代表作『大地のうた』で、カンヌはじめ様々な賞を受賞したインド・ベンガル地方を代表する映画監督サタジット・レイは、作家としても活躍している。レイの短編集『ユニコーンを探して』(筑摩書房)に、チベットを探検する小説があるが、それが表題の「ユニコーンを探して」。文字通りユニコーンを探してインド人2人と欧州人3人がチベットに向う物語なのだ。
主人公で語り部でもあるインド人発明家の「私」は、ある時イギリス人の友人から手紙を受け取るが、その手紙には「ユニコーンの群れを見た」 の1文があった。ユニコーン、つまり一角獣など神話に出てくる想像上の動物だが、「私」は空想の産物と一蹴できなかった。モヘンジョ・ダロの遺跡から出土 した印章には象や虎、雄牛、サイに加え額に一本の螺旋状の角を生やした不思議な生き物が彫られていた。考古学者たちはその生き物を想像上のものとしている が、他の全てが現実のものであるのに、それだけが想像上の生き物と説明するのは「私」には合点がいかなかった。二千年前のローマの学者プリニウスも インドには一本の角を持つ牛かロバのようでもある生き物が存在すると記録を残しているし、アリストテレスもインドには一角獣がいると主張していた。「私」 はインドでは絶滅したが、チベットの何処かには生きながらえている、と思う。チベットを訪れた探険家で一角獣を見た者が皆無でも、かの国にはまだ多くの未 踏地があるので存在を否定はしない。
日本にもツチノコ探しをする人がいるから、ユニコーンを信じる者を笑えない。
早速「私」 は文化人類学者でもあるドイツ人探検家、地質学者の英国人に敬虔なヒンドゥーである隣人を加え、チベットに向う。旅の途中で自称ロシア人が一行に加わる が、これがトンでもない食わせ者だった。ヒンドゥーの隣人が旅に同行したのはユニコーンを見るためではなく、チベットのカイラス山(チベット語ではカンリンポチェ)とマナサロワール湖に巡礼したかったからだ。カイラス山はシヴァ神の住む山とされ、ヒンドゥーにとっても聖地なのだ。チベットは厳しい土地であり、災難が待ち受ける可能性が高いのを知っても年配にも関わらず隣人の決意は揺るがない。聖地詣では彼の究極の願いなのだから。
探検隊一行はネパール王国を経由してチベットに向うが、チベットにも様々な部族がいる。ポーターをするのはブティヤ族だが、盗賊を生業とするカンパ族もい る。盗賊は地獄で待ち受ける罰を畏れ襲撃後はカイラス山に詣でるか、或いは切り立った崖によじ登り悪行を大声で白状するかして、懺悔のための行を行うとい う。遊牧民もいるが、彼らは概ね異民族に親切だ。
チベットの食事はチベット茶とツァンパがほとんどで、他は山羊とヤクの肉を少量食する。ツァンパとは大麦を炒って作る小麦粉の主食で、これを水または茶に浸して食べる。彼らの茶も磚(せん)茶で、塩とバターを入れるが、これを日に30~40杯も飲むらしい。
チベットの荒涼とした地に「オム、マニ、パドメ、フム」(チ ベット語で、おお、蓮華の内なる宝珠よの意)と彫り込まれた石が見られ、大小様々なラマ教寺院が建っている。「私」たち一行はついにマナサロワール湖に到 着するが、周辺には多くの巡礼者とラマ僧がいた。聖なる湖の周りを五体投地を繰り返しながら回っている人もいれば、功徳を積むためのマニ車を持ち、それを くるくると回しながら歩いていく人もいる。カイラス山とマナサロワール湖はヒンドゥー、仏教徒ともに崇敬の聖地なのだ。砂と岩石ばかりが連なる地で、透明 感のある鮮やかなブルーの湖は、この世のものとは思えないほど美しく思えるそうだ。
仲間の隣人の行為は興味深い。湖の側で感極まった隣人は地面にひれ伏し、「神聖なれ、神聖なれ、牛よりも神聖なれ」 と唱える始末。さらに彼は上着を捨てて合掌したまま真逆さまに湖水に飛び込む。1万5千フィートの高地の湖は氷のように冷たく、隣人は直ちに感覚を失い、 あわてた仲間に引き上げられる。その後隣人が言うには、20年以上痛みがあった手の関節の炎症が湖水に入ってから治ったそうなので、信じる者はやはり救わ れる。以前の隣人はかなり現実的な人間だったが、2度世界旅行をしてから彼は変わり信仰深くなったのだ。宇宙飛行士にも帰還後信仰に目覚める者がいるらし い。
