『君戀しやと、呟けど。。。』

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『月夜』~『魔王』

2007-10-14 17:48:48 | ショートショート
   『月夜』

 秋の夜長に浮かぶ月。
 まだ丸くなるには足らない日にち。
 ぬける風に頬を撫でられ、刹那――
 闇の時止まる…

 一陣の風。
 目をあけていられない程の、唸る風が流れゆく。
 風の轟音が治まると、訪れたは静寂。
 身を切られるような、張り詰めた緊張。

 閉じた瞳を静かに開くと、闇の魔王と視線が絡む。
 そして思わず笑み浮かび、闇の彼方へ連れゆかれ――。

   『魔王~月夜の誘い~』

 魔王は怖いと 誰が云う。
 闇の魔王は、美しい。
 惹かれ焦がれる、恐ろしさ。
 気付いた時には、抜けられぬ。

 秋夜の闇は澄んでいて、恐ろしさより虜となって、私の全てを惹きこみゆく。
 目に見えぬ魔界の扉を、ゆっくりと押し開き、諍(あらが)う力も消え失せる。
 そして私を魔王の許へ、この世のものとは思われぬ闇の魔力が誘(いざな)いゆく。
          【了】
              著作:紫草

画像提供:rinronさん 深謝!
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