デフレを誘発しているという書き込みがありましたが、デフレーションは、消費が伸びない、商品の値段を下げる、企業利益が減る、手っ取り早く従業員の臨時給与(賞与など)などを減らすという循環がそうさせているので煽ったからといって、デフレーションが進むわけではありません。
経済全体で、供給過多、需要不足が起こって、物価が低下する。商品価格が低下すると、生産者の利益が減り、利益が減った分だけ従業員の賃金が低下する。また企業の利益が減ると雇用を保持する余力が低下するので失業者が増える。従業員と家族は減った賃金で生活をやりくりしようとするため、あまり商品を買えなくなる(購買力の低下)。その結果商品は売れなくなり、生産者は商品価格を引き下げなければならなくなる。 物価が下がっても、名目金利は0%以下に下がらず、実質金利が高止まりし、実質的な債務負担が増す。債務負担を減らすために借金返済を優先する企業個人が増え、設備投資や住宅投資が縮小される。投資の縮小は総需要の減少へつながり物価の低下をもたらす。
この循環がデフレスパイラルで、80年代までの日本は買いたいと思う人を、今まではいわゆる団塊の世代にターゲットを絞っていれば、企業の見通しが多少甘くても、ほとんど影響なくやってこれた。固定収入があり、ほしいものが家以外なら、現金を貯めて買っていた世代です。
もともとあった収入を減らされれば、必要なものしか財布の紐を緩めなくなった消費者の目を少しでも向けさせるために『値下げ』をするわけですが、それが悪循環となって『デフレスパイラル』に落ち込みはまってしまうと、日銭を稼ぐことで成り立っていた飲食業や小売業でさえ、自転車操業になって、銀行からの融資が止まり、企業の経営が立ち行かなくなって、帳簿上利益が出ているのに、運転資金がなくて倒産=黒字倒産という憂き目にあってしまいます。
日本マクドナルドが一時業績を悪化させたのも、安売りに走ったことから始まりましたが、ターゲットを二分することでいまやマクドナルドは、史上空前の利益を上げることができています。一方牛丼チェーンは、今安売り競争に陥っています。もう体力勝負ですね。
物価が下がるのは消費者としてはうれしい限りですが、いっぽうで企業の体力も下がるので、そこで働く労働者にとっては収入が減る=減俸という極端な方法をとる企業も出てくるかもしれません。
企業=資本に組して定期昇給もなし、ベアもなし、臨時給与もなしという資本側の提案を受け入れてしまったら、もう財布の紐を締めるほかありませんから、企業業績が伸びる要素はもうありません。
それは製造業においても同じです。たとえばリーマンショック前のトヨタは空前の利益を上げて、GMを抜いて自動車生産台数世界1位に躍り出たところまではよかったのですが、リーマンショック以来の世界同時不況(金融恐慌前夜)に内部留保を取り崩すことなく、派遣労働者、臨時工を切ることで正社員の雇用を守るという方法をとりました。その後に起こったのが、ブレーキが効かないというリコール問題でした。
安全安心を売り物にしてきた日本の技術は、労働者が分担して支えてきたことの証左です。JRにおいても同じことが言えます。国鉄を解体し、安全を後回しにして突き進んでいったのが、西日本での尼崎の事故につながっています。
資本に組み敷かれるのか、労働者として覚醒していけるのかが今問われていますが、日本における労働者の権利意識など市民運動からも毛嫌いされ、反戦運動からも労働組合をのけ者にするような風潮を作り出されてしまって、一方で闘うといいながら、日教組も、鉄鋼労連系の組合もトップは労働貴族といわれて久しく、根が腐っています。