『月夜』
秋の夜長に浮かぶ月。
まだ丸くなるには足らない日にち。
ぬける風に頬を撫でられ、刹那――
闇の時止まる…
一陣の風。
目をあけていられない程の、唸る風が流れゆく。
風の轟音が治まると、訪れたは静寂。
身を切られるような、張り詰めた緊張。
閉じた瞳を静かに開くと、闇の魔王と視線が絡む。
そして思わず笑み浮かび、闇の彼方へ連れゆかれ――。
『魔王~月夜の誘い~』
魔王は怖いと 誰が云う。
闇の魔王は、美しい。
惹かれ焦がれる、恐ろしさ。
気付いた時には、抜けられぬ。
秋夜の闇は澄んでいて、恐ろしさより虜となって、私の全てを惹きこみゆく。
目に見えぬ魔界の扉を、ゆっくりと押し開き、諍(あらが)う力も消え失せる。
そして私を魔王の許へ、この世のものとは思われぬ闇の魔力が誘(いざな)いゆく。
【了】
著作:紫草
画像提供:rinronさん 深謝!
秋の夜長に浮かぶ月。
まだ丸くなるには足らない日にち。
ぬける風に頬を撫でられ、刹那――
闇の時止まる…
一陣の風。
目をあけていられない程の、唸る風が流れゆく。
風の轟音が治まると、訪れたは静寂。
身を切られるような、張り詰めた緊張。
閉じた瞳を静かに開くと、闇の魔王と視線が絡む。
そして思わず笑み浮かび、闇の彼方へ連れゆかれ――。
『魔王~月夜の誘い~』
魔王は怖いと 誰が云う。
闇の魔王は、美しい。
惹かれ焦がれる、恐ろしさ。
気付いた時には、抜けられぬ。
秋夜の闇は澄んでいて、恐ろしさより虜となって、私の全てを惹きこみゆく。
目に見えぬ魔界の扉を、ゆっくりと押し開き、諍(あらが)う力も消え失せる。
そして私を魔王の許へ、この世のものとは思われぬ闇の魔力が誘(いざな)いゆく。
【了】
著作:紫草
画像提供:rinronさん 深謝!