『君戀しやと、呟けど。。。』

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『隙間』

2009-05-27 22:22:11 | 作品b 【掌編】
 パターンナーという仕事は、デザイナーよりもメジャーではない。
 でもデザイナーの生み出したデザインを、実際に着られるものとしての型紙全てを作るのである。
 私は工場やデザイナーのお抱えではなく、個人で仕事をする。
 和裁洋裁と習ったこともあり、お蔭様で仕事に困ることはない。それどころか最近では、待ちこまれる注文の多さに目の廻る忙しさとなってしまった。

 それというのも原因は、彼。
 ちゃんとしたスタイリストがつくような人なのに、私服の方が断然多い。理由は「着易いから」
 当然だろう。彼のサイズに合わせ、私がパターンを作り生地を選び、そして縫い上げる。これで既製品と同じと言われたら、プロとしての腕を疑われる。
 しかし、それがいけなかった。宣伝はしない。紹介者のある人だけ、新規の仕事を請ける。それなのに仕事は増え続けた。

 もう一ヶ月も、彼に逢ってはいない…
 心の隙間に、見えない風が吹き抜けてゆく――。

                    【終わり】
                          著作:紫草
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