「こんにちは」
少女は、明るく挨拶をする。
私は、声が出なかった、ただ無理矢理作る笑顔が、貼り付いたように固まった。
「こんにちは」
そんな私に気付いたのか、子が代わりに声を掛ける。
少女は納得したように、ニコっと笑って奥の暖簾をくぐっていった。
「ごめんなさい。私たち、そろそろお暇します。今日は有難う」
何だか、頭の中が、めちゃくちゃだった。
とにかく、此処にはいられない。それば . . . 本文を読む
ピンポ~ン
ドキン!
私の心臓が、跳ね上がったように高鳴った。
時計を見ると、電話を切ってから35分が経っていた。玄関へ向かう息子の足音が聞こえている。
誰だろう。
誰だろう。。。
誰だろう。。。。。
私は息子の返事を待てなくて、無意識に立ち上がり、玄関に向かって歩き出していた。そこには以前よりも、ずっとずっと大人びて素敵になった、俊がいた――。
飛びつきたい衝動を . . . 本文を読む
「許しません! 離婚なんて、絶対に認めません――」
二年前の義母の声が蘇った。
子の高校進学を機に、私は離婚を申し出て、それを頭ごなしに反対された時の義母の声。
それまでも不安定な心理状態で暮らしていたというのに、この一言は私を奈落の底へと突き落とした。
子供という名で踏ん張っていたものが、義務教育を終えたことで、危うくなり始めていたのだ。意外にも、息子が、そのことに気付いた。
そして . . . 本文を読む