「私」たち一行はチベット奥地でついに桃源郷を発見、そこはユニコーンはじめ様々な神話上に出てくる生き物の住む世界だった。途方もない想像力を持つのには定評のあるインド人にせよ、摩訶不思議な物語を書く。「私」の思いを抜粋したい。
「長い長い時の流れのなかで、想像上の生き物の存在を多くの人々が信じたとしたら、その生き物が備えた特徴が全て人間の想像力から生まれたものだとしても、信念の強い力によって、そのような生き物にも命を与えることだって出来るのではないか」
ヒンドゥー、仏教徒の聖地があるチベットも中共に蹂躙されて既に久しい。チベットに向う者よりも、チベットから脱出する人の数の方が多いのではないか。
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主人公で語り部でもあるインド人発明家の「私」は、ある時イギリス人の友人から手紙を受け取るが、その手紙には「ユニコーンの群れを見た」 の1文があった。ユニコーン、つまり一角獣など神話に出てくる想像上の動物だが、「私」は空想の産物と一蹴できなかった。モヘンジョ・ダロの遺跡から出土 した印章には象や虎、雄牛、サイに加え額に一本の螺旋状の角を生やした不思議な生き物が彫られていた。考古学者たちはその生き物を想像上のものとしている が、他の全てが現実のものであるのに、それだけが想像上の生き物と説明するのは「私」には合点がいかなかった。二千年前のローマの学者プリニウスも インドには一本の角を持つ牛かロバのようでもある生き物が存在すると記録を残しているし、アリストテレスもインドには一角獣がいると主張していた。「私」 はインドでは絶滅したが、チベットの何処かには生きながらえている、と思う。チベットを訪れた探険家で一角獣を見た者が皆無でも、かの国にはまだ多くの未 踏地があるので存在を否定はしない。
日本にもツチノコ探しをする人がいるから、ユニコーンを信じる者を笑えない。
早速「私」 は文化人類学者でもあるドイツ人探検家、地質学者の英国人に敬虔なヒンドゥーである隣人を加え、チベットに向う。旅の途中で自称ロシア人が一行に加わる が、これがトンでもない食わせ者だった。ヒンドゥーの隣人が旅に同行したのはユニコーンを見るためではなく、チベットのカイラス山(チベット語ではカンリンポチェ)とマナサロワール湖に巡礼したかったからだ。カイラス山はシヴァ神の住む山とされ、ヒンドゥーにとっても聖地なのだ。チベットは厳しい土地であり、災難が待ち受ける可能性が高いのを知っても年配にも関わらず隣人の決意は揺るがない。聖地詣では彼の究極の願いなのだから。
探検隊一行はネパール王国を経由してチベットに向うが、チベットにも様々な部族がいる。ポーターをするのはブティヤ族だが、盗賊を生業とするカンパ族もい る。盗賊は地獄で待ち受ける罰を畏れ襲撃後はカイラス山に詣でるか、或いは切り立った崖によじ登り悪行を大声で白状するかして、懺悔のための行を行うとい う。遊牧民もいるが、彼らは概ね異民族に親切だ。
チベットの食事はチベット茶とツァンパがほとんどで、他は山羊とヤクの肉を少量食する。ツァンパとは大麦を炒って作る小麦粉の主食で、これを水または茶に浸して食べる。彼らの茶も磚(せん)茶で、塩とバターを入れるが、これを日に30~40杯も飲むらしい。
