関東大地震の5年後に生まれた私は、まだ恐ろしい地震を経験したことがない。一番印象に残っているのは、第2次大戦末期の昭和19年12月7日、東海道線豊橋付近の列車の中にいた時、窓の外の畑の中にいたおばさんが立っていられずに、すとんと転んだ光景だ。
ところで、地震の震動を描いた波形だが、子供のころから、なぜあのようなジグザグ型が描けるのかが不思議でならなかった。地震というのは地上のもの全部が動くのである。とすれば、用紙の方もペンの方も同時に動くから、結局はまっすぐな線にしかならないのではないか、というのが「理屈」だった。
分かったのは地震計の原理を習ってからだが、ペンは空間に対して動かないのである。わかり易いたとえでいうと、天井から軟らかなバネで重い(質量の大きいという方が正しい)物体をつるし、これにペンが付いていると考えればいい。天井が瞬間的に上下しても、物体は慣性の法則で「動くまい」としている。従ってペンと用紙の間に相対運動が生じる。南北動や東西動はこれでは説明できないが、てこに似た構造でやはりペンは動かないのである。
綱の先におもりをつけて振らした、フーコー振り子というものは、地球が自転しても自らはその振動面を「変えまい」としている。だから逆に振り子の面が少しずつ回転するように感じる。ニューヨークの国連本部にこの振り子があるが、原理の説明を求めると、いつもガイドさんは逃げてしまう。
ところで、地震の震動を描いた波形だが、子供のころから、なぜあのようなジグザグ型が描けるのかが不思議でならなかった。地震というのは地上のもの全部が動くのである。とすれば、用紙の方もペンの方も同時に動くから、結局はまっすぐな線にしかならないのではないか、というのが「理屈」だった。
分かったのは地震計の原理を習ってからだが、ペンは空間に対して動かないのである。わかり易いたとえでいうと、天井から軟らかなバネで重い(質量の大きいという方が正しい)物体をつるし、これにペンが付いていると考えればいい。天井が瞬間的に上下しても、物体は慣性の法則で「動くまい」としている。従ってペンと用紙の間に相対運動が生じる。南北動や東西動はこれでは説明できないが、てこに似た構造でやはりペンは動かないのである。
綱の先におもりをつけて振らした、フーコー振り子というものは、地球が自転しても自らはその振動面を「変えまい」としている。だから逆に振り子の面が少しずつ回転するように感じる。ニューヨークの国連本部にこの振り子があるが、原理の説明を求めると、いつもガイドさんは逃げてしまう。
1989/06/03 北海道新聞朝刊 引用