なあんおばはんの日常

祐天寺の猫

その日、私はいつものように通勤のため電車に乗っていた。

その電車は祐天寺で急行通過待ちをする。



数分間扉が開いたまま。

間の抜けた数分間。乗客はなんとなく、つったって電車が走り出すのを待っている。

そんな空気の中

なんとなく、

視界をなにかが横切った、ような気がした。


何か入ってきたような、そんな感じ。

気配だけだけど、なんとなく猫のような気がした。


単なる勘違いか、思い込みだ。


気配だけの猫だから、もちろん実体はない。





その猫は、ふわふわと人をすり抜けると私の足元にきて、こちらにきたような
そんな気がしたが、

いや、そんなことはない。

ただ単に通り抜けていっただけだ。


そのまま猫の気配は消えた。

なんとなく、そんな気がした。




だいたい、テキトーにそんな勘違いをして、

なんとなく、きっとそんな気持ちになりたかったんだ。


ある意味、寂しい朝だった。





何年も前に死んでしまった猫を思い出したから。





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