
掛川掌瑛編著『紫薇斗数大全・命理篇』より抜粋
「紫薇斗数」の諸問題について
「紫薇斗数」については、「明澄派」の方法と、それ以外の方法に相違点があり、小さな論争になっているようですが、対象になっているのは、「紫薇」か「紫微」か、つまり草冠のつく「薇」か、つかない「微」か、という問題と、「節気」の月を取るか、「旧暦」の月を取るか、という二点くらいしかありません。
「薇」か「微」かの問題については、明代や清代の書籍や目録に「紫薇」も「紫微」もあることが確認されているので、本来なら、もともと争点がありません。
また「紫微」のほうが「北極星」の別名であり、「植物」の名称でもある「紫薇」よりも相応しいという意見もありますが、「紫薇斗数」の星は、ほとんどが「虚星」つまり架空の星であり、「太陽」や「太陰」も実際の天体の運行とは全く無関係であり、「実星」の名称だから正しいとは言えません。
逆に、「北極星」なら天球の中心であり、運行しませんから、十二宮を移動する「紫微星」とはイメージが合いません。 「紫微斗数」の「主星」を、「紫微星」、「北斗七星」、「南斗六星」、「日月」(以上で十六星)その他、に分けることがありますが、この分類にはあまり法則性がなく、分類の意味は明らかではありません。
「紫薇斗数」の「主星」(十四星)は「紫薇系」の六星と「天府系」の八星に分かれており、いずれも紫薇星の在支により自動的に配置が決まるものです。しかも「紫薇系」の星同士は同宮しない、「天府系」の星同士も同宮しない、という規則があり、その分類は明確なものです。 さらに、「紫薇系」の星と「天府系」の星が同宮した場合に、必ず「紫薇系」の星を優先して主星に取る、という原則がありますが、なぜ「紫薇系」の星を優先するのかは、「紫薇斗数」の側からは明確な説明がありません。
ところが、「紫薇斗数」の前身である「如来蔵」によれば、「紫薇系星」を優先する理由は、はっきりしています。 「如来蔵」では「紫薇系」の星が「如来」に当たり、「天府系の星」が「菩薩」に当たりますから、「紫薇系」の星を優先する理由は明らかです。これは「如来蔵」が「紫薇斗数」に先んじた体系であることの証拠とも言えます。
紫薇系六星 紫薇 天機 太陽 武曲 天同 廉貞
天府系八星 天府 太陰 貪狼 巨門 天相 天梁 七殺 破軍
北斗七星 貪狼 巨門 禄存 文曲 廉貞 武曲 破軍
南斗六星 天府 天梁 天機 天同 天相 七殺
「北斗七星」「南斗六星」という分類は、同宮する星も、同宮しない星も、一緒くたに入っており、グループとしての共通性がほとんど無く、「紫薇斗数」の「主星」がすべて「実星」と関係があるというような考え方は、「紫薇斗数」の理論体系から考えると適合しません。
ただ、穿った見方をすれば、最初に「如来蔵」を「紫薇斗数」として創作(アレンジ)した人が「北斗七星」や「南斗六星」などに含まれる「実星」の名称を、無理やり「如来」や「菩薩」の名前に当て嵌めた、という可能性も否定しきれません。実際、「釈迦如来」には「紫薇」、「大日如来」には「太陽」、「地蔵(月光)菩薩」には「太陰」、と「北斗」でも「南斗」でもない星ではうまく当て嵌めています。
ところが、「北斗七星」には「禄存」という「如来蔵」では使わない星や、「文曲」という「如来蔵」では「明王」に当たる星も含まれていますが、「文曲」と対を組む「文昌」は「南斗六星」にも含まれません。このように整合性のない当て嵌め方をするのは、何ともおかしな話であり、「紫薇斗数」の作者は、実星の名前を借りただけで、「北斗七星」「南斗六星」という「分類」に意味を持たせるつもりは無かったと推察することができます。 それでも、「紫微」という実星の名前を、無理やり「釈迦如来」に当て嵌めたのだから、文字としては「紫微」のほうが正しい、と言いたい人もいるかもしれません。 ところが、「北極星」の名称は、正式には「太乙」であり、「紫微」というのは、「紫微垣」という、天球上の位置を示す用語で、「紫微星」という星があるわけではありません。つまり、「紫微」が北極星を意味するというのは、通称に過ぎません。 しかも北極の星という意味で「紫薇」と書かれた文書も、昔から多数存在するのです。例えば、『推背圖』の第四十七象に、「紫薇星明」という語句があります。『推背圖』は、唐代に書かれたという予言書ですが、日本でも解説書が出版されているので、ご存知の方も多いと思います。
節気の月か、旧暦の月か、については、既に張耀文(明澄)先生が『紫薇闡秘録評註』(台湾・五術書局・1966年発行)に於いて述べておられます。 即ち、『紫微斗数全集』巻之三「起例」第三句に「不依五星要過節」(五星に依らず、節を過ぎるを要す)とあり、その意味は紫薇には「木火土金水」の「五星」は不要で、「節気を過ぎる」つまりどの「節気」の月かだけが必要であるとしたものです。 張先生が試したところでは、「節気」の月で作盤したものはよく当たり、そうでないものはさっぱり当たらなかった、ということです。 なお、「不依五星要過節」(五星に依らず、節を過ぎるを要す)という文は、「七言」の「歌訣」の一部でもあり、これ以外の読み方はあり得ません。
