『君戀しやと、呟けど。。。』

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『愛しい想い』 vol.11

2006-03-04 18:23:43 | 小説『愛しい想い』
 二人の唇が、静かに離れてゆく。
 私たちは長い長いキスをした。
 それでも、1㍉1㍉離れるのが勿体無くて、私は脳に‘止まれ’の命令を出している。なのに二人の距離は確実に離れてゆく。
 このまま優一の視線を外したら、もう二度と戻ってこないような気がして怖かった。
 それなのに、それを云えない。
 一言・・。
 離れたくない、と云ってしまえたら、どんなに幸せだろう。
 このまま抱きついてしまえたら、どんなに幸せだろう。
 何より、このまま優一の体温を感じていられたら、どんなに幸せだろう。

 でも、優一は云った。
 私たちの間には、私の知らない何か大きな出来事が起こって、そして別れることになったと。
 その出来事を知らない私には、何も云えない。
 同じことを繰り返すのは嫌。
 つきあって、と同じ言葉を告げて、断わられたら今度こそ立ち直れない。

 優一が煙草に火を点ける。
 そして、慌てて消そうとする。
 私は彼の手を止め、
「もう、いいよ。私、帰るから」
「えっ!?」
 優一は結局、煙草を消してしまった。
「今夜は有難う。もう二度と来られないけれど、お金もないしね。でも今夜のことは忘れない。本当に有難う。今まで大事にしてくれて有難う。大好きだったよ」
 私は一方的に云って、席を立つ。
「待って」
 優一の手が、私の左手首を捉まえた。
 その手を、今度は私自身が離した。

 受付まで来て、ランを捜す。
 接客中だ。
 あとで電話をすればいいか。

「精算して」
 若い綺麗な顔立ちのホストが「畏まりました」と奥へ消える。
 もう一人の年配のホスト(!?)が、コートを出してきて羽織らせてくれる。
 もう二度と来ない。

 本当に夢の世界だよね。
 優一と再会できた。
 話もできた。
 キスもした。
 今は心が暖かい

 私は、云われた金額を払って店を出た。
 持ってきたお金で足りて良かった。

           To be continued
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