『君戀しやと、呟けど。。。』

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『愛しい想い』 Vol.7

2006-02-04 19:48:50 | 小説『愛しい想い』
「ひどいなぁ、無視して行っちゃうなんて」
 頭の上から声がして、私とランは顔を上げる。

 そこに優一の顔があった。
 否、これは正しくない。
 声を聞いた時、その声は優一のものだと分かっていた。
 私は、ゆっくりと顔を上げるように意識をしたから、だからランの動きと重なったのだ。

「ヘルプに入ってもいいですか、ランさん」
 優一は、私には何も云わずランに、そう尋ねた。
 お願いします、とランが云う。
「魅子さん、何か作りますね。待っていて下さい」
 優一は、そう云って、一度テーブルを離れる。

「どうしよう・・私、泣くかも」
 そう云う私に、ランは、それでいいと云ってくれる。
 彼女には、様々な事情が分かっているのだろう。
 しかし私は、聞く勇気がなかった。

 優一はカッコよすぎだ。
 多くのホストのいる中で、やはり際立ってカッコよかった。

 暫くして優一が戻ってきた、その手にトレーを持って。
「魅子さん、柑橘系のカクテルです。どうぞ」
 渡されたグラスを受け取る。
 ありがとう、という言葉が震えていた。

「ユウさん。あと、お願いできますか?」
 ランの、その言葉に私は驚いて顔を上げる。
「待って」
 私が呼び止めようとしたら、優一が止めた。
「ランは人気者です。話は僕がしましょう」
 私の左隣に座る優一が、ずっと待っていた距離にあった。
 ずっと待っていた、距離。
 待っていた、人。
 でも本当に待っていたのは、彼の心。
 それは、もう戻らない。

「何から話しますか? それとも聞きたいことを答えましょうか。何でも聞いて下さい。もう隠し事はしませんよ」
 そう云う優一の顔が笑っている。

 私は歯をくいしばって、涙を我慢するのが精一杯だった。。。

             To be continued
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