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ショートストーリー/月子のティーハウスを作成しております

月子のティーハウス 番外編・えまのん/emanon

2024年08月21日 | 月子のティーハウス(番外編・エピソード)

えまのんは、子どもの頃に聞いた親族の話しをベースにいたしました
*emanon は綴りを反対にすると no name となります
英語では、言葉遊びのように使われているようです

どうぞよろしくお願いいたします

月子のティーハウス
(moon child's tea house)

番外編 えまのん/emanon

日没が少しずつ早くなり
ティーハウスにはすでに灯りが点いていた
(パシッ)
ラップ音がした
月子が振り返るとぼんやりと人が立っていた
乳白色のムーンストーンの様な顔色
そして物憂げな表情の女性
  
「月子さん、お時間はまだよろしいでしょうか?」
「いらっしゃいませ、どうぞお掛けください」

椅子に腰掛けると女性はお願いをした
「シードルを飲みたいのですが…、銘柄は問いません」
「はい、ご用意出来ます」

冷蔵庫を開け、月子は辛口のシードルを取り出した
ゴブレットに注ぎ、小皿に入れたミックスナッツと共にテーブルに運んだ
ゴブレットのシードルの泡は、星屑の様にキラキラと瞬いている

女性はシードルを飲んだ
「冷たくて美味しいシードルですね」
「良かった、ありがとうございます」

「今日は弟の事が心配でお伺いをいたしました」
女性は話し始めた
「毎日を精一杯、弟は生きておりますが
私には彼を助けることが出来ないのです」

「弟さんを助ける術がないのですか」月子は尋ねた
女性は小さく頷いた
「それは私がこの世に産まれることが無かったからです」
月子は言葉を失った

「自分が女性か男性なのかも、最初はよく分からなかったのです」
「…そう、私はえまのんです」
ゆっくりと月子は頷き返した

「時折、弟は私の事を想ってくれているようです」
「いたたまれなさから、今日はこちらへお邪魔をいたしました」
もう1口、えまのんはシードルを飲んだ

「遠い遠い先であって欲しいのですが
私は弟をお迎えに来ようと思います」
月子は静かに聞いていた

「弟をねぎらい、一緒に連れて行ってあげようと思っております
そして今度は、弟と2人でこちらへお伺いしたいのです」
「是非いらしてください、遠い遠い先の事ですね」
月子は微笑んだ

「そうしたら3人でお話しが出来ますよね」
嬉しそうに、えまのんは言った
「もちろんです、シードルもご用意しておきます」
えまのんと月子は顔を合わせて笑った

ご一読ありがとうございました

コメント
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