えませんでした。それは「私が(見るなり聞くなりで)観戦をはじめると、贔屓チーム(又は個人)が劣勢になる」です。
木曜日の5回戦で、なんとなく気になってテレビをつけたら、2-1で楽天リードの9回ウラ。「よし、勝利して王手を見届けるぞ」と観戦したら同点に追いつかれ、「延長ではホーム有利だから」とテレビのスイッチを切って、しばらくしてネットニュースを見たら「楽天勝利、3勝で王手」と出ていてビックリ。深夜のスポーツニュースでは某球団の選手が「4-2で6回戦楽天日本一」と預言したので土曜日にラジオ観戦したら、まさかまさかの田中将大KOで3-3のタイ。7戦jは序盤に一部ラジオで聞いたら1-0で楽天リードと調子はよさそうだったのですが、「ここでのらくろが観戦したら、負の法則でマズイ」と考え、隠忍自重。夜中近くなってからネットで「3-0で楽天日本一」を見てホッとした、というところです。
実はこの週末名古屋におりまして、向こうでの野暮用をいろいろこなしていたのですが、こういう「歴史的瞬間に立ち合えることはそうはあるまい」と思って、名古屋地元のスポーツ紙を買い求めました。そこでは楽天OBで今年中日を引退した山崎武司が日本一を祝して寄稿してましたが、1面のヘッドラインには俄か仙台人、俄か東北人の私も思わずウルっと来てしまいました。↓
「悲しみの3・11耐えて歓喜の11・3」
まさか楽天が日本シリーズで優勝するとは思っていませんでした。あの巨人軍が負けるはずがない、1~2勝が関の山ではないか…と思っていたら、見事に優勝。6回戦で田中が打たれましたし、このまま最終戦での負けると覚悟したら、予想外の展開。本当に嬉しい!
>>私が(見るなり聞くなりで)観戦をはじめると、贔屓チーム(又は個人)が劣勢になる
貴方にもそのような「負の法則」があるのですか!実は私も同じなので、最終戦はあえて見ませんでした。楽天の勝利を知ったのは、TV観戦していた家族から知らされました。3-0でリードしているのは知っていましたが、3点くらいすぐに追いつかれる。そのまま逃げ切れて本当に良かった。
これまで楽天の応援を有難うございました!私もネットで、「悲しみの3.11、耐えて歓喜の11.3」のフレーズを見ましたが、偶然の一致なのか、不思議な数字でした。
そう言えば山崎武司は中日に行きましたね。今年引退なのは残念でしたが、彼は楽天で大いに活躍しました。40歳を過ぎても現役で活躍できる選手はスゴイ。山崎には「これまでアリガトウ」と言いたいです。
仰る通り、東北には未だに深紅の大優勝旗が来ていません。何時になったら、来るのでしょう(嘆)。