「ひどいなぁ、無視して行っちゃうなんて」
頭の上から声がして、私とランは顔を上げる。
そこに優一の顔があった。
否、これは正しくない。
声を聞いた時、その声は優一のものだと分かっていた。
私は、ゆっくりと顔を上げるように意識をしたから、だからランの動きと重なったのだ。
「ヘルプに入ってもいいですか、ランさん」
優一は、私には何も云わずランに、そう尋ねた。
お願いします、とランが云う。
「魅子さん、何か作りますね。待っていて下さい」
優一は、そう云って、一度テーブルを離れる。
「どうしよう・・私、泣くかも」
そう云う私に、ランは、それでいいと云ってくれる。
彼女には、様々な事情が分かっているのだろう。
しかし私は、聞く勇気がなかった。
優一はカッコよすぎだ。
多くのホストのいる中で、やはり際立ってカッコよかった。
暫くして優一が戻ってきた、その手にトレーを持って。
「魅子さん、柑橘系のカクテルです。どうぞ」
渡されたグラスを受け取る。
ありがとう、という言葉が震えていた。
「ユウさん。あと、お願いできますか?」
ランの、その言葉に私は驚いて顔を上げる。
「待って」
私が呼び止めようとしたら、優一が止めた。
「ランは人気者です。話は僕がしましょう」
私の左隣に座る優一が、ずっと待っていた距離にあった。
ずっと待っていた、距離。
待っていた、人。
でも本当に待っていたのは、彼の心。
それは、もう戻らない。
「何から話しますか? それとも聞きたいことを答えましょうか。何でも聞いて下さい。もう隠し事はしませんよ」
そう云う優一の顔が笑っている。
私は歯をくいしばって、涙を我慢するのが精一杯だった。。。
To be continued
頭の上から声がして、私とランは顔を上げる。
そこに優一の顔があった。
否、これは正しくない。
声を聞いた時、その声は優一のものだと分かっていた。
私は、ゆっくりと顔を上げるように意識をしたから、だからランの動きと重なったのだ。
「ヘルプに入ってもいいですか、ランさん」
優一は、私には何も云わずランに、そう尋ねた。
お願いします、とランが云う。
「魅子さん、何か作りますね。待っていて下さい」
優一は、そう云って、一度テーブルを離れる。
「どうしよう・・私、泣くかも」
そう云う私に、ランは、それでいいと云ってくれる。
彼女には、様々な事情が分かっているのだろう。
しかし私は、聞く勇気がなかった。
優一はカッコよすぎだ。
多くのホストのいる中で、やはり際立ってカッコよかった。
暫くして優一が戻ってきた、その手にトレーを持って。
「魅子さん、柑橘系のカクテルです。どうぞ」
渡されたグラスを受け取る。
ありがとう、という言葉が震えていた。
「ユウさん。あと、お願いできますか?」
ランの、その言葉に私は驚いて顔を上げる。
「待って」
私が呼び止めようとしたら、優一が止めた。
「ランは人気者です。話は僕がしましょう」
私の左隣に座る優一が、ずっと待っていた距離にあった。
ずっと待っていた、距離。
待っていた、人。
でも本当に待っていたのは、彼の心。
それは、もう戻らない。
「何から話しますか? それとも聞きたいことを答えましょうか。何でも聞いて下さい。もう隠し事はしませんよ」
そう云う優一の顔が笑っている。
私は歯をくいしばって、涙を我慢するのが精一杯だった。。。
To be continued