『君戀しやと、呟けど。。。』

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「さくら」

2006-04-12 15:06:43 | 童話
「おかあさん、お願い。ちょっと来て」

 小さな手に連れられて行ったのは、いつも遊んでいる公園でした。
 しかし、いつもの公園は、春の公園に変身していました。

 公園を囲むように植えられた桜の木々。
 その桜の木が、満開に咲き誇っています。

 何て、綺麗なんでしょう。
 小さな手は、私を更に奥へと導きます。

「おかあさん、これ

 そこには、しかめっ面をした雪ちゃんの顔がありました。
 そして雪ちゃんの指差す方を見ると、そこには折れかけた桜がありました。

 誰かの手に掛かってしまったのでしょう。
 その枝は、今にも落ちてしまいそうです。

「お願い、写真を撮ってあげて」

 そう云う雪ちゃんの瞳は真剣です。
 その枝は、まるで来年はないと知っているかのように、びっしりと花びらをつけ咲いていました。

「そうね。ちゃんと咲いているところを撮っておいてあげましょう」

 私は、カメラのシャッターを押しました。
 その音を聞いて安心したのか、雪ちゃんは、いつもの遊具へ突進してゆきました。

            ~おしまい~
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2 コメント

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ほわん (natu)
2006-04-17 13:49:34
優しい雪ちゃん、その気持ちを忘れない大人になってね☆
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Re:natuちゃん (紫草@管理人)
2006-04-19 09:09:21
 この話、若干のフィクションを加えた実話です。

 写真は、小牧山での‘折れた枝’

 しかなかったので、びっしりの部分でないのが残念です。
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