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あどけない表情で、したったらずな言葉を次から次へと口にする。
覚えたての「おかあしゃん」には、優越感のような自慢と通じる嬉しさと、いろいろな感情が混ざっていて、それでいて意味もなく連呼してくる。
差し出してくる手はまだ小さくて、これからどんどん大きくなって、何度もお誕生日を迎えて素敵な女性になってゆく。
そんな当たり前の将来が誰にだって約束されているはずだと思ってた――。
『こんなに早く逝ってしまう命なら、最初からいなければよかった』
※ ※ ※ ※ ※
違うだろ!
あの子ができたと分かってから、いっぱい幸せな時間をくれただろう。
一番可愛いままの顔で、あの子は俺たちの中でずっと生きていくんだよ。
病気になっても明るくて、病院でも人気者で笑っていただろう。
今は痛みのない場所で、次は俺たちを待っててくれるんだ――。
【終わり】
著作:紫草
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