『君戀しやと、呟けど。。。』

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作品bより~『嘘つき』

2010-01-22 22:28:16 | 作品b 【掌編】
 えっ!?
 今、何て言いました?

 開演時刻十分前に届けられた事実は、俺を狂気の世界へと導いた――。
『今日の舞台は、鬼気迫るものがあった』
 出演者や裏方さんから口々に持て囃され、何か良いことでもあったのかと揶揄われる。

 その夜。
 芝居が跳ねて、駈け付けた病院に彼女は横たわっていた。
「貴方が来るのを、待ってもらってた」
 彼女と仲のいいスタイリストが、泣き崩れながらそう告げる。

「おい。目、開けろよ。何で、俺来たのに寝てんだよ…」
 彼女に縋るように、手を重ねて跪く。

 独りにしないって、ずっと一緒だって。
 俺、ちゃんと言ったじゃん。
 嘘つきになるな、って、お前の方が言ったのに。

 今日来るって言ったじゃん。
 なのに、お前が嘘つきになって、どうすんだよ…
 声にならない言葉が、嗚咽と共に掻き消えた――。
                          【終わり】
                             著作:紫草


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