チベットの荒涼とした地に「オム、マニ、パドメ、フム」(チ ベット語で、おお、蓮華の内なる宝珠よの意)と彫り込まれた石が見られ、大小様々なラマ教寺院が建っている。「私」たち一行はついにマナサロワール湖に到 着するが、周辺には多くの巡礼者とラマ僧がいた。聖なる湖の周りを五体投地を繰り返しながら回っている人もいれば、功徳を積むためのマニ車を持ち、それを くるくると回しながら歩いていく人もいる。カイラス山とマナサロワール湖はヒンドゥー、仏教徒ともに崇敬の聖地なのだ。砂と岩石ばかりが連なる地で、透明 感のある鮮やかなブルーの湖は、この世のものとは思えないほど美しく思えるそうだ。
仲間の隣人の行為は興味深い。湖の側で感極まった隣人は地面にひれ伏し、「神聖なれ、神聖なれ、牛よりも神聖なれ」 と唱える始末。さらに彼は上着を捨てて合掌したまま真逆さまに湖水に飛び込む。1万5千フィートの高地の湖は氷のように冷たく、隣人は直ちに感覚を失い、 あわてた仲間に引き上げられる。その後隣人が言うには、20年以上痛みがあった手の関節の炎症が湖水に入ってから治ったそうなので、信じる者はやはり救わ れる。以前の隣人はかなり現実的な人間だったが、2度世界旅行をしてから彼は変わり信仰深くなったのだ。宇宙飛行士にも帰還後信仰に目覚める者がいるらし い。
「私」たち一行はチベット奥地でついに桃源郷を発見、そこはユニコーンはじめ様々な神話上に出てくる生き物の住む世界だった。途方もない想像力を持つのには定評のあるインド人にせよ、摩訶不思議な物語を書く。「私」の思いを抜粋したい。
「長い長い時の流れのなかで、想像上の生き物の存在を多くの人々が信じたとしたら、その生き物が備えた特徴が全て人間の想像力から生まれたものだとしても、信念の強い力によって、そのような生き物にも命を与えることだって出来るのではないか」
ヒンドゥー、仏教徒の聖地があるチベットも中共に蹂躙されて既に久しい。チベットに向う者よりも、チベットから脱出する人の数の方が多いのではないか。
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この世に存在しない者に名称はない、とどこかで聞いたことがあるんですが。
UMAやUFOなんですがどちらも意味としては未確認生物・飛行物体という事は、あくまで未確認の上では存在するということでしょうか。永遠に確認されないもの確認されればそれはUMAやUFOではない。
なんだかややこしい書き方で申し訳ありません。
宇宙飛行士が帰還して人間が変わってしまうという映画がよくありますが、実際宇宙空間になにか意思のような物があるのかというのも私にはとても興味あります。が野口さんとかはなにも言ってませんでしたね^^
ところでインドのレーというチベット人居留地?へ行った時チベットバターティーを飲んだんですがかなりうまかったです。塩味です。日本で作ってみたんですがうまくいきませんでした。やはりバターが市販の物とは全然違うように感じました。
>この世に存在しない者に名称はない、とどこかで聞いたことがあるんですが。
言いえて妙ですね。そうすると、幽霊や龍も存在するかもしれない。たとえ人の頭の中だけでも。
宇宙飛行士も十人十色なので、帰還してからは人それぞれなのでしょうね。
宇宙空間にでたというだけで相当な体験なので、これまでの価値観が変わるのかもしれない。宇宙空間になにかあるというのは、SFでお馴染みのテーマですね。
レーに行かれたとはうらやましい限りです。ラダック地方はカシミール州ですが、まだレーは安全のようですね。
mugiさんは、「イッカク」という名のクジラをご存知でしょうか?私は実物もTV画像でも見たことはないです。が、小さい頃、両親に買ってもらった図鑑にはありました。恐らく、ユニコーンは空想でしょうが、一笑にふしていいかどうか、確かに、微妙なところですね。
※以下のリンクは、「イッカク」のものです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/イッカク
ここでも、やはり中狂の横暴があるのですね。そして、盗賊が家業とはいえ、祈るだけ許されるのならば、いくらでも罪を繰り返してもOKということですね?
