薄浅な眠りの果てに
朝まだ暗いうちに目を覚ます
それは
もう
いつものことで
いだいている愛しきこの想いが
私を涙をふたたび誘い出そうする
甘く切ない
愛しきものへのこの想いが
愛しきものの負担になると言うのなら
この想いを
いっそ何処かに
封じ込めなければ ...
私は
何かをあらい流すように
何かを拭い去るように
バスタブの底へ身をうずめる
それで
すべてが溶けだし
不在になってくれるのかどうかは
未知数の向こう側
私は
けっして大きくないバスタブの中で
もがくようにして
沈み込み
そして
ゆっくりと目を開ける
ゆらゆらと揺らめいた
水面の向こう側に観える光が
まるで
海の底から
仰ぎ見ているような
太陽にも観える
息をせず
どれほどの時間を過ごせるかは
わからない
それでも私は
胸中の気体を
吐き出しながら
水面上へ上っていく気泡の行方を
眺め
その音に身を縮める
ほとんどの気体が
肺から抜け
空っぽになると
この身は
ますます
バスタブの底へと
沈んでいき
無音の圧力だけが
私の耳の周囲にまとわりつく
聴こえるのは
自身の心音だけ
その心音を人事のように聴きながら
そのリズムが
次第にそのスピードを緩めるようにして
ゆっくりになっていくのを観る
同時に
呼吸をしていない私は
少し苦しさを感じるが
そのまま
その心音
聴きながら
思っていた
その心音は
この身の
この器の中の奥底で
しているはずなのに
何故か
遥か遠くに
聴こえるのは
何故だろう
......
Man In A Room Night Mail feat Civilian