えっ!?
今、何て言いました?
開演時刻十分前に届けられた事実は、俺を狂気の世界へと導いた――。
『今日の舞台は、鬼気迫るものがあった』
出演者や裏方さんから口々に持て囃され、何か良いことでもあったのかと揶揄われる。
その夜。
芝居が跳ねて、駈け付けた病院に彼女は横たわっていた。
「貴方が来るのを、待ってもらってた」
彼女と仲のいいスタイリストが、泣き崩れながらそう告げる。
「おい。目、開けろよ。何で、俺来たのに寝てんだよ…」
彼女に縋るように、手を重ねて跪く。
独りにしないって、ずっと一緒だって。
俺、ちゃんと言ったじゃん。
嘘つきになるな、って、お前の方が言ったのに。
今日来るって言ったじゃん。
なのに、お前が嘘つきになって、どうすんだよ…
声にならない言葉が、嗚咽と共に掻き消えた――。
【終わり】
著作:紫草
今、何て言いました?
開演時刻十分前に届けられた事実は、俺を狂気の世界へと導いた――。
『今日の舞台は、鬼気迫るものがあった』
出演者や裏方さんから口々に持て囃され、何か良いことでもあったのかと揶揄われる。
その夜。
芝居が跳ねて、駈け付けた病院に彼女は横たわっていた。
「貴方が来るのを、待ってもらってた」
彼女と仲のいいスタイリストが、泣き崩れながらそう告げる。
「おい。目、開けろよ。何で、俺来たのに寝てんだよ…」
彼女に縋るように、手を重ねて跪く。
独りにしないって、ずっと一緒だって。
俺、ちゃんと言ったじゃん。
嘘つきになるな、って、お前の方が言ったのに。
今日来るって言ったじゃん。
なのに、お前が嘘つきになって、どうすんだよ…
声にならない言葉が、嗚咽と共に掻き消えた――。
【終わり】
著作:紫草