現在では、中国人でも漢文の読める人は非常に少なくなっており、「不依五星・要過節」を「不依・五星要過節」(五星の節を過ぎるを要するに依らず)などと、全く意味の通らない読み方をする人がいたり、正しく「不依五星・要過節」とは読みながら、次の「只論年月日時生」とあるのを、現地で使われている旧暦の暦どおりに月支を取れば良いという意味に解する人もいるようです。 しかし、旧暦の月を使うということは、立春前なのに年干支が立春後のものになったり、逆に立春過ぎなのに、前年の年干支を使うことになったりする可能性があります。 また、閏月は、前の月と同じ月ですから、この間は、旧暦の日付が同じなら日毎に全く同じ命盤ができてしまうという矛盾も生じます。暦月派としても、この矛盾は問題で、閏月の前半は前の月を使い、後半は次の月を使うという苦肉の策を取ったりします。ところが、閏月というのは、中気と中気の間の29日又は30日間ですから、丁度15日ごろに正節を迎えるもので、前半が前の月、後半を次の月とすれば、ほとんど節月式と一致してしまいます。これなら最初から節月を使うべきではないでしょうか。 このように、どう見ても節月を使う方法のほうが、理論的には無理がありませんが、それでは、どちらが「当たる」のでしょうか。 実は、節気の月と、旧暦の月が異なる人は、有名人などではそれほど多くなく、比較が困難な状況にあります。そのため、この問題について、実際に比較研究したものは非常に少なく、特に「紫微」の側から実例が提出された例は全くありません。 実際にやってみれば、明らかに「節気の月」のほうがよく当たるもので、その例をいくつか挙げることができます。 「五術」の内容は、「流派」や「門派」によって異なるのは当然のことで、違いがないなら、「流派」などいらないし、「門派」も存在する必要がありません。
「紫薇」か「紫微」か、「節月」か「暦月」か、このような問題は、各々が自分の属する「門派」のテキストに従えば良いことですが、自分の「門派」の理論に矛盾がないのかどうか、常にチェックする心構えは必要です。 また、「命学の王」は「子平」であり、どうして「紫薇」が必要なのか分からない、とか、「紫薇」は「子平」ほどよく当たらない、という人も多いようですが、「紫薇」と「子平」の違いをよく理解していないと、その使い方も間違えてしまいます。 まず、「命宮」について言えば、「紫薇斗数」の「命宮」はその人のタイプをズバリと表わすもので、ほとんど紛れがありません。何故なら、「紫薇」の「命宮」とは「如来蔵」そのものであり、その人の「守護仏」が決まるところですから、間違えることはありません。「紫薇」を「推時」に使えるのもそのお陰です。
「子平」は、と言うと、「命宮」に当たるものは「用神」ということになりますが、それはあくまでも「人生の重大事」ということであり、その人のタイプまでは分かりません。 ところが、他の「十二宮」となると話が違います。例えば「子平」で「財運」を見る場合、「財干」または「月干」の「喜忌」や「強弱」により、その人の「財運」が社会のなかでどのレベルにあるかが分かります。しかし、「紫薇」の「財帛宮」を見ても、他人との比較や社会的なレベルというところまでは分りません。つまり「紫薇」の「財帛宮」で分ることは、自分にとって「財」に関することが、得意なのか不得意なのか、という自分の中での比較しかできません。
《唐韻》《集韻》《正韻》無非切,音微。《玉篇》菜也。《說文》似藿菜之微者也。《詩·召南》言采其薇。《儀禮·公食大夫禮》鉶芼:牛藿、羊苦、豕薇皆有滑。
又白薇,藥名。
又蘼蕪,一名薇蕪。《張衡·南都賦》薇蕪蓀萇。
又花名。《拾遺記》元熙元年,詔民閒園囿皆植紫薇,以爲壓勝。《唐書·百官志》中書知制浩,開元號紫薇省。
又薔薇,見薔字註。
又《唐韻》武悲切,音眉。《爾雅·釋草》薇垂水。《註》生於水邊。
又薇銜,藥名。 《集韻》或作。
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紫薇斗数の主星14星の配置は、「紫薇在支」による12パターンに決っており、ここに12宮を配置することにより、12×12=144のパターンが形成されます。このことは古くから知られておりますが、本書ではさらに主星在支による点数と、在宮による点数を記載しており、作盤と、計算の手間を大幅に軽減しました。 ※本書と『紫薇万時暦』を使用することにより、紫薇斗数の作盤は、80%完成です。 ※『紫薇斗数・命理大全』をお求めの場合は、別冊付録となっており、購入の必要はありません。 |
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紫薇斗数の作盤で一番面倒な、「紫薇在支」の算出が、100年分計算済みです。 |
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明澄五術初代・梅素香が著した「紫薇大法」から第十代・王文澤の「紫薇心得」に到り、完成された紫薇斗数に第十三代・張明澄のまとめあげた「紫薇大全」を大公開。 紫薇斗数の原型である、如来像(守護仏)についても詳しく説明しております。 |