確かに、産業も農業も厳しい土地ではあると思いますが、盗人家業を許せないのは、日本人的な価値ではそうでしょう。こういう言い方は横暴かもしれませんが、そういう国や地域があるのは理解できますが、だからといって、許せるかどうかといえば、微妙なところでしょうね(違和感を禁じえないでしょう)。
確かに日本人も迷信好きですが、やはり、インド人ほどではないと思います。だからといって、インド人が嫌いとか、野蛮とは思いません。しかし、日本人はもう少し証拠や根拠に頼るものだと思います。
(それでも、インド人の方がC国人やK国人の10倍以上も辛辣で、現実主義者だと思います。)
伝説のユニコーン、ペガサスやケルピーよりは遥かに実在した可能性が高いですよね。ひょっとして、ドードー鳥のように絶滅したしまった奇蹄類(馬や犀の種族)がいて、それが一角の馬だったかも知れません。
チベットは世界の秘境と呼ぶに相応しい神秘の国。現に大戦前まではれっきとした独立国でしたが、この秘境に卑怯な支那人が侵攻し、併合してしまったことは、中共が幾ら否定しようが厳然たる事実。128万人とも言われる無辜の民を虐殺し、対外的に綺麗ごとと恫喝を繰り返すあの国は、どうも生理的に受け付けることができません。願わくば経済破綻でもして、共産体制が崩壊するのをこの眼で見てみたい。
今後もちょくちょく来させていただきます。
歴史を学ぶことがとても多いので。。。
では今日はこれにて。
「イッカク」ならTV画像(確かNHK)で見ました。長い螺旋状の角の生えた鯨ですが、何故あの角が生えているかは学者もまだ分からないそうです。
もちろんチベットの現地でも盗賊は処刑対象と書かれてますが、やはり狙うのは異民族(特に欧州人などは格好のカモ)や異部族が多いようです。モンゴルなどの遊牧民は部族が違えば殺し合いが当り前でした。
日本でも昔は護摩の灰がいましたが、さすがに殺すのはあまりなかった。
インド人はまた多様性に富んでるので一概に言えませんが、冷徹な現実主義者もいれば、迷信の固まりもいます。その多様性が特徴だと思いますね。地政学的に西方の異文化圏とイヤでも接触せざるをえなかったから、外交交渉の巧みさではC国、K国人を遥かにしのいでます。
仰るとおり空飛ぶペガサスはともかく、ドードー鳥のように絶滅した可能性もありますね。未だに地球上には知られざる生き物が存在しているかもしれません。
何しろ「中国は歴史上、他国を侵略したり、他国の領土で殺人・放火をしたことはない」(秦剛外務省副報道局長)と、厚顔無恥の妄言をする国ですからね。江沢民もベトナムの歴史教科書にクレームをつけましたね。「反中感情を煽るから、中国がベトナムに侵攻した歴史は書くな」と。
共産体制が崩壊しても、あの国民性は変わらないし、周辺諸国を巻き込むのも困りものです。
私も歴史に関心がありますので、こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。
ユニコーンがいたら既に中共を清めてくれているはずなので、かなり実在は難しそうですね。残念です。
現在の技術で火星まで人を送り込んだら、宇宙線の影響で宇宙飛行士のDNAの約3分の1が火星に着くころには破壊されているだろうと予測されているくらい、宇宙は何か(宇宙線)で溢れているので、わずかの滞在でも神経に障害を与えて人が変わってしまうのではないかと私は心配しております。宇宙線対策は今のところ有効打が無くてみんな頭を抱えているところです。
残念ながら現代の技術では火星移住は望めそうもないですね。
よくSFでは手始めに火星や金星に進出した人類がやがて銀河系に出る、というパターンですが、現実に異星に移住できるのはいつの時代になることやら。
もし、ユニコーンが中国にいたら、清める前にたちまち珍味として食べられていたでしょう。