「夏はなぜ暑いの?」と聞かれて「お日様が近くに来るから暑いんですよ」と答えるお母さんがいるが、いくら相手が子どもだからといって、これは少し困る。といっても、いい答えはどうなのだと言われても、かなり説明は苦しい。自分の位置と太陽とを結ぶ直線と、地面とのなす角が大きいから…などと学校の授業のようなことも言えまい。せいぜい「お天道(てんとう)さまが、高い所から照りつけているからですよ」というのが、まあまあ無難な解答ということになろうか。
北海道は緯度が高いから、当然ながら夏でも冬でも気温は低い。それでは、たとえば札幌-釧路を結ぶ北緯43度の場所では、南向き傾斜43度の山の中腹などでは熱帯と同じように暑いかというと、けっしてそんなことはない。南側では確かに地面の一定面積が受ける熱量は水平面の土地より大きいが、一村程度の範囲だったら、そんな熱量はすぐに周囲の冷たい部分に移動してしまう。「南面は暑い」という現象は、地球程度の規模で初めていえることである。
ただし熱をストックする問題となると、もう少し小範囲でも十分に効果がある。水、つまり海は、陸地と比べて熱をため易(やす)く(比熱が大きいと言う)、いわゆる大陸性・海洋性の気候に分かれる最も大きな原因になっている。北海道という地球上の小部分だけをみても、最低気温が旭川では-41.0度(1902年)であるのに対して、海岸部の稚内で-19.4度(1938年)、寿都で-15.7度(1888年)、浦河で-15.5度(1927年)にすぎない。
(科学エッセイスト)
北海道は緯度が高いから、当然ながら夏でも冬でも気温は低い。それでは、たとえば札幌-釧路を結ぶ北緯43度の場所では、南向き傾斜43度の山の中腹などでは熱帯と同じように暑いかというと、けっしてそんなことはない。南側では確かに地面の一定面積が受ける熱量は水平面の土地より大きいが、一村程度の範囲だったら、そんな熱量はすぐに周囲の冷たい部分に移動してしまう。「南面は暑い」という現象は、地球程度の規模で初めていえることである。
ただし熱をストックする問題となると、もう少し小範囲でも十分に効果がある。水、つまり海は、陸地と比べて熱をため易(やす)く(比熱が大きいと言う)、いわゆる大陸性・海洋性の気候に分かれる最も大きな原因になっている。北海道という地球上の小部分だけをみても、最低気温が旭川では-41.0度(1902年)であるのに対して、海岸部の稚内で-19.4度(1938年)、寿都で-15.7度(1888年)、浦河で-15.5度(1927年)にすぎない。
(科学エッセイスト)
1989/05/13 北海道新聞朝刊 引用