食欲の秋も晩秋になったが、秋冬で食欲のない人は至って少ないだろう。食欲に任せ食べ過ぎてしまえば、体重はもちろんコレステロール値がアップするのは言うまでもない。特に体調に問題はなくとも、健康診断にある脂質検査の結果はいささか気になる方も多いはず。
私の受けている健診での脂質検査項目には中性脂肪とHDL(善玉コレステロール)、LDL(悪玉コレステロール)があり、困ったことに私は中性脂肪とHDLは正常でも、LDLは基準値オーバー状態となっている。
悪玉コレステロールが多いといえば、でっぷりと肥えたメタボ体型の人達を連想されるが、私は所謂デブではない。体重が減少しても健診ではLDLがアップしたこともあり、何ともやりきれない。ひょっとして、私も「隠れ肥満」なのか?健診でのBMI、タニタの体重計での体脂肪率はずっと正常値だし、やはり食生活に起因しているのやら。
医師からもLDLが基準値を上回っていることを指摘され、食生活に気を付けるよう云われた。そしてコレステロール値の多い食品が載っているパンフレットを渡されたが、食品群を見て考え込んでしまう。
私は基本的に和食中心の食事だし、肉は好物でも焼肉やステーキはせいぜい月に1度食べる程度。今の時期なら煮込みやシチュー、ポトフのように野菜たっぷりの汁物などで肉を摂っている。肉の中では最も鶏肉が好きだが、こちらも焼き鳥よりも鍋物のように野菜と組み合わせた食べ方なのだ。
若い頃の私は完全に肉食で偏った食事だったが、齢を取ると嗜好も変化するのか、魚のほうを多く食べるようになった。特に好きなのは青魚類、アジやイワシ、サバ、サンマなどは大好物なのだ。しかしパンフレットのコレステロール値の高い食品には、それらが全て入っている!イワシの丸干し、目刺しも好きだし、後者は手頃な値段なので結構買っている。そのため家人からは“貧乏舌”と揶揄されることも。
シラス干しや烏賊、蛸もコレステロール値が多く、庶民の和食の食卓に上る魚介類はこぞって高コレステロール食品ではないか!シラス干しはご飯によく合うし、大根おろしに入れても美味しい。もちろん魚卵のコレステロール値も高く、こうなると明太子も気軽に食べるものではないのやら。マグロが大衆魚よりもコレステロール値が低いのは意外だったが、マグロは普段ツナ缶で摂る日本人は多いだろう。
コレステロールを調節するには、コレステロール値の高い食品はもちろん動物性脂肪、甘いもの、アルコールは控え、禁煙が効果的なのはパンフレットを見る前から知っている。私は煙草は吸わないし、ケーキやドーナッツもまず口にしないが、スーパーなどで賞味期限が近づいた菓子パンやスイーツは値下げ百円以下に釣られ、つい買い物かごに入れることはあった。
禁酒するつもりは全くないが許容範囲とされる節酒量だし、週に2回は禁酒日にしている。野菜類も美味しい肴になり、これで晩酌することもある。こうなると若い頃の肉食中心の蓄積に加え、体質遺伝もあるのだろうか。
私の両親はともに高脂血症だった。昭和一桁生まれの両親は太ってなかったし、BMIや体脂肪率は正常、特に脂肪の多い食べ物を取っていた訳ではない。にも拘らず、高脂血症と診断された。医師の話では体質は遺伝によるところが大きいそうで、親の総コレステロール値が高ければ、子供もそうなる確率が大なのだ。いくら食生活に気を配り、適度な運動を心掛けた所で限界があるのかもしれない。
最近は低コレステロール或いはコレステロールゼロを売りにした食品も数多く出回るようになり、健康志向に便乗した企業の商魂は何時も逞しい。コレステロール値の高い食品を避けるのは賢明にせよ、あれもダメ、これも数値が高いでは、何を食べたらよいのか戸惑うだけでなく分らなくなってしまう。あまりにも数値に振り回されれ、味気ない食事をするような食生活こそ、コレステロール症候群そのものではないか。
「○○は体に良い」「△△を食べれば病気にならない」といった言い伝えは昔からあったし、現代ではそれらの多くは迷信とされている。だが現代の健康情報も絶対とは限らず、1世紀後には科学的根拠の不確かな21世紀版“迷信”と断定される可能性もある。現代の科学を以っても健康に対する食品の効果は不明な面が多すぎるし、コレステロール値だけでは説明がつかないのが人体なのだ。
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