「これ、飲んだら帰ります」
私は、そう云って、手にあるグラスを少し持ち上げる。
「どして?!」
優一は付き合っていた時と同じ、優しい声で聞いてくれるものの、今更、何を聞いても何も変わらないことは分かった。
もう、迷惑をかけたくない。
最后は、いい女でありたい。
頭の中を巡る言葉は、何一つ、口から出ることはなく、私は俯いているだけだった。
「魅子、何でもいいから聞いてよ」
優一の言葉は優しすぎて、これがホストの甘い言葉だと云い聞かせるのは、大変だった。
忘れてはならない。
此処はホスト倶楽部で、優一は、ユウと呼ばれるホストの一人なのだ。
私は、辛うじて笑ってみせた。
やせ我慢?!
少し違うかな。
でも、ちゃんとしていたい。
振られたことも分からなくて、元カレを追いかけてきたとは、思われたくなかった。
「あ~でも、まずは僕から謝らなくちゃね。ごめんね、魅子の前から突然、消えたりして」
ちょっと今、10センチは近づいたぞ。
ドキドキが高まって、心臓の音が聞こえそう。
「何から話そう。そっか、もう僕のこと、好きじゃないよね。ドラマのようにはいかないか。俺は、魅子と別れちゃったんだもんね」
私は、答えを見つけられずにいた。
これがホスト倶楽部でなかったら、きっと優一に抱きついていた。
でも、ホストに溺れた女の子を知ってる。
彼等の手練手管を聞いている。
何かを始めるには、此処では、全てが砂上の楼閣だった。
「有難う。優一には本当に優しくしてもらった。でも、終わったことだから。もう追わない」
その時、涙が一筋流れた。。。
暫くしてランが戻ってくると、優一は離れていった。
「どうだった?」
「どうって、何も」
眉間に皺を寄せるランの表情は、明らかに私を責めている。
「何よ。大体、ランが私を置き去りにするからいけないんでしょう」
「何云ってるのよ。ユウがお店に出るなんて、めったにないのよ。魅子の為じゃん」
余程、動揺しているのか。ランの言葉が女に戻っていた。
「ラン、言葉、ヤバイよ」
あっ、と小さく声を上げると、かっこつけたポーズだけして、小さく肩を震わせている。
「ごめんね。でもホストでしょ、今の優一は」
「あんたたち、何話したの?!」
殆ど何も話してない、とは云えなくて、小さく首を傾げて見せた。
ランが大きな溜息をついた。
だって、ホスト・・。
違うの
「もう一度、呼んであげるから、ホスト忘れて話してみなよ。分かった?」
分かったと云われても、乗り気ではない。
はっきり云って、会いたくない。
否、違う。
綺麗過ぎて、吸い込まれそうになってしまうから、話なんか聞けそうもない。
ただ、ずっと見ていたい。
もう何日も、そればかりを考えていた。
もう嫌いになったというのなら、それでもいい。
もう一度だけ、優一の顔を飽きる程、眺めていたい。
視界に優一の姿が入る。
早くも、涙が浮かんでた。。。
To be continued
私は、そう云って、手にあるグラスを少し持ち上げる。
「どして?!」
優一は付き合っていた時と同じ、優しい声で聞いてくれるものの、今更、何を聞いても何も変わらないことは分かった。
もう、迷惑をかけたくない。
最后は、いい女でありたい。
頭の中を巡る言葉は、何一つ、口から出ることはなく、私は俯いているだけだった。
「魅子、何でもいいから聞いてよ」
優一の言葉は優しすぎて、これがホストの甘い言葉だと云い聞かせるのは、大変だった。
忘れてはならない。
此処はホスト倶楽部で、優一は、ユウと呼ばれるホストの一人なのだ。
私は、辛うじて笑ってみせた。
やせ我慢?!
少し違うかな。
でも、ちゃんとしていたい。
振られたことも分からなくて、元カレを追いかけてきたとは、思われたくなかった。
「あ~でも、まずは僕から謝らなくちゃね。ごめんね、魅子の前から突然、消えたりして」
ちょっと今、10センチは近づいたぞ。
ドキドキが高まって、心臓の音が聞こえそう。
「何から話そう。そっか、もう僕のこと、好きじゃないよね。ドラマのようにはいかないか。俺は、魅子と別れちゃったんだもんね」
私は、答えを見つけられずにいた。
これがホスト倶楽部でなかったら、きっと優一に抱きついていた。
でも、ホストに溺れた女の子を知ってる。
彼等の手練手管を聞いている。
何かを始めるには、此処では、全てが砂上の楼閣だった。
「有難う。優一には本当に優しくしてもらった。でも、終わったことだから。もう追わない」
その時、涙が一筋流れた。。。
暫くしてランが戻ってくると、優一は離れていった。
「どうだった?」
「どうって、何も」
眉間に皺を寄せるランの表情は、明らかに私を責めている。
「何よ。大体、ランが私を置き去りにするからいけないんでしょう」
「何云ってるのよ。ユウがお店に出るなんて、めったにないのよ。魅子の為じゃん」
余程、動揺しているのか。ランの言葉が女に戻っていた。
「ラン、言葉、ヤバイよ」
あっ、と小さく声を上げると、かっこつけたポーズだけして、小さく肩を震わせている。
「ごめんね。でもホストでしょ、今の優一は」
「あんたたち、何話したの?!」
殆ど何も話してない、とは云えなくて、小さく首を傾げて見せた。
ランが大きな溜息をついた。
だって、ホスト・・。
違うの
「もう一度、呼んであげるから、ホスト忘れて話してみなよ。分かった?」
分かったと云われても、乗り気ではない。
はっきり云って、会いたくない。
否、違う。
綺麗過ぎて、吸い込まれそうになってしまうから、話なんか聞けそうもない。
ただ、ずっと見ていたい。
もう何日も、そればかりを考えていた。
もう嫌いになったというのなら、それでもいい。
もう一度だけ、優一の顔を飽きる程、眺めていたい。
視界に優一の姿が入る。
早くも、涙が浮かんでた。。。
To be continued